『キャリアの中断で見えた、“選択できる”ことの価値』<br>石油資源開発・経理部 相蘇友樹子さんのイメージ画像

マイキャリアストーリー

『キャリアの中断で見えた、“選択できる”ことの価値』
石油資源開発・経理部 相蘇友樹子さん

女性なら誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は、石油資源開発株式会社 経理部 経理グループ長の相蘇友樹子さんをインタビュー。専門スキルを積み重ねながらも子育てとの両立に悩んだ葛藤や、そこから得た気づきについて、お話を伺いました。

相蘇 友樹子さんのイメージ画像

相蘇 友樹子さん

石油資源開発株式会社 経理部 経理グループ長

新卒で上場機械メーカーに就職。経理部配属となり、決算業務や資金管理業務などに従事する。その後、子供の出産・育児を機に退職。2年強、育児に専念した後、外資系メーカーに経理職で転職。さらに、数社を経て、2021年より石油資源開発株式会社(JAPEX)に入社。経理部のグループ長として、四半期ごとの連結決算業務のほか、メンバー10人のマネジメントを行っている。

仕事を続けたい、でもこれ以上は無理。退職を決めて泣きながら帰った

― 国内外の石油・天然ガスのE&P(探鉱・開発・生産)や、再生可能エネルギー資源の開発を担う石油資源開発株式会社(JAPEX)。相蘇友樹子さんは、経理部のグループ長として、四半期ごとの連結決算業務のほか、メンバー10人のマネジメントを担っています。 JAPEXに入社した2021年5月までも、一貫して経理のキャリアを重ねてきました。 大学時代に会計を学んだことを機に、ビジネスの流れを会計から見る面白さを知ったと話します。
「専門的な領域で働いていきたい、という思いがあって、学生時代に会計の勉強を始めてみたんです。世の中にさまざまな事業がある中、経理を知れば会社のことが分かるのではないかなと思いました。開示した決算書が会社の評価に繋がるような責任のある仕事であり、どの企業でも欠かせないのが経理職。これなら、長く続けていけるだろうと、新卒の時点で経理希望でした」
― 入社した機械メーカーの上場企業で、希望通り経理部配属になった相蘇さん。順調にスキルを身につけていきましたが、20代後半での出産を機に、キャリアの中断を経験します。
「仕事が好きで、まだまだやりたいことがあったので、仕事を辞めるつもりはありませんでした。娘が0歳のうちにしか保育園に預けられない状況だったので、出産後8か月で職場に復帰することを決めました。

でも、2000年代前半の当時はまだまだ、『子供を保育園に預けるなんてかわいそう』と言われる時代。復帰前と業務量が変わらない中、時短勤務は本当にしんどくて、昼食を抜いて仕事をしても終わらない日々が続きました。それでも、子供を預けながら仕事をしているのは自分の都合という意識があって『やりたくて両立しているのだから、業務量を調整してくださいとは言えない』と、思う自分がいました。

さらに、娘は保育園に馴染めず、預けるときにも迎えに行ったときにも泣かれ、夜泣きも多い子供だったんです。両親は関西にいて頼ることができず、夫も帰宅が遅い仕事。その生活を続けることに限界を感じ、復帰後8か月で退職を決めました。その決断を会社に伝えた日は、泣きながら帰ったことをよく覚えています」

社会に求められたい。子供の成長と共に“働き方”を変えて行く。

― 不本意な選択で、仕事を離れざるをえなかった相蘇さん。がむしゃらに続けてきた経理職を離れたことで、仕事への思いに気づいたと話します。
「仕事を通じて“社会に求められる”ことの価値を、改めて思い知りました。1日中家にいると、子供しか話す相手がいません。私にとって、そのストレスは大きかったですね。
働く機会をずっと探していましたが、制度上、仕事が決まらないと子供を保育園に預けることができず、就職活動も難しい。この状況でいつ働けるんだろうと、矛盾を感じていました。
そんな中、幸運にも、近所の私立幼稚園が、3歳から延長保育で預かってくれることを知り『これで働ける!』と、再就職を決めました」
― まずは無理なく働けるところを、と選んだのは、非上場の外資系メーカーでした。定時には業務を終えられる環境は、相蘇さんにとって都合が良く、「経理の専門スキルを評価いただき、期待以上の給与を出してくれたのもうれしかった」と話します。 その後、子供が中学に上がったのを機に、自身もステップアップしようと動き始めます。より責任のある仕事に挑戦しようと大手上場企業への転職を決め、働き方や生活スタイルも大きく変わっていきました。
「上場企業になると、四半期ごとの決算で残業も多くなります。娘の食事だけは、きちんと栄養のあるものにしたくて、毎朝夕食の準備をして仕事に行くことにしました。また、習い事の送迎には車が欠かせない生活圏だったので、平日に塾に行かせることができませんでした。そこで、勉強の計画表を立て、毎日それを私がチェックして勉強を見ることに。3年間、塾には行かず、二人三脚で勉強を進めていきました」
― 自身の転職に加え、学業も見て、食事もきちんと用意する。その完璧ぶりに驚いていると、「確かに大変だったけど、充実していた時間だった」と笑顔を見せます。
「仕事でもやりたいことができて、キャリアアップができている実感がありました。自分も好きな仕事で働いて、家族のために大事な“食事”と“教育”には力を入れよう。そう自分で決めたことだから、充実感と達成感があったんだと思います」

より良い働き方へ、意見を出し合うチームを作っていきたい

ー JAPEXへの転職は、前職での大きな組織再編から決めたことだったといいます。外資に買収されたことで、経理部門にいつまでいられるかが不透明になり、「長く腰を据えて働ける環境へ」と転職を決めました。
「今の会社は、転職経験の多いこれまでのキャリアに耳を傾けてくれ、40代後半で私を迎え入れてくれました。マネジメントを任せてもらい評価もいただけています。だからこそ、『相蘇が来てくれてよかった』と思われるよう恩返ししたい、という気持ちがあります」
― マネージャーとして束ねるグループは、20代・30代のメンバーが中心です。彼らの学ぶ姿勢に刺激をもらいつつ、「若いメンバーのこれからのキャリアのために、働き方の業務改善の進めていきたい」と話します。
「みんなとても真面目で勉強家。経理に関する知識量も多く、能力の高いメンバーだなと感心します。
でも一方で、その真面目さゆえに、手のかかる業務も時間をかけてやり切ろうとしてしまうんです。経理には、社内のさまざまな部署から問い合わせが舞い込み、対応に追われることも多くあります。みんなで情報共有し、意見を出し合いながら解決していくチーム力によって、より良いやり方でより良い方向に進めて行けると確信しています。社内では現在DX化を進めていて、効率化に向けたプロジェクトが立ち上がっているので、メンバーも変えるべきところは変えていってほしい。これまでのやり方にとらわれず、『こうしたら働きやすくなるのでは』『この業務プロセスは不要では』と発信し合えるグループを作っていきたいです」
― 今のうちから、効率化や時短に向けて仕組みを変えていければ、自分のライフイベントやキャリア志向に合わせた働き方を選択できるようになる、と話す相蘇さん。 自分の意思とは違う理由で、仕事を離れざるをえなかった体験が、「働き方は変えていくもの」という考えにつながっています。
「メンバー一人ひとり、強みや得意は異なります。何をどう任せると伸びるのか、人を見て育てていくのは、責任重大だけれど面白い。何よりも私自身の学びになっています。
これからもメンバーにじっくりと向き合いつつ、経理の専門人材として頼られる人であり続けたいなと思っています」








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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子

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