『マネジメントで見えた新しい景色』
キーコーヒー株式会社 管理本部 総務人事部 人財開発課長 寺﨑由香里さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、キーコーヒー株式会社で課長を務める寺﨑由香里さんにお話を伺いました。
寺﨑 由香里(てらさき ゆかり)さん
キーコーヒー株式会社 管理本部 総務人事部 人財開発課 課長。
2008年、新卒でキーコーヒー株式会社に入社。総務課を経て、2年目より関東工場 品質管理課へ異動。J.C.Q.A.(全日本コーヒー検定委員会)認定のコーヒーインストラクター資格(1級)を取得し、コーヒーの品質管理業務に約6年間従事。2015年、人事課へ異動し、採用・研修・労務関連業務を担当。2023年4月、人事課から新設分割された人財開発課の初代課長に就任。新卒・キャリア採用を中心に、人的資本経営の推進、エンゲージメント向上、障がい者雇用などを牽引している。
つまずいたときには手を差し伸べる。一人ひとりの成長機会を大事にしたい
- コーヒーの奥深い世界を探求していた品質管理課から人事課に異動した寺﨑さんは、採用・研修・労務などの業務を幅広く経験し、2023年4月にマネジメント職に就きました。人的資本経営への関心の高まりを受け、人事課が法令対応を担う「人事課」と、人的資本関連施策に特化した「人財開発課」に分割されることになり、寺﨑さんは新設された人財開発課の初代課長に就任します。
課長としての1年目は、多くの気づきと学びを得た年となったそうです。 - 「できたばかりの部署のマネジメントということで、当初は不安もありました。プレイヤー時代の私は、一人で仕事を次々と進めたいと考えるタイプで、上司や先輩たちから裁量を持たせてもらいながら、のびのびと業務に取り組んできました。
課長になり、一番戸惑ったのは、自分が次々と手を動かすのではなく、メンバーが自主的に行動できるよう支援しなければならないという立ち位置の変化でした。メンバーのやり方を見守りながらも、『自分ならこう進めるのに』と歯がゆい思いをしてしまう。自分にどのようなマネジメントが合うのかで悩み、上司に相談したこともあります」
- 戸惑いの大きかった課長職1年目から、マネジメントの方法を模索し続けてきた寺﨑さん。メンバーとのコミュニケーションでは「必ず感謝を伝えること」「まず褒めてから注意をすること」を大切にし、声掛けの際は、自分自身が上司からかけてもらってうれしかった言葉も取り入れているといいます。
- 「マネジメントでは『メンバーを信じて任せ、つまずいたときに手を差し伸べる』スタイルを大事にしています。取引先など社外を巻き込む問題では私が対応しますが、社内の部門間での認識の違いから生じる“つまずき”であれば、タスクをメンバーが最後までやり切れるよう見守ります。ときには該当部署に私から説明や謝罪をすることもありますが、メンバーのタスクを代わりに引き取ることはしません。すると、2回目にはメンバーが自ら問題になりそうな点をあらかじめ想定して動けるようになります」
- 先回りして手を差し伸べてしまうと、せっかくの成長機会を狭めてしまうと話す寺﨑さん。自身もそのように育ててもらい、成長できたと実感しているそうです。
- 「マネージャーになって得られた一番の喜びは、メンバーが成長していく様子を見守れることです。和気あいあいとしたチームで、メンバーと他部署の方々が参加した懇親会の写真を、私にもシェアしてくれたりします。メンバーたちが楽しそうに笑っている写真に私も幸せを感じています」
ボトムアップで実現した、イキイキ働ける会社づくり
- 寺﨑さんが率いる人財開発課が形にしてきた施策は多岐にわたります。
- 「従業員の声を経営陣に届けるエンゲージメント調査の定期実施や社内公募制度の導入、利用しやすさを見直した自己啓発制度、オフィスカジュアルの導入などに取り組みました。すべてに共通するテーマは、キーコーヒーが創業以来大切にしてきた『従業員がイキイキ働けること』です。
エンゲージメント調査では、『自分たちの声が反映される機会を作ってくれた』とポジティブな意見が多く寄せられ、これまで取り組んできたことの価値を実感することができました」
- 人財開発課の業務と並行して力を入れてきた活動に、“ウェルビーイングプロジェクト”があります。これは、2023年4月に寺﨑さんたちが経営層へ提案したことをきっかけに発足したプロジェクトで、全社横断の選抜メンバーが定期的に集まり、会社をより良くするための議論を重ねています。
- 「全社から選ばれたメンバーが、制度づくりのアドバイスや施策の企画にボトムアップで関わる——。そこで生まれた“こうしたい”という私たちの思いを、上司は最大限の熱量で経営層まで届けてくれる。そんな環境がとてもありがたいです。私たちの思いを尊重してくれる上司に日々見守られながら、のびのび活動できています」
「諦める前に、もうひと押し」。与えられた環境を全力で走り続けていく
- コーヒーの奥深さを教わった品質管理課での経験を経て、人事領域へとキャリアを積み重ねてきた寺﨑さんですが、意外と「先々を見据えてキャリアを選択してきた実感は薄い」と話します。
- 「いつも、その時々で与えられた役割や仕事に懸命に向き合い、ひたすら目標達成に取り組んできました。諦めそうになったことは何度もありますが、その都度、上司に相談したりメンバーと話し合いを重ねたりし、『もう少し踏ん張ってみよう』と続けてきました。課長に就任した当初はメンバーの成長を自分のこと以上に喜べるようになるとは想像もしていませんでしたが、諦めず走り続けることで、人は変われるものだと実感しました。続けていると見えてくる景色があることをメンバーにも伝えていきたいです」
- 人事課で障がい者雇用、休職・復職支援、安全衛生委員会の運営など、さまざまな業務を経験してきた寺﨑さん。業務ごとに要求される知識や経験は多種多様でしたが、壁にぶつかる度に、「基本を学ぶ」ことに立ち戻ってきたと言います。
- 「たとえば、体系的に基礎知識をつけようと、『メンタルヘルス・マネジメント検定試験』を受けたり、衛生管理者の資格を取得するなどしました。そのように動けるのは、子どもの頃から、“本質を知ってから動く”ことの大切さを、母から教わってきたからだと思います。ダンスを習っていたとき、母は必ず、踊る曲の元となる映画やミュージカルを見せてくれました。その、『物事に取り込むときは、大元を理解してから』という教えが、今の自分の土台になっていると思います」
- 今、寺﨑さんは管理職としてさらに上のレイヤーを目指すため、経理・財務の知識習得を進めています。
- 「必要に迫られて学ぶのは得意なのですが、将来のための勉強となると、参考書の最初のページを何度も読み返してしまうほど、進みが遅くなります。それでも、時代や世代の価値観に応じた働き方ができる環境づくりにこれからも取り組み続けたい——。そのために、自分自身の価値観や知識をアップデートし続けたいと思います」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子





