『働き続ける背中を押していきたい』
ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー グループマネジャー 野口ゆりさん【前編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は、ネスレ日本株式会社でヘルス&ビューティグループのグループマネジャーを務める野口ゆりさんにお話を伺いました。
野口 ゆり(のぐち ゆり)さん
ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー マーケティング&メディカルアフェアーズ統括部 ヘルス&ビューティグループ グループマネジャー
大学で栄養学を専攻し、管理栄養士・教員免許を取得後、食品メーカーの営業職に就く。27歳で退職し、自費でアメリカへ留学。帰国後、食品メーカーの商品企画を経て、2007年に現在のネスレ日本株式会社(旧ノバルティスニュートリション株式会社)に入社。医療・介護領域の営業、営業企画を経てマーケティング職へ。2014年にネスレオーストラリアへ赴任。帰国後、マーケティングマネジャーに着任し、産休・育休後の2021年5月より現職。管理栄養士資格保有。
好きを生かそうと栄養学を専攻。「急がば回れ」で積んだ学びの下地
- スイスに本社を置く世界最大の食品飲料企業、ネスレ。その日本法人においてヘルスケアに特化した事業を担う「ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー」で、野口 ゆりさんはマーケティング&メディカルアフェアーズ統括部 ヘルス&ビューティグループのグループマネジャーを務めています。海外で人気サプリメントブランドを日本に導入し、輸入から戦略立案、発売まで一気通貫で担当。売上にも責任を持ちながら、アメリカ売上No.1のコラーゲンブランド(※1)「バイタルプロテインズ」や、プラントベースプロテイン「オルゲイン」などの日本市場拡大に奮闘する日々を送っています。
(※1)SPINS US調べ; 無香料コラーゲンペプチド; Natural & Mulo Channels; US dollar sales ベース; 2022年1月3日~2025年1月24日まで売上
- キャリアの出発点は「食べることが大好き」という純粋な思いからでした。料理も好きだったことから、大学では調理学や食品化学を学べる栄養学科を専攻。管理栄養士の資格を取得するとともに、中学校・高等学校の理科教員免許も取得しました。
- 「資格取得は学びを深めていった結果。栄養学を学んでいくと生物学につながっていき、理科の教員免許も取得できると分かり、気づいたら両方取得していました」
- 教育実習で「教えることの面白さ」も感じていましたが、就職氷河期という時代背景もあり、「管理栄養士の知識を活かしながら社会を学ぶなら、まずは営業が一番」と判断し、食品メーカーのサプリメント営業職としてキャリアをスタートさせます。
- 「学んだ栄養学を活かして、人々を健康にする仕事に就きたいというのが一番の軸でした。サプリメントはそこに直結していましたし、営業職を通じて商談力や自分で考えて動く力、物流や商流の流れを学ぶことができました。今振り返っても、営業で社会人の土台を作れたことは、良い選択だったと思っています」
- ドラッグストアや小売店などの現場で約5年間、製品とお客様に向き合う中で、「この製品のここを変えたら、さらに売れるのではないか」「こういう販路で展開したらどうか」と、製品の企画や販売戦略を“考える”仕事への興味が強くなってきたと言います。
キャリアチェンジしてマーケティング職に挑戦してみたい―。27歳で退職し、自費でアメリカ留学する道を選びました。 - 「転職や異動で未経験からマーケティングに挑戦させてもらう、という選択肢もあったかもしれません。でも、営業時代から商談時の自分の知識不足をひしひしと感じていて…。せっかくやるのなら基礎から体系的に“学び直し”をして臨んだほうが、長い目で見て必ずプラスになると思いました。急がば回れという感覚です」
- マーケティングを学ぶなら「ビジネス先進国のアメリカに行こう」という思いに突き動かされ、日本を飛び出していくことに。現地で語学学校と並行しながら、2年間の大学生活を過ごしました。
- 「無職になり、経済的な不安やキャリアが一時的に止まってしまうという焦りは、もちろんありました。でも、10年後、20年後のキャリアを考えたときに、必ず大きなリターンになると信じられた。アメリカ留学は自分への投資なのだと思えたのです。今、ちょうどその“20年後”になり、サプリメントのブランド展開を一任されていることを考えると、すべてつながっていると思えます」
マーケティングの基礎は営業にあり。リアルな“現場の声”がブランド企画力につながった
- 帰国後は国内食品メーカーに商品企画職として入社。企画から販売までスピーディに展開する職場環境で学びにあふれる日々を送りました。2007年にネスレ ヘルスサイエンス(前身のノバルティスニュートリション株式会社)に転職。背景には身近で感じた課題意識がありました。
- 「その頃、母が祖母を自宅で介護していました。元気だった祖母が、少しずつ食べられなくなり、飲み込みがしづらくなり、排泄もうまくいかなくなっていくのを間近で見ていました。高齢者にこそ、栄養の力をもっと生かせないかと考えるようになり、医療介護領域の専門的な知識やネットワークを持つ当社への転職を決めました」
- マーケティング領域でのキャリアを見据えながらも、現職への入社後は再び営業職からのチャレンジをスタートした野口さん。医療・介護という新しい領域に飛び込むのなら、まずは現場の声を徹底的に吸収していこうと考えたと言います。
- 「高齢者の方が抱える課題は、飲み込みにくさ(嚥下障害)や、栄養不足、排泄の問題など多岐にわたります。介護施設や医療機関の現場では、食事に時間がかかる方に高カロリー・高たんぱく質の食事が必要だったり、おむつ交換の回数を減らしたいというニーズがあったり。そうしたリアルな声を聞けたことは、後にマーケティング職としてブランドを立ち上げるうえで本当に大きな財産になりました」
- 「営業はマーケティングの基礎」という考え方は、今もぶれずに持っていると言います。その後、思い描いていたキャリアプランどおり、営業、営業企画を経てマーケティング部門に異動した野口さん。医療・介護向けの食品ブランド「アイソカル」の担当として、食物繊維を配合した流動食製品「アイソカルサポート」を立ち上げ、高齢者の排便サポートという現場課題の解決に貢献。ブランドのマーケットシェア拡大に大きく寄与していきました。
- →「後編記事」につづきます。
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子





