『人生の選択肢が広がる道を進んでいく』
SHIFT・品質サービス統括部 別府比呂子さん【前編】
誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は、株式会社SHIFT品質サービス統括部の別府比呂子さんをインタビュー。品質保証の道に進んだ思いについて、お話を伺いました。
別府比呂子さん
株式会社SHIFT
品質サービス統括部 産業流通・通信サービス部 流通サービス2G
大学卒業後、CRMサービスの開発や品質管理業務を経て、2020年7月にSHIFT入社。大手ECサイトのカスタマーサポート領域システムの全体テスト統制として勤務中。
システム障害で痛感した品質保証の大切さ
- ― ソフトウェアの品質保証サービスやテスト事業を手掛ける株式会社SHIFT。金融機関の基幹システムなどエンタープライズ領域から、ECサイト、スマートフォン向けアプリ・ゲーム検証まで、幅広い分野のお客様へサービスを提供しています。 別府さんは大手ECサイトのカスタマーサービス領域を担当し、複数システムを跨ぐシステム基盤移行プロジェクトの全体テスト統括と、サービス移行後の保守運用でプロジェクトマネジメントを担っています。 「品質管理、品質保証の道を極めたい」と2020年7月にSHIFTに転職したという別府さん。なぜ品質保証だったのでしょう。
- 「大学卒業後は、CRMシステムなどの営業支援ツールを手掛ける会社で、プログラマーとしてキャリアをスタートさせました。
もともと大学は土木科で、前職を選んだのも、同社が土木関連ソフトを開発していたからでした。でも入社のタイミングで、土木関連事業が譲渡されることになってしまった。学んできたことを生かせないのかと少し悩みましたが、CRMという新しい分野に今チャレンジしなければ一生縁がない世界かもしれない。やってみてから考えようと、プログラマーとしてものづくりの世界に飛び込みました」
- ー 技術を学びながらものを作っていくプロセスは、土木に通じる面白さがあったと語る別府さん。プログラマーとして1つのシステムを作れるようになった5年目、キャリアのターニングポイントとなる“事件”が起こりました。
- 「チーム一丸となって作ってきたシステムで、キッティング終了後リリース直前の段階で障害を出してしまったのです。毎日、検証と確認を重ねてようやく完成したシステムが、 “ある一定操作をすると障害が発生する”事態が発覚。それが分かったときは、地面が崩れて倒れるかと思うほどの衝撃でした。影響範囲の大きな障害だったため、復旧させるまでも大変で、お客様からのご指摘やお叱りに、毎日泣きそうになりながら、何とか事なきを得ました。
もう二度と、こんな経験はしたくないし、誰にもしてもらいたくない。その思いが、品質保証に本気で取り組むきっかけになりました」
- ー 当時、品質保証は開発メンバーが随時担当していましたが、それでは客観的な視点が足りないと別府さんは考えました。そこで、品質保証を専任で行うチームの立ち上げを上司に提案。上司も理解を示してくれ、チームづくりから業務設計まで権限を与えてくれたといいます。
- 「障害が分かったときは、なぜ開発段階で見つからなかったのか、どの段階での確認がダメだったのかと、何度も何度も考えました。そこで見出した自分なりの答えは、“要件定義の上流段階から品質保証の観点を組み込んで作っていく”ことでした。
開発側は、ものを作り出していく業務に注力しがちです。でも、作り終えた最終段階でテストするだけでは、確認精度が個人のスキルに依存するだけでなく、運用視点や業務視点、セキュリティ視点といった観点が漏れがちになってしまいます。開発と品質保証が一体となってものづくりを行う体制を作ろうと、チームを動かし始めました」
- ー 品質保証に完璧や正解はない。その難しさが、品質保証をもっと極めたいと思う原動力になったと話します。
- 「論理的に組み立てていけば、リスクはある程度まで減らせます。自分一人ではできなくても、“周りを巻き込み、開発者やお客様と一緒になってより良いものを作っていく”、そのプロセス自体も好きなのです。でも何よりも、私が経験した地面が崩れるかのような恐怖を、ほかの誰にも味わってほしくない。その思いが、一番の原動力かもしれません」
社外コミュニティから転職への挑戦を後押しされた
- ー 品質保証のプロとしてスキルアップしていきたいと思ったとき、品質保証やテスト実績の豊富なSHIFTは「転職できたらいいな」と思う理想の環境だったといいます。 前職では、社外のセミナーやコミュニティにも積極的に参加し、品質保証領域の他社メンバーと会話する機会をとっていた別府さん。そこで、第三者視点を得られたことが、転職へ背中を押されるきっかけになりました。
- 「他社で品質保証をしているメンバーと話をしていると、私が培ってきたスキルや経験は、外でも通用するかもしれないと思えるようになりました。自分の立ち位置を、他社の視点から見られたことで、よりスキルアップできる環境に飛び出す決意が固まったんです」
- ー 品質保証は、開発の最終工程から参画するパターンもありますが、SHIFTでは要件定義段階の上流から携わります。お客様のシステムに対して品質保証のプロとして意見する機会も多いといいます。
- 「SHIFTに来て思ったのは、さすが品質保証に特化したプロ集団だ、ということでした。知識やスキルレベルが深く、ナレッジを知る機会も多くて、とても勉強になります。お客様や開発者をはじめ、さまざまな立場のステークホルダーと一緒にプロジェクトを進めるので、品質保証の観点から『こんなツールが必要』『この検証が必要』などと説明して動かしていくマネジメント力も求められる。学ぶことの多い環境で、とても恵まれていると感じています」
(→後編に続く)
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■別府比呂子さんのインタビュー動画
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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子