「人」で組織を強める「ピープルマネジメント」とは?手法や注意点を解説
マネジメントには様々な種類がありますが、今回紹介するのはメンバー一人ひとりの力を引き出し成果を出す「ピープルマネジメント」という手法です。
この記事では、ピープルマネジメントの概要や具体的な手法、注意点について解説しています。
目次
ピープルマネジメントとは
ピープルマネジメントとは、メンバー一人ひとりと向き合いその成長にコミットすることで、「人」を高めて成果を出すマネジメント手法です。
なぜピープルマネジメントが注目されるのか
年功序列や終身雇用をはじめとする、いわゆる“日本型雇用”の見直しが活発化する中、以前の働き方の常識は通用しなくなりつつあります。若手を中心に、メンバーの価値観も多様化しており、同じマネジメントで横並びにメンバーを育成することは難しくなってきました。また雇用が流動化する中で、転職や退職へのハードルも下がってきており、よりきめ細やかなマネジメントが求められるようになっているのです。
個々に目を向け、一人ひとりの成長にコミットするピープルマネジメントは、社会の変化にもメンバーの多様な価値観にも対応できる今の時代にぴったりなマネジメントと言えるのです。
従来のマネジメントとの違い
従来型のマネジメントもピープルマネジメントも、目指すのは『組織の成果の最大化』です。
ただ従来型のマネジメントは、組織の成果の最大化を目指すものであり、あくまで主体は「会社」にありました。そのため管理職の役割はメンバーの管理や評価が中心であり、その人材をどう組織に生かすか見極めることが重視されていました。
一方、ピープルマネジメントで大切にするのは個の成長であり、主体は「個人」にあります。管理職は、メンバーに伴走しながら、エンゲージメントやモチベーションを高め、最終的に個人が成長することを目指します。
クルト・レヴィンの法則
では、管理職がメンバーの成長にコミットするにはどうすればいいのでしょうか?ここでよくピープルマネジメントと一緒に語られるのが、心理学者クルト・レヴィンが唱えた「クルト・レヴィンの法則」です。
「人が取る行動は、人間の特性と環境とが相互に作用して生じるものである」というのがレヴィンの提唱した理論で、レヴィンはこれを「B=f(P・E)」という式で表しました。
B=Behavior (行動)
P=Personality (人間性、人格、個性、価値観、性格など)
E=Environment (周囲の状況、集団の規制、人間関係、風土など)
※fはFunction (関数)を表します。
つまり、人の「行動」は元々の人間性と周囲の環境により変化するということです。
「行動」により「物事の結果」が変化し、その一つ一つが「成長」に繋がります。メンバーの行動を変化させ、成長に繋げるためには、管理職がメンバーの人間性や周囲の環境を理解することが必要不可欠になるということですね。
また環境に関係したキャリアの形成方法として「プロティアンキャリア」も参考になる考え方です。ぜひご覧ください。
環境に応じて柔軟にキャリアを変える「プロティアンキャリア」とは
ピープルマネジメントの手法
では、ピープルマネジメントを実践するために、具体的な手法を紹介します。
マネジメント研修を行う
まずはピープルマネジメントの考え方を組織内で共有する場が必要です。
企業によっては、会社全体で旧来のマネジメントの手法や考え方が固定化しているケースも考えられます。組織としてピープルマネジメントの手法を導入する際には、まずマネジメント層を対象に、ピープルマネジメントの考え方を学ぶ研修を導入するのが有効です。
部下とのコミュニケーションの量を増やす
「メンバー個々の成長と向き合う」と一口に言っても、個人のモチベーションやエンゲージメントをいきなり高めるのは想像以上に難易度の高いことです。
そのため、まずはメンバーとのコミュニケーションの量を増やすことから始めてください。ここでいうコミュニケーションとは、ビジネスコミュニケーションの意味合いであり、個人的に飲みに行くなどではありません。1on1やミーティングの場を定期的に設け、メンバーが思い描くキャリアや達成したい目標など、相手の人間性を知り相互理解に繋げることが大切です。
フィードバックの質を上げる
コミュニケーションの量が担保できるようになれば、フィードバックの質を上げるよう意識します。
相手のことを理解した状態になれば、メンバーが克服すべき課題や成長のためのロードマップなど、具体的な内容が見えてきます。その内容を達成するための行動を一緒に考えましょう。
メンバーの成長につながる内容に踏み込んで話ができるようになり、メンバー自身が確かな成長実感を得られれば、メンバーから管理職への信頼や組織への愛着にもつながっていきます。結果的にチームや組織のパフォーマンスは向上するはずです。
具体的なフィードバックの手法については、ぜひこちらの記事もご参考ください。
人材育成のためのフィードバック。管理職がすべき正しい手法
伴走型のマネジメントを行う
従来のマネジメントは強いリーダーシップによって、管理職が組織を牽引するものでしたが、ピープルマネジメントでは「管理職の役割は伴走者である」と意識することが大切です。
メンバーが最大のパフォーマンスを発揮するためにも、管理職はメンバーの成長を促すためのサポート役でありガイド役であることを意識しましょう。
類似のリーダーシップ論に、チームの一人一人が影響力を発揮する「シェアドリーダーシップ」というものがあります。興味がある方はぜひこちらの記事もご覧ください。
チームの一人一人が影響力を発揮するシェアドリーダーシップとは
ピープルマネジメントのメリット
ピープルマネジメントを行うことで、具体的にはどんなメリットがあるでしょうか。代表的なものをご紹介します。
メンバーの自立を促す
ピープルマネジメントでは、管理職からの一方的な指示ではなく、メンバー個人の仕事について管理職とメンバーが話す機会が多くなるため、自然とメンバーに役割意識が生まれます。
またメンバーは自分の仕事についてのフィードバックを受ける機会が多くなるため、当事者意識が上がり、モチベーション高く業務に取り組むことができるようになるのです。結果的に、メンバーの自主性が育てられ、自立を促すでしょう。
会社や組織へのエンゲージメントの向上
自身の成長と向き合ってくれる管理職の存在や仕事を通じた成長実感は、組織へのエンゲージメントを高めます。
「この会社にいればもっと成長できる!」とメンバーに感じさせることは、モチベーションの向上や離職率の低下にもつながるでしょう。
管理職とメンバーの相互理解を促す
コミュニケーションの量が増えることで、自然と管理職とメンバーの相互理解が深まることもメリットの一つです。相手の目指すべき状態やスキル、得意な局面など多くを把握していることで、管理職も仕事の中での差配の柔軟性が上がります。
また相互理解が深まり、チーム力が高まることで、組織への貢献度も上がると考えられます。
ピープルマネジメントを行う時の注意点
最後にピープルマネジメントを行う時の注意点をお伝えします。
成果が出るまでに時間がかかる
人と人との信頼関係は一朝一夕で築けるものではありません。ピープルマネジメントは人の成長にコミットするという性質上、成果の実感には時間がかかるものであることを承知しておく必要があります。
傾聴力と自己開示
メンバーの成長にコミットするためには、相手への理解を深める必要がありますが、中には自分の情報を開示するのが苦手な人も少なくはありません。
関係性が築けていない内は「何を言っても否定されない」という相手にとって安心・安全の場を作ることが非常に重要になるので、管理職の「傾聴力」は非常に重要なスキルとなります。
また何も知らない相手に自分の情報を開示するのは誰しも不安なものです。相手の理解を深めるためにも、管理職自身が自己開示を積極的に行うようにすることも大切です。
公正な評価システムの導入
ピープルマネジメントの懸念点として挙げられるのが「管理職の好感度によって評価が左右されるのではないか」とメンバーに思わせる危険性があることです。
人によって関係性を築くスピードは異なり、その差が気になるメンバーもいるでしょう。好感度が評価に反映されている訳ではないと示すためにも、360度評価や定量化できる評価基準を設けるなどの工夫は必要になります。
★360度評価についての記事はこちら
『360度評価って? メリットデメリットや、気を付けるポイント』
まとめ:ピープルマネジメントで強い組織をつくる
ピープルマネジメントは、変化の激しい現代に適したマネジメント手法です。メンバー一人ひとりの個性を伸ばし、モチベーションとエンゲージメントを高めることでより強い組織を作っていけるでしょう。