管理職に求められる役割と、マネジメントの基本業務とはのイメージ画像

管理職ラボ

管理職に求められる役割と、マネジメントの基本業務とは

働き方の選択肢や価値観が多様化した現代では、組織マネジメントがとても難しくなっています。しかし、基本的なマネジメントや管理職の役割は不変。連載初回では、管理職になりたての方や、今まさにマネジメントに悩む管理職の方、またこれから管理職を目指す方向けに「管理職の役割と基本業務」をご紹介します。

管理職の役割とは

管理職の役割を定義すると「自分自身・上司・チームメンバー・他部門などあらゆるリソースのパフォーマンスを最大化し、担当組織における目標達成や問題解決を推進する役割」と言えます。

管理職の役割=チームメンバーのパフォーマンス最大化といったイメージがありますが、実はそれだけはなく、上司・経営・他部門など、社内のあらゆるリソース(経営資源)を活用して、そのパフォーマンスを最大化する、という意識が大切です。

つまり、管理職であるあなたが関わることで、関わった相手の意識・スキル・パフォーマンスが良くなっていく、という状態を目指すのです。

また、リソースの中には「自分自身」が含まれていることも忘れてはいけません。特に責任感が強い人・面倒見が良い人にありがちなのが、メンバーや周囲のことを考えすぎてつい自分を大切にすることが疎かになってしまい、気づいたら心身ともに疲弊してしまうこと。

すると、適性があるにも関わらず、「管理職を続けたくない」「マネジメントにはもう疲れた」と、マネジメントから離れてしまい、本人にとっても会社にとっても悲しい結末になりかねません。

まずは自分を的確に理解するために「内省」をし、自分自身のパフォーマンス最大化に務める。その後、メンバーを「支援」、上司を「補佐」、他部門と「連携」し、あらゆるリソースのパフォーマンスを最大化し、担当組織における目標達成や問題解決を推進していくこと。これこそが管理職の役割です。

管理職は、自分の価値観で他人を判断しない

では「あらゆるリソースのパフォーマンスを最大化すること」はどうすれば実現できるのでしょうか? 支援・補佐・連携をスムーズに行なうためには、人々の価値観を形成する「Will・Can・Know・Must+Personality」の視点が必要です。

・Will:やりたいこと・意志をもっていること
・Can:できること・苦手なこと
・Know:知っていること・知見がないこと
・Must:やるべきこと・期待されていること
・Personality:性格・価値観・モチベーションの源泉

苦手な上司も、扱いにくいメンバーも、何をしているかわからない経営や他部門も、必ずそれぞれが「Will・Can・Know・Must+Personality」を持っています。

さらに、その人が持つ「Will・Can・Know・Must+Personality」がプライベートの中にある場合も。ワーク・ライフ・バランスという言葉が使われて久しいですが、コロナ禍が自分の生き方を見つめ直すきっかけとなり、仕事よりもプライベートに重きを置く人は確実に増えたと言えます。

管理職は非管理職よりも仕事に熱心であり、仕事で成果を出した人が多いはずです。年功序列の企業であっても、長く務めている=仕事の累積成果が大きいということなので、例外はあれど、非管理職よりも成果を出していると考えられます。そんな管理職たちが、「私と同じくらい仕事に熱心に取り組むべきだ」「私がこれだけ長く務めたのだから、それ位の辛抱は当然だ」と、自らの価値観をもとに物事を捉えてしまうと、あちこちに問題や軋轢が生まれます。あくまで自分と他人は違うこと、自部門と他人は違うということ。それは違いであって、良し悪しではないということを、忘れないでおきましょう。

ちなみに、企業におけるWillはMission・Vision・Value、Canは経営資源・ケイパビリティ・戦略、Mustは目標で、Personalityが文化に該当します。

管理職の語源は「やりくりしてなんとかする人」

このように丁寧に自分や他者を理解することが、会社のリソースをダイナミックに活用することにつながりますが、それでも毎日、大きなものから小さなものまで問題は起こり続けます。そんな日々にうんざりしそうになったら、管理職=Managerの語源を思い出してください。Manger(名詞)の元になるManage(動詞)の意味は、「うまくする、どうにかしてする、都合をつける、なんとかする、経営する」ですから、Managerは「やりくりして、なんとかする人」なのです。

そもそも、全員が常に同じ方向を向いていて、リソースも時間も潤沢であれば、“やりくり”=調整の必要はありません。なんとかしなければならない問題・状況があるからこそ、“やりくりする人”としての管理職の存在意義があるのです。問題が起きたときにこの語源を思いだせば「よしよし、私が活躍するときがきた!」と、前向きに捉えられる気がしませんか?

上司とメンバーの間、メンバーとメンバーの間、管理職と非管理職の間、部署と部署の間、経営と現場の間……。物事の間に問題は生まれやすいものです。管理職には、それらの“間”を上手く埋めるために、様々な調整をして、たとえスマートでなくても、問題解決や事業推進をリードしていくことが期待されています。

管理職の基本業務

続いて、管理職の役割を遂行するための業務を紹介します。管理職の職位があがるほどに、マネジメントすべき範囲は広がっていきます。

縦軸は職位の高低、横軸は右側が人・組織に関するマネジメント業務、左側は定型業務やプロジェクトなど業務に関するマネジメント業務です。

まずすべきことは、右下のメンバー個人のマネジメントです。その次に、チームとしての相乗効果を生みだすためのチームマネジメントが必要です。個人マネジメントとチームマネジメントをまとめたものが、「People Management(ピープルマネジメント)」です。ピープルマネジメントは、「人材のモチベーションやポテンシャルを引き出し、チームパフォーマンスを最大化すること」が目的です。

ピープルマネジメントを習熟すると、次は「Project Management(プロジェクトマネジメント)」が求められます。プロジェクトマネジメントは、「定型業務や部門横断型プロジェクトなど、業務全般のQCD向上」が目的です。一般的に、定型業務のマネジメントよりもプロジェクト型の業務のマネジメントが難しくなります。また、複雑で大きな問題は、ステークホルダーも多様なので、問題解決を担当組織のみで完結することは難しく、基本的には部門横断のプロジェクトで解決を目指します。伸び悩む管理職の大半が、プロジェクトマネジメント力を有していないことが原因でもあるので、中長期的なスキルアップを心がけたい技術です。

さらに経営に近づくにつれ、より抽象的かつ影響が広範囲なものをマネジメントしていくようになります。

・Talent Management(タレントマネジメント)
未来を担う人材の発掘・登用・育成
・Strategy Management(ストラテジーマネジメント)
担当領域の目標達成のための戦略を明確にし、戦略実行をリード
・MVV Management
Mission(理念・目的)、Vision(ありたき姿)、Value(価値観)を明確にし、体現

ピープルマネジメント→プロジェクトマネジメント→タレントマネジメント→ストラテジーマネジメント→MVVマネジメントのように、順番に(時には並行して)、マネジメント力を積み重ねていくことが、管理職としての理想のスキルアップです。

まとめ

新人管理職や管理職を目指す方にとって、まずはここでご紹介した管理職の役割、業務をしっかりと理解することが大切です。そして現在、管理職として悩みを抱えている方も、いま一度基本に立ち返ることで、目的を見失わず、よりよいマネジメントができるようになるでしょう。

\合わせて読みたい記事/
「管理職の目標設定のコツ。組織やメンバーを成長させるための考え方」

監修者:中野 崇のイメージ画像

監修者:中野 崇

Zoku Zoku Consulting 代表 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

早稲田大学教育学部卒。良品計画を経て2005年にマクロミルへ。上海支社の立ち上げ(事業部長)、韓国支社の経営再建(取締役)、SaaS型事業開発・統合マーケティング部門の立ち上げ・グローバルMission/Vision/Value策定(いずれも執行役員)、電通マクロミルインサイトのCEOなど、第2創業期の要職を歴任。課長・部長・執行役員・取締役・代表取締役を経験し、延べマネジメント人数は500名超。2018年よりZoku Zoku Consultingを開業。豊富なマネジメント経験と新規事業開発経験を活かし、新規事業開発×チームビルディングを同時に実現する伴走型・OJT型のコンサルティングを提供している。

https://zokuzoku-design.co.jp/



【著書】『管理職のための数値化技術(日経BP)』、『多彩なタレントを束ね、プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事(すばる舎)』など

【Udemy】『現状分析からはじめるマネジメントの超基本』、『リモートワーク時代のマネジメント術』など多数。

一連のコンテンツを通して、自分らしい生き方・キャリアを実現する、ビジネス基礎スキルの向上ノウハウを発信している。

<読者へのメッセージ>

マネジメントを真摯に実践していると、「チームで問題解決を推進する力」「知見を体系的に伝える力」「人としての器を広げる鍛錬の機会」「育児に活かせる観察力・想像力・共感力」など、さまざまなモノが得られます。何かと大変な管理職ですが、仕事だけでなく、人生を豊かにする機会やスキルを獲得できる醍醐味があります。
貴重な機会として、ぜひ最大限味わってみてください!

 

  • line
  • リンクトイン

RANKINGランキング

  • 週間
  • 月間