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管理職の目標設定のコツ。組織やメンバーを成長させるための考え方

目標は、経験・勘・何となくで設定してはいけません。また、数字を置けば良いという単純な話でもありません。管理職が正しく目標を設定するためには、まず「チームの現状分析」を丁寧に行う必要があります。連載第2回では、現状分析から目標設定までの手順について紹介します

 

連載第1回はこちら

「管理職に求められる役割と、マネジメントの基本業務とは」

 

目標設定の前に、他の管理職から見たチームへの期待を知ろう

管理職とは、もっとも現場に近い経営陣です。会社のビジョン・成長戦略・業績目標を達成するために、まずは任されたチームが目指すべき目標や達成すべきことを確認します。管理職にとっては、それが自分の目標設定にもなります。

通常、目標設定とは評価者となる直属の上司と行いますが、管理職にとってはそれだけでは不十分です。第1回の記事でもお伝えしたように、管理職の役割は、自分のチームや上司だけでなく、経営・他部門など、社内のあらゆるリソース(経営資源)を活用して、そのパフォーマンスを最大化することです。そのためには、業務上で連携が深い他部門の管理職と意見交換をすることも必要になります。彼らのWill/Can/Must + Personalityだけでなく、自チームへの具体的な期待や要望を把握し、目標に反映させることが大切です。

また、管理職1年目は周囲の期待が膨らんでいるタイミング。そのタイミングを活かして、普段話す機会がない上司の上司や経営陣から、直接会社のビジョンや課題感を聞かせてもらうのも良いでしょう。そういったMTGは、経営陣や上級管理職にとっても前向きな時間なので、喜んで協力してくれると思います。

目標には会社への収益貢献の視点を取り入れる

さて、社内の様々な立場の人の話を聞いていくと、何を目標にすべきかが徐々に鮮明になっていきます。そこで注意したいのは、短期的な問題への対処ばかりを目標にしてはいけない、ということです。もちろん、目の前の問題処理も大切なことです。しかし、所謂マイナスを0にする業務ばかりに時間を使っていては、組織を成長させることはできません。就任から3ヶ月~半年もたてば管理職としての仕事のリズムもでてくるはずです。目先のことだけでなく、より高く難しい目標を設定→挑戦→試行錯誤→達成→さらなる成長と充実感の獲得、という好循環を意図的に生みだすことが重要です。

本当にマネジメント力がある管理職であれば、組織を率いている期間中に、既存業務の効率化と新しい業務への挑戦、そして所属メンバーのスキルアップを目標に掲げ、同時並行で推進、達成するのです。


第1回の記事でピープルマネジメントの重要性をお伝えしましたが、ともすると「メンバーのケアや成長支援」に偏ってしまう管理職も少なくありません。もちろんそれらも重要ですが、収益貢献の視点を忘れてはいけません。管理職になりたてであっても「チームの経営者」というポジションでの視野を持ち、率いるチームが会社全体にもたらす収益や価値を大きくすることにはこだわっていきましょう。

連載第1回はこちら
「管理職に求められる役割と、マネジメントの基本業務とは」

このような考え方をもとに、まずは自分自身とチーム全体の目標設定を行い、その内容を各メンバーの役割分担とともに、目標へと落とし込むという順番が大切です。いきなりメンバー個人の目標設定から始めて、(周囲へのヒアリングなどもせずに)その足し算が組織の目標です、という決め方はやめましょう。

目標設定はスマートに

さらに、目標はスマート(SMART)に設定することがポイントです。

SMARTは適切な目標設定に必要な視点をまとめたフレームワークのことです。


Specific:明確性・具体性
-誰から見ても明確で具体的になっていること
 
Measurable:計測性
-目標の達成状況が簡単に計測できること
-数字で計測できることが望ましい
 
Achievable:達成可能性
-目標が背伸びすれば達成できる水準であること
-妄想・希望・簡単すぎる等はNG
 
Relevant:連動性
-会社やチームの戦略・方針と連動していること
-本人のWillやPersonalityと重なっていること
 
Time-bound:期限
-目標達成までの期限が設定されていること


「明確で具体的で、測定可能であり、背伸びすれば達成でき、戦略や本人の意志と連動していて、期限が設定されている」目標は、素晴らしい目標です。反対に「曖昧で抽象的で、測定できず、非現実的。さらに戦略や意志と連動しておらず、期限が設定されていない」目標は最悪、ということです。

参考までにSMARTな目標設定と残念な目標設定の例を紹介しておきます。

目標の達成可能性を高める工夫

特に、SMARTな目標設定の中でも、Achievable(達成可能性)の設計が肝心です。

ポイントは「全員が背伸びすれば、ちょっと頑張り続ければ達成できる」という目標ラインを設定していくこと。簡単すぎれば組織は成長しませんし、現実離れしすぎては組織が疲弊します。モチベーションも下がるでしょう。

良い塩梅の目標設定を実現するには、やはりメンバー個々のWill/Can/Must + Personalityや経営・上司・他部門からの期待や課題感を、丁寧に把握することが有効なのです。

また、達成可能性を検討する際は、必ずといって良いほど「時間がない」「やれる人がいない」というリソース不足問題に直面します。新しい人を雇いたいと思っても、採用枠の確保には時間がかかります。そんな時は、自組織のリソースだけにこだわらず、上司や上司の上司、他部門、外部の業務委託など、さまざまな観点でリソース拡張を検討しましょう。

さらに、管理職になった際に、自分が使える予算をしっかりと確認することも重要です。
採用ともなると、スキルの高い即戦力を期待すれば、少なくとも600万~1,000万円相当の年収が必要になってしまいますが、スポットコンサルや数ヶ月の業務委託などであれば、数万円~数十万円で、彼らの知見や支援を活用することができます。

そしてその程度の金額ならば、早い段階から交渉していれば確保できる可能性も上がります。しかし、年度が進めば進むほど社内でも他に割かなければいけないコストが増え、確保が難しくなってしまうのです。
人がいなくても、お金があれば手は打てます。コストをかけるということは、目標設定に必要な武器が増えることでもあるので、背伸びラインを高めることができます。例えば、副業を行なっている優秀な人材を業務委託で雇うなど、自社リソースにとらわれない視点をもち、予算確保アクションは早め早めに行動しましょう。

まとめ

目標設定は「面倒くさい」「気が重い」と感じている管理職は多いかもしれません。実際、目標設定には多くの時間を割く必要がありますし、評価とセットでもあるので、神経をつかう業務です。

ただ、メンバーと対話しながらSMARTな目標設定ができれば、その目標を達成するプロセスは、彼らにとっても成長が実感できる有意義な時間になります。

また、ダイナミックにさまざまなリソースを使って問題解決を推進したり、新しい業務に挑戦して組織を成長させたりすることができれば、あなた自身も、管理職の醍醐味を実感することができる時間になります。その出発点は、丁寧な現状分析によるSMARTな目標設定です。

ぜひ目標設定のプロセスを見直してみてくださいね。

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監修者:中野 崇

Zoku Zoku Consulting 代表 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

早稲田大学教育学部卒。良品計画を経て2005年にマクロミルへ。上海支社の立ち上げ(事業部長)、韓国支社の経営再建(取締役)、SaaS型事業開発・統合マーケティング部門の立ち上げ・グローバルMission/Vision/Value策定(いずれも執行役員)、電通マクロミルインサイトのCEOなど、第2創業期の要職を歴任。課長・部長・執行役員・取締役・代表取締役を経験し、延べマネジメント人数は500名超。2018年よりZoku Zoku Consultingを開業。豊富なマネジメント経験と新規事業開発経験を活かし、新規事業開発×チームビルディングを同時に実現する伴走型・OJT型のコンサルティングを提供している。

https://zokuzoku-design.co.jp/



【著書】『管理職のための数値化技術(日経BP)』、『多彩なタレントを束ね、プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事(すばる舎)』など

【Udemy】『現状分析からはじめるマネジメントの超基本』、『リモートワーク時代のマネジメント術』など多数。

一連のコンテンツを通して、自分らしい生き方・キャリアを実現する、ビジネス基礎スキルの向上ノウハウを発信している。

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