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上司と部下の相互理解を進めるアシミレーションとは

チーム力を発揮するためには、上司と部下の相互理解や信頼関係が不可欠です。しかし一方で「チームメンバーが本音を話してくれない」「いまいち部下のことが分からない」と悩むリーダーや管理職の方も少なくないでしょう。

 

この記事では、上司と部下の相互理解を進めるための組織開発の手法『アシミレーション』について解説しています。

アシミレーションとは?

アシミレーションとは、上司と部下の相互理解をすすめ、関係性を良くするための組織開発の手法です。

具体的には、リーダーや上司がいない場で、ファシリテーターを間におき、メンバーが対象の上司についての意見を交わし、その内容を上司にフィードバックするという形式で行います。

メンバーが上司のあり方をどのように受けとめているのか、そしてどのように関わりたいと考えているのかを、上司はファシリテーターを介して知ることができます。そして上司は、それを受けて考えたことをメンバーに返し、相互理解を深めることができるのです。

アシミレーションのメリット

アシミレーションのメリットを幾つか具体的にご紹介します。

相互理解の促進

アシミレーションは上司のいない場所でメンバーが自由に意見を言うことができる場です

そのため、部下の本音が引き出しやすく、普段上司が聞けなかった意見を聞くことができる可能性が高まります。

部下の率直な意見を聞くことで、上司は部下が普段はなかなか言葉にできなかった本音に触れて、上司も目指す方向性の意識合わせの再修正ができます。「伝えたつもりなのに、伝わっていなかった」など、認識違いや誤解があったことにも気づくことができます。
アシミレーションを効果的に活用することで、上司と部下が同じ景色を見るように理解が進むでしょう。

本音でのコミュニケーションは、面と向かってだと難しいこともあります。普段働いている相手であれば尚更です。第三者を間に挟むことによって、円滑に相互理解が進められることがアシミレーションの大きなメリットの一つです。

ミスコミュニケーションの解消

もう一つは「ミスコミュニケーションの解消」です。

アシミレーションは相互理解を促進すると同時に、上司と部下の間にある相互理解の溝を早期に埋めるための手段でもあります

上司と部下では、どうしても仕事に対しての視座が違います。お互いの見ているものの違いから、部下は上司の言いたいことが理解できず不満を抱き、上司もやきもきする事があるかもしれません。

アシミレーションを実施することで、上司も部下もお互いの認識の齟齬を理解し、ミスコミュニケーションがあったことに気づきます。お互いのミスコミュニケーションの裏側にどういった考えがあるのかを知る事で、納得して仕事ができるようになる可能性が高まります。

チームに一体感が生まれる

相互理解が深まり、ミスコミュニケーションが解消されると、チーム全体の関係性の向上が見込めます。関係性が良くなれば、本音でコミュニケーションできる機会も増え、チームに一体感が生まれます。

アシミレーションの具体的な手法

では具体的にアシミレーションの行い方を解説します。

ファシリテーターを設定する

一般的にアシミレーションは、上司を含まず、チーム外の「ファシリテーター」を設定して行います。ファシリテーターは発言を促し、場を円滑に進めるための調整役のような役割を持っている重要なポジションです。
場合によってファシリテーターは、上司の上司をアサインして行うこともあります。

メンバーに目的を共有する

アシミレーションを行う前には、まず実施の目的をメンバーに共有します。この時上司は同席していても退席していても構いません。上司が同席することで部下が率直に発言できない場合は、同席しないほうが意見は出やすいかもしれません。

重要なことは、上司への好き嫌いや感情論に陥らないことです。アシミレーションの目的は、成果を上げて目標達成するために、上司とのコミュニケーションを建設的なものにしていくことです。

メンバーから意見を聞き出す

目的をメンバーが理解したら、ファシリテーターは部下から上司に対する質問・意見を引き出します。この時の質問項目は、あらかじめ上司と相談してある程度固めておくことも効果的な方法です。

一例をご紹介します。

・上司が普段語っている言葉について疑問に思うこと
・経営陣のメッセージを自部署に落とし込んだ時の整合性の解説
・業務の進め方などで困っていること、気がかりなこと
・上司に対して不安や不満に感じていること
・現在の仕事の負荷やレベル感が合っているか
・自分たちについて知ってほしいこと

リーダーへのフィードバック

メンバーから一通り意見を集めたら、今度はメンバーのいない場所でファシリテーターは上司へメンバーの意見のフィードバックをします。フィードバックまでの期間はあまり空けない方が良いでしょう。

ファシリテーターはメンバーから出た意見を脚色せず、ありのままリーダーに伝えます。ただし、この時発言者の名前は伝えないように気をつけます

リーダーにとっては耳が痛いコメントや反論したいコメントもあるでしょう。これがまさにミスコミュニケーションの種です。部下からの自分に対する本音を知ることで、実は誤解されていたり、意図が伝わっていなかったりということが発見できます。これは、チームの信頼関係を構築するための大きな一歩になるでしょう。

人材育成のためのフィードバックについての記事はこちら
人材育成のためのフィードバック。管理職がすべき正しい手法

リーダーからメンバーに対してコメント

その時出た意見に対して、リーダーはメンバーに対してコメントを返します。間違って伝わっていた内容に対しては実際の意図を、メンバーが不満を持っていたことに対しては改善点を伝えます。

メンバーへのフィードバックは、話し合いの場でリーダーが直接行う、またはファシリテーターが行っても良いです。チームの関係性に応じて、どの対応が一番効果があるかは変わってくるので、場合によって見極める必要があります

効果的なアシミレーションのために必要な、ファシリテーターのスキル

アシミレーションが成功するためにはファシリテーターの力量が大きく寄与します。
以下は、ファシリテーターが持つべき3つのスキルを記します。

・中立性と公平性
ファシリテーターは中立で公平な立場を維持することが不可欠です。上司と部下という異なるポジションの人々が関与する場合、ファシリテーターがどちらか一方に偏ったり、あるいは不公平な態度をとったりすることは避けなければなりません。中立性を保ちながら、全ての関係者が平等に発言しやすい環境を作り出すことが求められます。

・共感力とコミュニケーションスキル
ファシリテーターは参加者と深い理解と共感を持つ必要があります。共感力を発揮し、関係者の感情や視点を理解することで、対話の品質が向上します。また、優れたコミュニケーションスキルは、情報の明確な伝達や適切な質問の提供など、円滑なプロセスを確立するのに役立ちます。

・問題解決志向と柔軟性
アシミレーションの過程において、様々な課題や問題が浮上する可能性があります。ファシリテーターは問題解決に対する前向きな姿勢を持ち、柔軟性を発揮して臨機応変に対応する必要があります。時にはプロセスを修正し、新たなアプローチを導入することで、参加者がより効果的に協力しやすくなります。

アシミレーションで注意すべきポイント

これまで説明した通りアシミレーションは、上司と部下の関係性を急激に改善するための手法です。

場合によっては不満が噴出することや、逆に何も意見が出てこないということもあり得ますので、ここでは注意するポイントについて解説します。

リーダーが決まってから、しばらく期間を空ける

アシミレーションは、ある程度チームが出来上がってから行いましょう

チームが結成してすぐの頃は、そもそも関係性が出来上がっておらず、有用な意見が出てこない可能性が高いです。ある程度チームが発足して時間が経ち、仕事やメンバーに慣れた頃になると、部下も目の前の仕事だけではなく周りのことが見えてきます。その頃には改善したいことややりたいこと、不満なども出てくるので、効果的に行うことができます。

チームが発足して最初の頃は、上司が部下と信頼関係を構築することが大切なので、直接話す機会を増やすことをおすすめします。

信頼関係構築の方法の記事はこちら
管理職とメンバーの信頼関係構築のポイント

心理的安全の場になるように注意する

上司に対して思うところがあっても、その場でいうことを躊躇してしまう部下もいます。

本音をいうことは勇気がいることです。その場の発言は匿名性を守り、上司には誰が言ったのか伝わらない事をあらかじめ説明し、徹底することが必要です。その上で、ファシリテーターはメンバーがリラックスして話せる場になるよう努める必要があります。

そう言った意味でも、ファシリテーターは直接的な利害が発生しない人間をアサインするなど、慎重に選ぶ必要があります。

建設的な場となるよう努める

チームの関係性が悪く、メンバーがリーダーに対して多数不満を抱えている場合、愚痴ばかりになる可能性も否定できません。

メンバーの本音を聞き出す場であるアシミレーションの特性上、不満が出てしまうことは避けられません。ただ愚痴ばかりになってしまうと建設的な場になりません。

不満が出てきた場合は「どうして不満に思ったのか」「どう改善してもらいたいか」など、具体的な改善例を聞き、上司と部下の関係性改善に繋がるような意見に昇華させましょう。また悪い点を指摘するのではなく、「自分たちは上司とどのような関係性を築きたいのか」前向きな意志や仕事への意欲を引き出すことが大切です。

くれぐれも「上司が変わるべきである」「部下が上司に従うのが当たり前だ」など他責思考に陥らないように、ファシリテーターは注意する必要があります。

まとめ

今回の記事では、上司と部下の相互理解を進めるための組織開発の手法『アシミレーション』について解説しました。

アシミレーションを行うことで、相互理解の促進やチーム力の向上といった効果が期待できます。最近チームメンバーとのコミュニケーションがうまくいかないな、と思う時やチームの運営に行き詰まり感を感じている時のヒントになれば幸いです。

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