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読むと元気になる「インタビュー」

働き方の価値観は一人ひとり違う コンプライアンス担当として“自分にはない視点”の大事さを学んだ

女性なら誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

 

第6回は、アクセンチュア株式会社 人事本部マネジャーの今井雅子さんをインタビュー。どのような経験を経て、現在の仕事に向き合っているのか、お話を伺いました

今井 雅子さんのイメージ画像

今井 雅子さん

アクセンチュア株式会社 人事本部マネジャー

大学卒業後、外資系電子部品メーカーに入社。法務グループにて法務業務全般を担当する。その後、人事グループにて、労務を中心にHRBPやTalent Acquisitionなど幅広く人事業務を経験。2020年、アクセンチュア株式会社に転職。人事本部マネジャーとして、人事本部のコンプライアンスを担当。

「ポジションが人を育てる」という環境が、自分を伸ばしてくれた

―社内の相談窓口に寄せられる、従業員からのさまざまな意見や悩み。それらに耳を傾け、実態調査を行うのが今井さんの役割です。 アクセンチュア人事本部のコンプライアンス担当として、2020年10月に中途入社した今井さん。働き方や社内の人間関係の悩みなどに対して、法務部門の専門家と連携し、従業員へのヒアリング調査等を行っています。
「人財は、事業の拡大に欠かせません。現場の声を聞き、実態調査により状況改善を担う専門部隊がいることで、アクセンチュアで働き続ける方を増やし、離職率を下げることができる。より良い働き方への社内改革を担っています」

― これまで、法務や労務などの領域でキャリアを重ねてきました。大学は法学部に進学。法律の奥深さに触れたことから司法試験の勉強を始めました。 法律を学ぶことは、社会の動きを知ること、“新たな言語”を習得するかのような面白さがあったといいます。
―その一方で、「将来のキャリアはまったく具体的に描けていなかった」といいます。
「当時、キャリアを描けなかったからこそ、勉強という道を選んだのかもしれません。専業主婦の母を見て育ったので、将来は結婚や出産を経て、仕事を辞めたりするのかな…とふんわりと考えていました。一方で、何かしら社会に貢献していくのであれば、手に職を持っておいた方が安心かなと、これまたふんわりと思っていたんです」

―数年間、勉強を続けたものの司法試験は不合格に。せっかく学んできた法律知識、これを生かして働こうと選んだのが、前職の外資系電子部品メーカーの法務職でした。
「約5年間法務を担当したのち、人事領域に異動し、約10年間、人事に関する仕事を広く経験させてもらいました。人事異動や組織変更における部門との調整、社宅管理や出向管理、ポリシー改定の対応業務など…。人事領域に異動した当初はわからないことばかりで、『どうしてこうするのでしょう?』と周りを質問攻めにしていました。周りのあたたかさと根気強さに支えられてきたんだなと思います」

―前職では、「環境やポジションが人を育てる」という考えのもと、裁量が与えられる環境があったといいます。社外との折衝が生じた際に、上司が「(数百万円の上限を設定した上で)金額を含めてその場で決裁してきていい。責任はとるから」と任せてくれたこともあったそう。マネジャーポジションに上がる際にも、「足りない知識やスキルは、ポジションについ てから学んでいけばいい」と背中を押してくれたといいます。

いただいたチャンスを次の人に返していく

―その後、30代後半で出産し、約1年の育児休暇を経て復帰した今井さん。組織変更が多い時期が重なったことから、“リクルーティングチームのマネジャーポジション”という、まったく未経験の領域でキャリアを再開することになりました。 不安はなかったかと聞くと、「育休中の記憶がなくて思い出せない」と笑います。
「育休中は、体調を崩した時期もあり、毎日があっという間に過ぎていきました。その後のキャリアをどう感じていたかも忘れてしまいましたが、“なるようになる”と思っていたのでしょう。リクルーティングの仕事は、未経験のため不安もありましたが、結果として、いいポジションで戻ることができたなと感じています。というのも、マネジャーではあるけれど配下メンバーのいない専門管理職ポジションだったので、働き方がかなり自由だったんです。フルタイム勤務で復帰しましたが、子育ての状況に合わせて勤務時間をずらしたり、子どもが寝たあと夜に仕事をしたりと、時間管理が私に任されていた。当時の自分の状況にとてもマッチした働き方をさせてもらっていました」

―20代の頃は長期的な視野で“働く”を捉えていなかったと話しますが、ライフステージの変化を経て、少しずつ考え方も変わっていったのだそう。
「多くの機会をいただく中で、次第に、『これまでの経験を無駄にしたくないな』と思うようになりました。いただいたものをありがたく活用して、その分を次の人に返していこう。そんな風に考えるようになったのは、未熟だったにもかかわらず責任とポジションを会社が与えてくれたからだと感じています」

一人ひとりに配慮した環境づくりを目指していく

―アクセンチュアへの転職のきっかけは、前職の組織変更によるものでした。本社の意向で、今井さんが在籍していた採用チームのポジションがクローズされることに。「思いがけず、40歳にして初めての転職活動をすることになった」と話します。
「自分の強みを発揮できる領域で新しい環境を探そうと動き始めました。アクセンチュアのコンプライアンス担当業務は、前職で培った労務系の知識が生かせますし、社内調査業務を進める上では法的な知識も求められるからです」

―業務内容と経験・スキルのマッチングのほか、今井さんにとって外せない条件は勤務地でした。自宅から通いやすい横浜のオフィスだったことは、最終的な決め手の一つになったといいます。
「家族あっての仕事。何かあったときに、自力で帰れる場所にある職場で働きたいと思ったのです。そう思うようになったのは、東日本大震災で職場から帰れなくなった体験をしてから。いつでも子どもを迎えに行ける距離感を持っていたいと考えたとき、アクセンチュアは業務面、条件面でこれ以上ない選択肢だと思いました」

―入社して感じるのは、全社に浸透する社会貢献への意識の高さ、そして個人の興味の幅の広さ、学習意欲の高さだといいます。
「社内には社会貢献に繋がるさまざまなプロジェクト・活動があり、本業に加えて任意で参加しているメンバーも多くいます。また、会社として、常に活躍し続けるためにはContinuous Learner(学び続ける人)であることが必要との意識のもと、業務に必要なスキルを学ぶLearn to Workだけではなく、業務を通じて学ぶWork to Learnが重要だと考えています。コンプライアンス業務の進め方においても、調査プロセスが確立されていて、調査の進め方、相談内容の事実認定や評価にあたり、常に法務部門の専門家と連携しています。専門性の高い知見をいただけて、学ぶ意欲が刺激される環境だなと思います」

―コンプライアンス担当という仕事柄、働き方にかかわるさまざまな悩みや相談に触れることが多いといいます。そして、同じ物事でも一人ひとり捉え方が違うケースを数多く目の当たりにしたことで、それぞれの違いに寄り添う制度やあり方があればいいと感じるようになったと話します
「例えば育休でも、すごく大変な思いをして子育てに向き合っている人もいれば、その間にスキルアップをしたいな…と思う人もいる。私自身は、いっぱいいっぱいでしたが、置かれた環境や周りの人間関係、子どもの個性によっても状況は異なりますよね。現実としては課題も多いですが、一人ひとりが、『こんな風に過ごしたい』と考えたときに支えられる制度があれば、いろいろな働き方を認め合う環境ができていくと思います。

また、ハラスメントを指摘された方にインタビュー調査をしていくと、ご本人も何とかしたいと思うけれどどう変えていけばいいのか分からない…と悩んでいるケースも少なくありません。そうした方を、より専門的なサポートにつなげていくことができれば、組織課題の根本的な解決につながっていくかもしれません。働き方や人間関係にまつわるさまざまな悩みを知れる自分だからこそ、一人ひとりへの配慮につながる環境づくりが出来たらな、と思います」

― 同じ事象を見ても、一人ひとり捉え方はこんなにも違う。そう感じる日々の中で、今井さん自身も学ぶことが多いといいます。
「自分の考えを持つことは大事ですが、そればかりを強く持ちすぎると、多様な人の考えを受け入れられなくなってしまいます。自分には理解できない考え方に出会ったとしても、『こういう見方をするんだな』とまず受け止める。その上で、相手のいいところや強みを見るようにしています」

―それが、“ぽきっと折れることのないしなやかな強さ”につながると話す今井さん。これまでのキャリアを振り返ったときに、自分の考えを強く持ちすぎて、コミュニケーションの範囲を狭めていたと反省することもあるのだそう。
「前職の経験ですが、法務から人事の仕事に移ったとき、チーム内の業務を把握するために、チームメンバーに対し多くの質問をぶつけていました。私としては、『どうしてこうするの?』とフラットに聞いていたつもりでしたが、今思えば、質問を威圧的に感じ、答えに窮したメンバーもいたと思います。

人には、自分にはない視点で物事が見えている。その前提がなく、質問していたことがたくさんあったと思います。コンプライアンス担当として経験を積んだ今だからこそ、自分の視野の狭さや未熟さが理解できますね」

―自分の考え方が正しいという前提で質問をしても、相手から新たな考え方や自分にはない発想の観点を引き出すことはできない。一人ひとり、違うところを見ているという前提を持つ大切さを、アクセンチュアで学んでいると話します。
「ポジションを引き上げてもらって尻込みすることもありましたが、責任を伴う、裁量のある仕事を任されるからこそ、できることは増えていき、面白さも増えていきます。これまでいただいたチャンスへの恩返しのためにも、これからも、チャンスがあればやってみる、という姿勢で、自分の知見を広げていきたいです」

写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子

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