『働き方も時間の使い方も、自分で“選び取って”ほしい』
アビームコンサルティング・人事 近藤桜さん
誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は、アビームコンサルティング株式会社 人事グループ タレントアクイジションチーム シニアマネージャーの近藤桜さんをインタビュー。どのような経験を経て、現在のお仕事に向き合っているのか、お話を伺いました。
近藤 桜さん
アビームコンサルティング株式会社 人事グループ タレントアクイジションチーム シニアマネージャー
大学卒業後、音楽配信の運営会社に入社。新卒入社当初から人事職として主に採用業務を担当。その後、WEBサービスを運営するベンチャー企業に転職。エンジニア採用を中心とした人事業務に従事する。2012年、アビームコンサルティング株式会社に転職。あらゆる人事領域に携わる「タレントアクイジション」の領域でマネジメントを担う。
ロジックと熱量、両方を持って現場に接する大切さを学ぶ
- ― 新卒、中途採用を起点としたあらゆる人事領域に携わる「タレントアクイジション」で、マネジメントを担う近藤桜さん。採用活動から、一人ひとりの個別事情に合わせた働き方の整備、入社後のサポート業務などを幅広く担当しています。 大学卒業後のファーストキャリアから、一貫して人事領域に携わってきた近藤さん。学生時代から企業の管理部門に関心があったといいますが、学生からは見えにくい“組織の内側”になぜ興味を抱いたのでしょう。
- 「大学で経営学を学んでいて、企業経営を扱うゼミに入っていたんです。2000年代前半の当時、終身雇用や年功序列といった旧日本型の組織経営をしている企業では、事業成長に明暗が出ていました。大手メーカーでの不正が明るみになり、大企業でもこんなことが起こるんだと、ゼミの研究を通じて知っていった。そこから、表向きの製品やサービスを見ているだけではなく、組織内で何が起こっているのかを知りたいと思うようになり、人と組織のあり方に興味を持ち始めました」
- ― 大学卒業後は、音楽配信の運営会社に入社。当時は珍しく、人事職で内定を出す職種別採用を行っていたことが、決め手になったといいます。 その後、より裁量と責任が大きい“チャレンジングな職場”を求めて、ベンチャーに転職。社員200人ほどから急拡大していく組織フェーズに身を置き、「自走」する力を身につけていきました。
- 「そこでの上司との出会いがとても大きくて、今でも、私が迷ったときの指針になっています。人にまつわることには正解はなく、人事と現場との間で意見が食い違うこともあります。その中で上司は、かかわるメンバー全員の共通のゴールを示し、自分が一番汗をかく人だった。ロジカルさと熱量の両方を持ち、現場に何度も足を運んでいました。
人事は、制度や規則を司る側の立場であるけれど、使う側がどんなことを考えているのか、どんなケースで使われるのかを理解していなければ、どんなにいいものを作っても落とし穴は出てしまう。採用においても、現場の様子を出来る限りリアルに語れなければならないと考えており、苦悩することもあります。そんな時に尊敬していた上司を思い出します。その方は、10年ほど前に若くして病気で亡くなってしまったのですが、今も『もしあの頃の上司だったら、どう判断して動くだろう』と思いを馳せる、仕事人生の“師”のような存在ですね」
現場に少しでも近い人事を目指したい
- ― 前職での6年弱の経験を経て、アビームコンサルティングに転職した近藤さん。30代に入り、「ビジネス幅が広く、人事の業務範囲も広いコンサルティング領域で経験を積みたい」と考えましたが、入社当初はステークホルダーの多さに戸惑うことが多かったといいます。
- 「前職では、ある程度の規模や事業の中で立ち回ることができていましたが、アビームコンサルティングに来ると、現場のパートナーやフロントパーソンは比較にならない人数。皆さんが納得できるデータファクトを示さなければいけませんし、利害の異なる皆さんに同じ方向を向いてもらうための社内調整にも苦労しました」
- ― そこで近藤さんは、“体当たり”で現場の声を集めにいきました。人事の立場や考え方だけで「この制度で進めたい」「こういうルールでやっていきます」と語ってしまい、現場と衝突をしたことも多くあったそう。人事分野の共通言語がない中でコミュニケーションをとり、「近藤の言っている話はよく分からない」と厳しいフィードバックをもらったこともあったといいます。
- 「現場のことを考えて、採用活動や制度設計のために動いているのに、なんで分かってくれないんだろうと、悔しい気持ちになったこともありました。でも今思えば、現場の視点が分かっていないのは私だったんです。自分たちの人事としての立場や視点に閉じた提案に留まっていたためです。現場からすると、表面的なことだけではなくリアルに現場で起こっていることや課題にミートした提案をして欲しいと感じていたと思います。実際、現場の反応を見ても、あまり刺さっておらず、強く反省しました。それからは、とにかくどの社員の話も勉強になると思い、色々な人の話を聞き、理解を深めるように努めています。」
自分の働き方を周りに“約束”していけばいい
- ― 現在、5歳の子どもを持つ近藤さん。35歳のときに、10か月の育休を取得後、時短勤務で復帰。その1年後にフレックスタイム制のフルタイム勤務に戻りました。 ライフイベントの変化は、近藤さんの仕事観にどんな影響を与えたのでしょうか。
- 「自分の価値をより強く考えるようになりました。復帰直後は、『時短勤務だけど、仕事頑張ってるね』と周りに思ってもらうにはどうしたらいいのかをすごく考えていたと思います。
今は、人事として、そして子育てを続ける当事者として、時間に縛られない働き方がもっと広がればいいと強く思っています。きちんと価値を出せているのなら、時間にこだわる必要は全然ない。大事なのは、自分が意思を持って選択した働き方かどうか、だと思います」
- ー 家事も子育ても仕事も、限られた時間でパフォーマンスを出さなければと自分を追い込んでいた時期もあったという近藤さん。でも実際は、仕事も終わらず、家の中は散らかったまま。あるときに「1日の時間はこれまでと同じなのだから、できなくて当たり前、まずは出来る範囲の責任を果たすこととその宣言をしよう」と気づき、心がすっと軽くなったそう。
- 「仕事も、依頼があったときに『やります!』と思っていても、実際は限られた時間内には終わらず、家に持ち帰っても、子どもがいると何をするにも一人でいるときの3倍は時間がかかってしまいます。物理的にできないのなら、できない部分と出来る部分をまずは明確に整理すればいい。その上で出来る部分、自分が担当する部分は責任をもって全うし、少しずつ出来る事を増やしていけばよいと思うようになりました。」
- ― 今はメンバーを持つ立場として、「自分で仕事のやり方を選択、主張してほしい」と繰り返し伝えているといいます。
- 「時間などなんらかの制限がある場合、制限がある側とそうではない側との間で認識の齟齬が生まれやすいと思います。そもそも置かれている環境が違うのだから完璧に理解できなくて当たり前なのですが、大切なのはその環境に対する理解を相手に押し付けないことだと思っています。『自分はこういう状況です』、『この部分は対応できます』、『この部分は難しいです』といったように、どこまでできそうかの見込みや状態を言語化して自分から、自分の言葉でしっかり伝える。周囲と力を合わせチームでうまく仕事を進めるために必要不可欠なことだと思います。
締め切りをずらせばできるのか、7割の出来であればできるのかなど、自分なりの“約束”を自分で決めて、『このやり方ならできます』とアサーティブに発信してほしいです。自分で決めて発信することで、おのずと責任感も生まれますし、自分が働きやすい環境を作っていってほしいと思っています」
- ― 自分主体で、働く時間や内容・ミッションを設計するからこそ、自分の仕事の手綱を握れ、それがパフォーマンスの向上につながると話す近藤さん。 一方で、主張には責任が伴うもの。そこに怖気づいてしまう人にもいるのでは…と疑問をぶつけてみると、こんな答えが返ってきました。
- 「誰かの方針に従って動くという選択も含めて、”自分で選んでそうしている“ことが大事だと思うんです。自分で選んでいないと、人や周りが分かってくれないと他責のループに入ってしまいます。仕事で迫られる小さな選択一つ一つに、自分で意見を持ち、自分で決めて逃げ道をなくしていく。やるもやらないも、自分で決めたことと思えれば、巡り巡って、仕事がしやすくなっていくのではないでしょうか。自分が主語となって物事を少しずつでも決めて推し進めていくことも案外楽しいものですよ。出来る事から主張と責任を持っていけばよいと思います。」
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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子