『買い物が思い出になる、非日常の時間を提供したい』
三菱地所・サイモン株式会社 デジタル戦略部 渋谷美佐登さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、三菱地所・サイモン株式会社でデジタル戦略部マネージャーを務める渋谷美佐登さんにお話を伺いました。

渋谷 美佐登(しぶやみさと)さん
三菱地所・サイモン株式会社
デジタル戦略部マネージャー
大学卒業後、デザイン事務所勤務を経て2009年に三菱地所・サイモン株式会社(当時のチェルシージャパン株式会社)に中途入社。本社マーケティング部にてPR業務に従事。2015年より御殿場プレミアム・アウトレット マネジメントオフィスに異動し、御殿場プレミアム・アウトレットの集客施策の立案・実施などマーケティングを担当する。2022年4月よりマネージャーに昇格。2024年4月より本社デジタル戦略部設立に伴い異動。
笑顔で周りに接することがチームの力を高めていく

- 2025年に開業25周年を迎える御殿場プレミアム・アウトレット。渋谷さんがマーケティング担当となった2015年から、さまざまな集客イベントを企画・立案、実施まで手掛けてきました。
2022年には、コロナ禍を経て徐々に店舗に戻ってきてくれたお客様へ、夏祭りイベント「Gotemba Night!!」を開催し、御殿場の広い空に花火を打ち上げました。このときの内容が高く評価され、三菱地所グループ全社を対象にした社内コンテストで“顧客志向賞”を受賞しています。さらに、翌23年には、モール内で地元の高校の吹奏楽部による演奏会を開催。同じコンテストで今度は“グランプリ”を受賞しました。 - 「企画したイベントは2つとも、コロナ禍でなかなか体験できなかったことを、広大なアウトレットのエリア内で楽しんでもらい、思い出を作ってもらいたくて考えました。
演奏会は、地元の高校の先生から相談を受けて開催が決まりました。コロナの影響で、演奏する機会を持てなかった吹奏楽部の生徒たちに、卒業前になんとか発表する場を作ってあげたい――。そう話す先生の熱い思いに胸を打たれ、生徒さんにとってもお客様にとっても素敵な思い出を持ち帰ってもらえるような演奏会にしようと動き出しました」
- イベント当日は、吹奏楽の華やかな演奏に多くのお客様が集まり、店舗スタッフからも「お客様が喜んでいて、とてもいい企画だった」との声が寄せられたといいます。
- 「出店店舗もお客様も、演奏した高校生の皆様も、みんなであたたかい気持ちを共有できたことが、大きな成功体験になりました」
- マネージャーに昇格し、チームの力で成果を上げていくことを強く意識するようになったのも2022年だったといいます。その頃には、マーケティング担当が2名体制になっており、メンバーとの細やかなコミュニケーションを大切にするようになったそう。
- 「チームメンバーには、“常に気にかけているよ“ということが伝わるような声掛けを心がけていました。顔を合わせたときに、『あの仕事、うまくいってよかったね』と労ったり、新しい企画について『これどう思う?』と意見を聞いてみたり。気にしていてほしいだろうな、と思うタイミングを逃さないように、さりげなく声をかけていこうと思っていました」
- 大事にしてきたのは「笑顔で周りに接すること」。シンプルながら、笑顔がもたらすポジティブな影響は大きいと話します。
- 「自分一人でできる仕事はほとんどありません。人と人との関係性の中で仕事ができていくので、前向きにポジティブに、笑顔で接することってすごく大事だと思うんです。難しいことに直面すると表情がなくなってしまうこともありますが、笑顔でいれば必ず、誰かが声をかけて助けてくれる。笑顔には、周りの支えを引き出す力があるんじゃないかなと思っています」
プレミアム・アウトレットは、出かけることが価値になる場所

- 現在所属するデジタル戦略部には、渋谷さんを含めて6人が在籍しています。6人全員が、それぞれの個性や専門性を発揮しながらプロジェクトを推進することで、チームの力が高まっていく。精いっぱい業務に取り組み、そこで生まれた連帯感を大切にする。こうした、現部署ならではのチームワークの在り方が心地いいと話します。
- 「私自身も精一杯、担当する業務に取り組むことでチームを盛り上げていきたいと思っています。新たなシステム導入といったデジタル刷新は、それまでの業務プロセスが変わるので敬遠されがちです。でも、導入が進めば確実に業務効率化につながり、会社の成長につながっていきます。会社が成長し、部署が成長し、そこで働く個人が成長していく。そんないいサイクルを作っていくことが、これからの挑戦です」
- 入社以来、PR、マーケティング、デジタル戦略部と異なる立場からプレミアム・アウトレットに携わってきた渋谷さん。プレミアム・アウトレットの魅力を、「出かけたことが価値になる場所」と語るその真意を、最後に伺いました。
- 「買い物をする、という目的だけならば、インターネットショッピングが早いし便利ですよね。一方で、プレミアム・アウトレットでの買い物は、家族や友人など一緒に行く人みんなと、非日常の空間を楽しむことができます。私たちは単にものを販売しているのではなく、買い物が思い出になるような時間を提供させていただいているのだと思っています」
→「前編記事」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子