『ここで働く自分が好き。そう思える環境を見つけていってほしい』<br>パルコ・人事 木佐瑞紀さんのイメージ画像

マイキャリアストーリー

『ここで働く自分が好き。そう思える環境を見つけていってほしい』
パルコ・人事 木佐瑞紀さん

誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は、株式会社パルコ 人事・総務部の木佐瑞紀さんをインタビュー。人事・採用担当として大事にしている考えはどこから生まれてきたのか。これまでの仕事や働き方についてお話を伺いました。

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木佐瑞紀さん

株式会社パルコ 人事・総務部

2012年に株式会社パルコに入社。仙台店でプロモーション業務(広報・媒体・催事出店交渉など)を経験後、2020年3月から人事戦略部(現・人事・総務部)で採用を担当。

「人見知りしない」ことを、自分の強みにすると決めた

― 大型商業施設「PARCO」を展開するほか、劇場やライブハウスなど、エンタテインメント事業も幅広く手掛ける株式会社パルコ。2012年に新卒で入社した木佐さんは、仙台PARCOでのプロモーション業務を経て、2020年より新卒・中途採用を担当しています。 もともと人の気持ちに思いを巡らせるのが好きだった木佐さん。「高校時代までは心理カウンセラーになりたいと思っていた」と話します。そこからパルコへの入社を決めたのには、どのような心境の変化があったのでしょう。
「イベント企画・プロモーションの仕事に興味を持ち始めたのは高校3年のときでした。当時、ホテルの広報・宣伝の仕事をしていた母が、よく私を仕事場に連れて行ってくれたんです。イベント運営の現場の賑やかな雰囲気にわくわくして、大好きだった文化祭の景色を思い出しました。準備が大変で投げ出したくなりながらも、後夜祭で花火が打ち上がった瞬間にすべてを忘れて楽しい思い出になる。こういうことが仕事になったらいいなと漠然と思っていたことが、具体的な仕事とつながったんです。
大学では、イベント企画のサークルに入ったり、商業施設のイベント運営のアルバイトをやったり。今振り返れば、パルコ入社後の仕事につながるような活動を続けていましたね」
― パルコを選んだのは、あらゆる商品やサービスを提供する商業施設だからこそ、チャレンジできる範囲が広いと考えたからでした。若いうちから裁量権を持って動ける環境がいいと、パルコの社風にも惹かれたといいます。
「入社して配属されたのは、仙台PARCOの営業課でした。プロモーション施策の企画立案、広報・宣伝、催事出店の交渉、出店いただいているテナントへの販促提案など、ジョブローテーションでさまざまな経験をさせてもらいました。
1年目から『(テナント候補として)いいなと思ったお店は何かある?』と上司や先輩から意見を求められ、年次や経験に関係なくアイデアを引き出し合うカルチャーが根付いていました」
ー 入社当初は、アートやカルチャーに造詣の深い同期や先輩の存在に圧倒され、「ついていけない」と不安に思ったこともあったといいます。
「知識量ですぐに追いつけない中、自分にしかない強みは何だろう。考えた末に出したのは『人見知りしない』ことでした。もともと持っていた強みというよりも『人見知りをしないと決めた』という方が正しいかもしれません」
ー 誰に対しても関心を持ち、相手の話を丁寧に聞き、明るく話せることを武器にしていこう-。その“決め”は、採用担当として多くの学生や求職者と話す今も生きていると話します。
「知識は、自分で勉強したり教えてもらったりすることで、時間はかかっても身に付きます。でも、より大事なことは、先輩や上司などに『この人にならいろいろ教えてあげたい』『自分の知見を授けたい』と思わせるような人であること。その時点では知識も経験もなく、大した仕事ができなかったとしても、『教えたい、成長してほしい』と周りに思わせる力があるかどうか。それが、その後の伸びを大きく左右するんだと感じています」
ー 仙台PARCOでの5年目には、1年目から注目していたアイスキャンディー店のポップアップショップ(期間限定の店舗)企画を担当。ただお店を出すのではなく、SNS連動のプロモーション施策や店頭ディスプレイの工夫など、5年間で培ってきた知見を注ぎ込んだ”集大成の仕事“ができたと話します。
「SNSの活用方法や店頭でのプロモーションイベントの動かし方、広報担当として培ったテレビ局の方とのネットワークなど、入社以来のあらゆる経験が、“お取引先様と一緒に店舗を作っていく”ことにつながりました」
ー 先輩がとても丁寧に指導してくれた、と当時を振り返る木佐さん。その指導を引き出したのは、木佐さんに「教えたいと思わせる」要素があったからなのでしょう。
「素直に話を聞いて質問をして…というのは意識していたかもしれません。
人は相手のことをすごくよく見ています。丁寧にあいさつをしてくれたとか、自分の話を聞いてくれたとか、相手のふとした表情を見て『今、何か腑に落ちたんだな』『納得していないことがあるんだな』などと分かることもあります。
真剣に聞こうとする姿勢は必ず相手に伝わり、それによって相手も『何かを返してあげよう』と思うのかもしれないですね」

仕事を離れたからこそ気付けた“人の分からなさ”

― 2020年より人事・採用担当になり、正解のない中で合否を判断する難しさが、採用の面白さでもあると話します。
「人を見ることに、正解はありません。学生や求職者の皆さんとの短い接点だけで、“分かる”ことはできないし、人を“分かった”と言うことはできません。
それでも納得感のある判断をして採用を決めるためには、社内外問わずあらゆる情報を持っておくことが大切です。社外の採用媒体の担当者から市場の話を聞くことも多いですし、社内の各部門に足を運んで、メンバーや上司のタイプ、業務内容を理解して採用背景の目線合わせも欠かせません。状況把握をどれだけ深められるかが、みんなの決断を一つにしていくことにつながっていくんです」
― 人を見る難しさは、自身の経験から学んだこともあったと話します。
「人事に来る前、2か月ほど休職したことがありました。
そのときは、テナントの接客研修や、接客コンテストの運営企画を手掛ける部署で、出張も多く全国を飛び回っていました。『任された仕事をやり切らなくちゃ』と思うあまり、自分のキャパシティを超えていると薄々感じながらも続けてしまって…。体調が悪いことにも蓋をしていたら、気づいたときには、休職するしかないほどに追い込まれていました」
ー 仕事から距離を取り、自分を見つめ直す時間ができたことで、「一人で背負って、周りに甘えられない弱さに気付かされた」と話します。
「元気だけが取り柄だと思っていたのに、まさか自分が休むことになるなんて。人は、見た目や振る舞いから分からないことがたくさんあるんだろうな、と思うようになりました。
休んでいた時期は、『もう働けないのかもしれない』『戻る場所がないのかもしれない』と思いつめたこともありました。でもそんなことは全然なかった。あの時間があったから、改めて人と向き合う仕事をしたいと思うようになり、人事・採用という新しい領域にチャレンジしようと思えたんです。人の多様さや分からなさを俯瞰して見られるようになったのは、あのときの挫折のおかげです」

ここで働く自分が好き。そう思える環境を見つけていってほしい

― 学生や求職者に「パルコの魅力」を伝える中で、意識しているのは、どう“伝わるか”だと話します。 “伝わる”ことを大事にするようになったきっかけには何があったのか。聞くと、木佐さんなりの原体験がありました。
「両親が家で個人塾を経営し、その指導を間近で見てきたことが影響しているかもしれません。一人ひとりにどう伝わるかを考えて勉強を教えている姿が、普段目にしていた学校の先生とは全然違ったんです。一方通行に伝えようとしたところで、伝わる内容じゃなければ頭に入ってこない。両親の働く姿を見ながら、子どもながらにそう感じていたのだと思います」
ー 採用担当になったとき、就活時からずっと取ってあった自分のエントリーシートを読み返したといいます。学生だった自分は何を考え、企業の何を知りたいと思っていたのかを探りながら、企業が伝えたいことと学生が知りたいことは違うと感じたそうです。
「学生の心に本当に響くことは何かを知りたくて、説明会後のアンケートで、『印象に残ったこと』と『もっと知りたかったこと』を書いてもらうことにしました。毎回数百人分のアンケート内容にすべて目を通し分析して、何を話すべきだったのかトライ&エラーを重ねてきた。採用3年目の今、ようやく、伝え伝わり合えたかなという感触があります」
― 24年卒のインターンでは、それぞれのハマりごとである“推し活”をテーマに企画を考えました。学生からの反響も多く、「追い込まれながらアイデアを出すよりも、楽しく考えたほうがより良いものが生まれる」という実感を得たといいます。
「どんなテーマだったら学生が面白がってくれるだろうと、採用メンバーで雑談を含め話しながら決めていきました。パルコの仕事は、新しいものを発見して『面白そう!』と思うところから、企画が動き出します。誰かと話しながら出るアイデアだからこそ、より面白くなっていく。自由にのびのび意見を出し合うカルチャーが事業を支えているんだと感じます。
パルコは働き方の自由度も高く、フルフレックス制度やリモート勤務、ワーケーション制度、副業や社内兼業、夏と冬の長期休暇制度などが揃っています。プライベートを充実させることで、仕事でのアイデアが広がることも多い。そんな背景も、好きな働き方を選べる社風につながっているのかもしれません」
― 働き方や仕事選びについて話をすることが多い中、「目の前の進路決定に視野が狭くなりがち」という学生や求職者の皆さんに向けて、届いてほしいメッセージには何があるのでしょう。
「その会社で働いている自分のことを好きでいられるかどうかは、すごく大事だなと思っています。私は、学生時代の自分よりもパルコで働いている今の自分のほうが好きです。周りに気を使って何も意見できなかった自分が、パルコに入り、アイデアを出すことを求められる中で、自由に発信できるようになったから。
入ってみて、自分のことを好きになれなかったら、その場所に固執する必要はありません。『ここにいる自分が好きか』を問い続けながら、自分らしい選択をしていってほしいと思っています」








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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子

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