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ピンクリボン運動、私たちが職場で出来る取り組み

毎年10月は、乳がんの撲滅と乳がん検診の受診促進などを啓発する「ピンクリボン運動月間」です。働く女性にとっても無関係とはいえない乳がん。ピンクリボン運動に向けて私たちが職場で何ができるのかを考えてみました。

ピンクリボン運動とは

ピンクリボン運動は、乳がんに対する理解と支援などを広め、乳がん検診の受診促進、早期発見・早期治療などを啓発する運動です。一説によると、1980年代にアメリカで若くして乳がんで亡くなった女性の母親が、「乳がんで命を落とす人がいなくなるように」、「悲しみが繰り返されないように」という願いを込めて、残された家族と共にピンクリボンを作ったのが起源と言われています。日本でこの運動が広まったのは2000年代に入ってからのこと。今では全国各地で、東京タワーやレインボーブリッジなどの象徴的な建造物のピンク色へのライトアップや、乳がん啓発のためのウォーキングなどの活動が行われています。
その効果もあってか、2010年に39.1%だった女性の乳がん検診の受診率(過去2年間の受診有無)が、2019年には47.4%に上昇しています。

日本における女性の乳がん罹患の実態

公益財団法人がん研究振興財団が発表した「がんの統計2022」によると、2021年の女性の乳がん予測罹患数は94,400例、予測死亡数は15,700例にのぼり、乳がんは、がんの中でも日本女性の罹患率が最も高いがんとなっています。

また、生涯罹患リスクに目を向けると、生涯のうちに乳がんに罹患する女性の割合が、1992年は24.7人に1人だったところから、2021年は実に9人に1人の割合となっており、大幅な上昇が見られます。

これらのデータからもわかるように、乳がんは多くの日本の女性にとって他人事ではない病気となっています。

乳がん治療の内容と負担の大きさ

万が一、乳がんに罹患した場合、どのような治療が行われることになるのでしょうか。
主に以下の治療が挙げられます。

・乳房部分切除または全切除
・放射線治療
・抗がん剤を含む薬物療法

現在、医療の発達等により、乳がん治療の身体的・精神的負担は徐々に軽減される方向にありますが、それでも治療の副作用等で苦しむケースは少なくありません。また、治療が年単位に及ぶ可能性もあり、さらに再発への不安などから、それまでの生活が一変するおそれがあります。

一方で、早期に発見できた場合、生存率が格段に上がり、負担の小さな治療で対応できる可能性があります。
それだけ、定期的な検診の受診による早期発見が大切ながんと言えます。

【参考リンク】
がん情報サービス 乳がん治療(国立がんセンター)
乳がんの治療費(がん治療費.com)

習慣化したい、乳がんのセルフチェック法

このように、乳がんは、早期発見により治療率が高くなります。そして、早期発見のために有効な手段の一つがセルフチェックです。

乳がんのセルフチェックは、月に1回程度、主に以下の有無をチェックするために行います。

・乳房の変形や左右差
・しこり
・ひきつれ
・へこみ(えくぼ状)
・ただれ
・出血
・分泌物の漏出

その際、以下の手順で行うことが推奨されています。





(1)鏡の前での視診
上半身裸の状態で鏡の前に立ち、腕を上げ下げして、正面・側面・斜めから乳房および乳頭を観察します。
 
(2)入浴中の触診
乳房の表面にしこりや皮膚の異常(こぶ)がないかを確認するため、4本の指をそろえてくるくるとうずまき状に動かしながら触診します。その際、滑りをよくするため、指にボディソープなどをつけるのがおすすめです。
 
(3)仰向けでの触診
仰向けになった状態で、調べる側の腕を頭の下に置き、反対側の指で乳房の内側・外側・脇の下とくまなく触診します。その際、4本の指をそろえて指の腹で圧迫しながら調べるのがポイントです。
 
(4)乳頭チェック
乳頭を指でつまんで絞り、分泌物が漏れ出ないか確認します。




習慣化することが大切なため、一定の日にちを決めて(閉経前の方は乳房がやわらかくなる月経終了後1週間~10日がおすすめ)行うとよいでしょう。そのうえで、何かしらの異常を感じた場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。


また、セルフチェックは乳がんの早期発見に役立つ一方、診断や治療に代わるものではありません。セルフチェックと合わせて、定期的な乳がん検診を受けることが大切です。

乳がんセルフチェック(がんを学ぶ)

乳がん検診の受診方法

日本では、厚生労働省が定めた指針に基づき、各自治体が乳がん検診を実施しています。厚生労働省の指針では、基本的に対象は40歳以上で、検診内容は、問診・マンモグラフィ(乳房X線検査)、受診間隔は2年に1回となっています。
※ただし、自治体によって、対象年齢・受診頻度が異なるところもあるため、詳細はお住まいの自治体のWebサイトをご確認ください。

このように、年齢により、乳がん検診に関して利用できる制度が異なるところがあります。


■40歳以上の方
自治体による市区町村検診と、企業による職域検診のいずれかを選択することができます(地域・企業によっては条件が異なり、実施しないこともあります)。
それぞれ、条件が異なることが多いため、どちらで受診するかをご自身で検討して判断することになります。

■40歳未満の方
40歳未満の場合、自治体による市区町村の検診で費用負担がされることはほとんどありません。そのため、一部の例外的な自治体を除き、全額自己負担で受診するか、ご自身が勤務する企業の検診制度に従い、受診することになります。
※費用負担は企業によって異なるため、あらかじめ確認する必要があります。

乳がん検診で行われるマンモグラフィ検査

自治体をはじめ、多くの乳がん検診で行われる、マンモグラフィ検査。乳がんの死亡率減少が科学的に認められる検査方法として知られます。乳房を片方ずつ数十秒間、プラスチックの板で挟んで撮影し、小さいしこりや石灰化を検査します。撮影の際、乳房が圧迫されるため痛みを感じることもあります。

ちなみに、自治体による検診でのマンモグラフィ検査の費用は、自治体により異なりますが、一般的には無料から3,000円程度となります。
また、40歳未満の方などが全額自己負担で受診する場合、5,000円前後の自己負担が予想されます。

なお、乳がんの場合、2センチ以下が早期がんと分類されますが、一般的に、1つの細胞が1センチのがんに成長するまで、たとえば、乳がんでは10~15年といった時間がかかるといわれています。その一方で、1センチに成長したがんが2センチになるまでの期間はわずか1年半程度とされています。

1センチ以下のがんを検査で発見することが困難である現状を踏まえると、検診を1~2年ごとに受けなければ、がんを早期発見できないことになります。

このことからも、定期的な受診の重要性がわかります。


その一方で、マンモグラフィ検査にも、

☑ 偽陰性や偽陽性と診断されるリスク
☑ 過剰診断のリスク(命に影響のない、成長の極めて遅いがんに対し不要な治療を行うリスク)

などのデメリットが存在します。これらの点も理解したうえで、検診に臨む必要があります。

ピンクリボン運動と各社・各団体の取り組み

日本では、認定NPO法人J.POSHなどを中心に展開されているピンクリボン運動。特に、10月のピンクリボン運動月間中は、多くの企業が様々な取り組みで、この運動に参加しています。各社が行っている主な取り組みは以下です。
今後、社内でピンクリボン運動参加を企画する際のご参考にしてみてください。





(1)啓発イベント・シンポジウムの開催・協賛
(2)乳がんや検診に関する情報の店頭POP・デジタルサイネージによる啓発
(3)ピンクリボンコラボレーション商品の販売と商品売上の一部の寄付
(4)WEBサイト上へのピンクリボン仕様のロゴの掲出
(5)啓発用の動画制作と配信
(6)社員によるピンクリボンバッジの着用
(7)店頭アイテムにピンクを取り揃え
(8)啓発用の冊子の制作・配布
(9)乳がん検診受診用の無料クーポン配布
(10)乳がん検診車の営業所への巡回
(11)本社ビルのピンクライトアップ


私たちが職場で出来る取り組み

日本においても徐々に認知度を上げているピンクリボン運動。私たち個人としても、関連イベントへの参加や支援団体への寄付、ピンクリボン関連のグッズ購入や着用などで、運動に参加することができます。
では、私たちが職場で出来る取り組みには、どのようなものが考えられるでしょうか。

(1)周知・啓蒙
まずは、社内でピンクリボン運動の周知・啓蒙を行うことが考えられます。

・ピンクリボン運動の内容
・日本女性が置かれた状況
・乳がんを罹患した人がどのような支援を必要としているか
・どのように乳がん検診を受診するか

など、身近なところからでも、情報共有してみるとよいかもしれません。
協力してくれる人が一定数いる場合には勉強会の開催もおすすめです。


(2)罹患時に利用できる社内制度の確認・周知
万が一、乳がんに罹患した場合、手術のための入院や定期的な通院が必要となる可能性があります。また、体調不良で働くことが難しい日もあるかもしれません。

そのような状況下でも、仕事を手放すことなく働き続けられる選択肢はないか。社内の休暇制度やフレックス・リモートワーク・療養短時間勤務の活用可能性、相談窓口の有無など、事前に確認しておくことが重要になります。


(3)ディスカッション
ご自身、そして周囲の当事者意識を高めるために、ピンクリボン運動に関するディスカッションを社内で行うのもお薦めです。例えば、

・社内での乳がん検診の受診率を上げるために何ができるか
・乳がんに罹患した社員がいた場合に、どのような支援ができるか

などをディスカッションし予防を進めると共に、会社として、乳がん患者をサポートできる風土を組織内に作ることが大切です。


社内でも、いつ誰が罹患するかわからない乳がん。自分自身も周囲も、正しい知識を元に、正しく恐れる必要があります。これをきっかけに、ぜひ、ピンクリボン運動の情報収集と周知・啓蒙に取り組んでみてください。


構成:Be myself 編集部

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