マネジメントスキルを高めるためにも! 管理職がすべき自己分析とは
自分の価値観や能力を的確に把握する自己分析。実は、管理職にとっての自己分析は、自分のためだけでなく、マネジメントスキルを高めるためにも必要な行為なのです。
自己分析ができていれば、自分の価値観と能力を基準に業務をする・しないの判断ができるので、新人管理職にありがちな業務過多で疲弊してしまうことを防げるだけでなく、メンバーの適正な評価、さらには適切な組織目標設定にも繋がります。
この記事では、自己分析の具体的な手法をひも解きながら、マネジメントスキルとの関係性について紹介します。
目次
自分の「Pesronality」を理解しているからこそ、公平な他者評価ができる
そもそも自己分析とは、「自分はどんな人間なのか」を、丁寧に振り返る作業です。
その際に意識したい観点は、第1回でも解説した「Will・Can・Know・Must+Personality」です。 Will×Can×Mustの重なりが大きければ大きいほど、働きがいも大きくなっていきます。
「Must」は上司や周囲からの期待や課題感を理解することで明確になります。なので「Pesronality」「Will」「Can」「Know」についてを自分で考えましょう。
まずは「Pesronality」の考え方から。「Pesronality」とは、性格・趣味・好き嫌い・思考の癖、人生で大切にしていること、仕事で大切にしていること、モチベーションの源泉や影響力です。例えば「明るくて元気な人が好き」「やる気はあるが仕事が雑な人間は好きじゃない」「自分の性格は、物事の枝葉が気になって、幹を見失いがち」なども含まれます。
自分の好き嫌いや思考のクセも理解しておくと、不公平な評価や、労多くして実りが少ないマイクロマネジメントに陥るリスクを避けることができます。特に人事考課で、自分の好き嫌いや偏った思考回路が反映されることを防ぐことができるので、納得感ある評価、そしてメンバーとの信頼関係構築へもつながります。
モチベーションの源泉を見つければ、セルフマネジメントができる
また、「Pesronality」の中でも、モチベーションの源泉は6つの欲求に分けられると考えられます。
心理学者デビッド・マクレランド氏が「マクレランド欲求理論」として提唱した「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」「回避欲求」の4つに、さらに「探求欲求」「承認欲求」の2つを追加したものです。
この6つを1位〜6位まで順位付けすると、自分はどの欲求が強いのか弱いのかを理解できます。例えば「権力欲求」が強ければ、昇格や大きな権限が報酬になりますし、「親和欲求」が強ければ、メンバーや関係部署との良好な人間関係が報酬になります。
モチベーションの源泉は人生の過程で構築されたものなので、短期的に変える事は難しいもの。そして、モチベーションの源泉は良し悪しではなく特徴です。誰もが複数の欲求を複合的に持っているため、どの欲求をどのように満たすと、自分が気持ちよく動き出せそうかを理解して活用していくことが大切です。このように自分の欲求をマネジメントできることは、高いセルフマネジメント力を有しているということでもあります。
セルフマネジメント力を鍛えるための記事はこちら
自分が大切にしていることがわかれば、能動的にマネジメントに挑戦できる
続いて「Will」とは、やりたいこと・達成したいことです。誰もがその会社に入社する際に、志望動機や理想のキャリアについて考えたと思います。達成したいことがその延長線上にある人もいれば、新しく生まれた人もいるでしょう。いずれにしても、管理職になれば、今まで以上に広範囲な権限やリソースを持てるため、やりたいこと・達成したいことが実現しやすくなります。このタイミングで一度、入社動機に立ち返りながら、Willを考えてみてください。
もし「Will」が思い当たらないと感じたとしても、「Pesronality」を明確にすれば自ずと見つかるはずです。人生や仕事で大切にしていることを、具体的にしたものがWillだからです。また、それほど具体的なことではなくても、「管理職という新しい役割に挑戦してみたい」という前向きな気持ちだけでも十分です。
人生や仕事で大切にしている「Pesronality」に基づいた「Will」が、管理職になってより実現しやすくなることが理解できれば、より能動的に、迷いなくマネジメントに挑戦することができます。
自分ができること、知っていることを点検し、組織の成長に活かす
最後は「Can」「Know」について。ここでは大きく2つの観点を意識します。1つ目は「プレイヤー時代に培った知見」です。これらは皆さんを管理職に押し上げたコアスキルであり、強みとして今後も磨きをかけていきたいものです。2つ目は「現在のマネジメントスキル」です。主任や係長などを経験していれば、一定のマネジメントスキルや経験は養われていますが、まだまだ発展途上。マネジメント力の現状を自己評価します。チェックのポイントは次の図を参考にしてください。
第1回で解説したマネジメントの基本業務の「People Management」と「Project Management」の構成要素を一覧化しています。
最初に習熟すべきPeople Management(ピープルマネジメント)は、個人のマネジメントとチームのマネジメントに分けられ、個人のマネジメントは、アサインメント・目標設定と評価・判断・フィードバック・動機づけ・ヘルスケア・スキルアップやキャリアップ支援の7つが主要業務(主要スキル)です。チームのマネジメントは、相互理解・相互支援・相互学習という3つの状態を生み出すことが大切です。
現時点で、各業務・スキルを実践できているかの評価を行ってください。そして、これからスキルアップしたい業務・スキルに目星をつけましょう。自分の目標に、高めたいスキルの状態目標を具体的に設定しておくと、効率的に習熟することができ、チームの成長にも直結します。
ピープルマネジメントについての記事はこちら
まとめ:自己分析プロセスは、メンバー理解・組織の目標設定に必要不可欠
このように丁寧に行った自己分析の観点やプロセスは、そのままメンバー理解に応用することができます。個別のメンバーごとの働きがいが生まれるポイントがあり、それらがさらに重なるポイントが、チーム全員が働きがいを感じる業務です。
メンバーやチームの「Personality」や 「Will」と重なっていない業務を一生懸命に推進しようとしても、誰も乗り気にならず、効率が悪くなります。また、「Will」があっても「Can」が足りない業務であれば、成果がでるまでに時間がかかります。
例えば、抜け漏れない丁寧な仕事が得意なチームや個人は、マニュアル整備やエラーチェックなどの業務には力を発揮しますが、スピード優先で大胆な発想が必要な新規事業開発には不向きです。
メンバーが好きではないこと、意志がないこと、スキルや知見がないことをビジョンや目標に掲げると、すぐに形骸化します。現在のチーム力よりもちょっと背伸びした水準の達成可能な目標を掲げることが、中長期的に個人やチームを成長させ、スキルアップを実現する秘訣です。
そしてそれを実現するためには、自分・メンバー・個人の的確な 分析が必要です。まずは、自己分析に取り組んでみてください。
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「管理職に求められる役割と、マネジメントの基本業務とは」
「管理職の目標設定のコツ。組織やメンバーを成長させるための考え方」
監修者:中野 崇
Zoku Zoku Consulting 代表 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー
早稲田大学教育学部卒。良品計画を経て2005年にマクロミルへ。上海支社の立ち上げ(事業部長)、韓国支社の経営再建(取締役)、SaaS型事業開発・統合マーケティング部門の立ち上げ・グローバルMission/Vision/Value策定(いずれも執行役員)、電通マクロミルインサイトのCEOなど、第2創業期の要職を歴任。課長・部長・執行役員・取締役・代表取締役を経験し、延べマネジメント人数は500名超。2018年よりZoku Zoku Consultingを開業。豊富なマネジメント経験と新規事業開発経験を活かし、新規事業開発×チームビルディングを同時に実現する伴走型・OJT型のコンサルティングを提供している。
https://zokuzoku-design.co.jp/
【著書】『管理職のための数値化技術(日経BP)』、『多彩なタレントを束ね、プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事(すばる舎)』など
【Udemy】『現状分析からはじめるマネジメントの超基本』、『リモートワーク時代のマネジメント術』など多数。
一連のコンテンツを通して、自分らしい生き方・キャリアを実現する、ビジネス基礎スキルの向上ノウハウを発信している。