AI時代、管理職の役割はどう変わる? 「管理者」から「メンター」へのシフト|山本悠介さん監修
AIの普及により、職場の風景は大きく変わり始めています。部下が作る資料の完成度が上がった一方で、「どこまで本人の実力なのかわからない」「何を基準に評価すればいいのか迷う」という管理職の声も。AI時代、管理職は何を見て評価し、どのように部下を育成すればよいのでしょうか。後編では、AI活用専門家の山本悠介さんに、AI時代の管理職の役割を伺いました。
AI時代の評価・育成については、こちら(前編)の記事で詳しく解説しています。
https://bemyself.pasonacareer.jp/skill/skill-4742/
監修者:山本 悠介(やまもと ゆうすけ)
AI活用専門家。株式会社renue 代表取締役社長。新卒でアクセンチュア株式会社に入社、金融・IT領域のコンサルティングに従事。その後、株式会社ジラフでプロダクトオーナー兼CMOを務める。フリーランスコンサルタントとして活動後、2021年に株式会社renueを設立。マーケティングを含めたアジャイルなプロダクト開発を得意とする。
AIで伸びる人に共通する2つの特徴
- ―同じAIを使っていても、伸びる人と伸びない人がいます。その違いは?
- 山本:AIを使って伸びる人の特徴を二つ紹介します。一つ目は、変なプライドが無く、立場を捨てられることです。どんな作業でも「これは自分にしかできない仕事だ」と思っている人は、なかなかAIを活用できません。むしろ、「自分程度ができることならAIにもできるだろう」くらいの感覚でどんどんAIに任せた方が良い成果物ができて、成長できます。
二つ目は、自責思考であることです。AIの出力がおかしかったときに、「AIが間違えた」「AIが悪い」「AIだから仕方ない」と他責思考になるのではなく、「自分の指示の出し方が悪かった」と考えられるかが重要です。AIが出力した結果は、自分の責任です。自責思考でAIを活用できれば、成長が早く成果も出やすいですね。
- ―組織内でAIを使う人と使わない人の差が広がることで、どんな摩擦が起きるのか。
- 山本:AIを使う人が疲弊してしまうケースです。AIを使う人は、使わない人から見たら「楽をしているのではないか」と思われがちですが、実際は逆なんです。
例えば資料作成。AIを使わない場合「考える→作業する→考える…」というサイクルですよね。一方でAIを使う場合、「考える→AIに作らせる→成果物を精査する→考える→AIに作らせる→成果物を精査する…」を高速で繰り返すことになります。成果物精査が挟まることで、脳を休ませる時間が少ないのです。
しかもAIを使用することで作業効率は大幅に向上するので、100倍のスピードで成果物が出てくる。つまり人間も100倍の成果物精査をしなくてはならないし、その分失敗も積み上がっていく。そうなると、これまでの評価制度のままだと、「AI活用者はミスが多い人」と見なされ、挑戦せずにAIを使わずゆっくり作業をする人の方が「ミスの少ない人」として評価されてしまうこともあります。
これではたとえ個人が100倍の速度で仕事をしたとしても、会社全体の業績向上には直結しないはず。これは今後、多くの企業が直面する課題だと思います。
AI活用のルール設計で重要なのは「失敗させること」
- ―管理職として、組織のAI利用に必要なルール設計とは?
- 山本:まず、「リスクをゼロにする」という発想をやめることです。その前提があると誰もAIを使わなくなりますし、表向きは禁止なものを裏でこっそり使う場面が増えるだけです。
ただ、もちろん企業にとって絶対に避けたい情報流出などはありますよね。重要なのは、起こりうる最大リスクを想定した上で、許容可能な範囲で失敗させること。例えば、職位に応じてデータアクセス権限を制限することで安全性を確保しながら「アクセス可能な情報はAIで自由に使って良い」というルールを設定するなど。
人は失敗から成長します。過度にリスクを怖がらず、限定された権限の中で最大限チャレンジさせ、失敗させる方が部下は成長すると思っています。
AI時代、管理職は「管理者」から「メンター」へ
- ―管理職の役割は今後どのように変わる?
- 山本:極端な言い方をすると、マネージャーという役割はなくなっていくと思います。
理論上はAIが全てのPC操作や言動を監視・管理できるので、人が人の仕事を直接管理することがなくなるのも自然なことでしょう。
一方で、メンターとしての役割はより重要になります。AIは人の学習スピードを加速させますが、進む方向までは決めてくれません。だからこそ、「何を目指すのか」「なぜ挑戦するのか」を伝え導く人の価値は高まります。つまり管理職とは、部下に“心意気を教える”仕事になっていくのではないでしょうか。
- ―AI時代でも人にしかできないマネジメントとは?
- 山本:価値観や哲学、仕事への向き合い方など、プロフェッショナリズムを伝えることです。
AIは観測できるものならば分析できますが、人の心は観測できるものではありません。AIには人の価値観を変えたり、心を動かしたりすることはまだできないのです。
目の前の相手を観察し、その人に刺さる言葉で伝える。例えば、学生時代に遊んでいた新卒社員に目覚めるような成長を促すことができるのは人間であり、人間の仕事です。
- ―最後に、管理職や管理職を目指す女性へメッセージを。
- 山本:AIによって働き方は確実に変わります。ただ、その変化を組織へ広げる鍵を握っているのは管理職です。新しい技術を導入したり、運用ルールを作ったり、組織文化を変えたりする役割は管理職にしかできません。大変な時代ではありますが、同時に非常に面白い時代でもあります。
また、AIの進歩によって業務が効率化され評価軸も変わってきています。長時間労働や飲み会でのコミュニケーションなどが評価されてきたこれまでの男性社会の慣習に馴染まなくても活躍できるという点で、女性にもチャンスが開かれたと言えるかもしれません。
AI時代の変革を経験した管理職の価値は今後ますます高まると思っています。AIを普及させたり管理フローを組んだりすることはご自身のキャリアにとっても貴重な経験です。ぜひ、AIに使われる側ではなく、AIを使う側として挑戦してほしいですね。
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(取材・執筆/菱山恵巳子)





