リーダーシップ向上のためのPM理論とは?わかりやすく解説
強い組織を育てるためには、優れたリーダーの育成は欠かせません。リーダーや組織についての理論は数多くありますが、今回はリーダーシップ向上のための代表的な行動理論である「PM理論」について、概要や実践方法をお伝えします。
目次
PM理論とは? SL理論との違い
「PM理論」は、1966年に日本の社会心理学者である三隅二不二氏によって提唱されたリーダーシップ理論です。
PM理論では、リーダーが持つべき機能を「P:目標達成機能(Performance)」「M:集団維持機能(Maintenance)」の2軸で分けています。そのうえで、双方の観点からリーダーの行動評価や調整を行うのです。
PM理論をリーダーシップ向上に役立てるためには、まずはこの2つの視点で自分のリーダーシップについて評価し、足りない部分を補うために行動変容を起こします。
似た名前のリーダーシップ理論に「SL理論」と呼ばれるものがありますが、こちらは「Situational Leadership(状況対応型リーダーシップ)」の略。メンバーの能力や熱意に合わせてリーダーの対応を変えるスタイルのことです。
PM理論では、あくまでリーダー自身が自分のリーダーシップを振り返り、行動を変えます。行動変容の出発地点が「リーダー自身」であるか「メンバー」であるかが、PM理論とSL理論の大きな違いです。
PM理論の「P機能」と「M機能」について
PM理論でリーダーシップを構成する2つの軸、「P:目標達成機能(Performance)」「M:集団維持機能(Maintenance)」について順番に解説します。
P機能
P機能は、英語で「Performancefunction」と表記され、「目標達成機能」を表します。チームに課せられた目標を達成し、成果を挙げるための機能です。
具体的には、「目標設定や達成のための計画立案」「メンバーへの指示」「プロジェクトや納期までの進捗管理」「規則遵守のための仕組みづくりや違反への指導」などが挙げられます。
P機能は定量管理が比較的容易であり、モニタリングしやすい内容であるとも言えるでしょう。P機能が弱いチームでは、部下の日々の仕事が組織としての成果に繋がりにくく、また仮に繋がったとしても再現性が乏しいものとなる傾向があります。組織に貢献できるチームを作るうえで、P機能の強化は不可欠です。
M機能
M機能は、英語で「Maintenancefunction」と表記され、「集団維持機能」を表します。こちらはチームやプロジェクト内の集団をまとめることを目的とした機能です。
具体的には「日々の声かけや気配り」「メンバーの悩みの拾い上げやトラブル解消のためのサポート」「チームの雰囲気作り」「公平なマネジメント」など、人間関係を良好に保ち、チームとしての力を強める行動などが挙げられます。
M機能はP機能とは異なり、定量管理が難しく、その管理には定性情報が重要になります。M機能が弱いチームでは、メンバー間の不和や、リーダーへの不信、メンバーの業務へのモチベーションの低下などにより、チーム力の大幅な減退が予想されます。
PM理論における4つのリーダーシップ
PM理論では、リーダーシップのスタイルをP機能・M機能それぞれの強弱によって、下記のように分類しています。それぞれのリーダーシップについて解説します。
リーダーシップの理想は「PM型」
PM型はP機能、M機能共に優れた理想的なリーダーシップのスタイルであるといえます。
このタイプのリーダーは、高い目標達成能力と集団維持能力の両方を持っています。そのため、メンバーは成果にコミットする意識を持ちながら、チームへの帰属意識を持ってモチベーション高く仕事をすることができます。メンバーは、高い生産性やエンゲージメントの強化を期待できるでしょう。
メンバーへのケアが行き届いていない「Pm型」
Pm型は、成果重視型のリーダーシップスタイルです。
高い目標達成能力がある一方で、集団維持能力が低い傾向にあります。目標管理にはコミットできるため、短期的には高い成果を期待できます。しかし、メンバーへのケアが行き届かないため、長期的にはメンバーの疲弊やモチベーションの低下などを招きがちです。特に新人にとっては、日々のサポートが足りず、成長できなくなってしまう可能性が否めません。
なかなか成果が出ない「pM型」
pM型は、チームワークや働いている個を重視するタイプのリーダーシップスタイルです。
一見するとメンバーにとって居心地の良い組織のように見えますが、pM型のリーダーシップは目標達成能力が低いことから、なかなかチームとして成果を出せない傾向にあります。いわゆる「仲良しチーム」に陥りがちで、成長を望むメンバーや成果を出したいメンバーにとってはゆるく感じてしまいます。また、チームとして成果が上がらないため、メンバー個々の評価にも繋がらず、長期的なモチベーションの低下にも繋がりかねません。
加えて、pM型のリーダシップでは、数字管理や目標へのコミットが弱い傾向もあります。そのため、特に、営業組織では成果を出しにくい面があります。
未熟なリーダーシップ「pm型」
pm型は、目標達成能力も集団維持能力も低い、未熟なリーダーシップといえます。
チームとして成果を残せず、メンバーへのケアも行き届かないため、チームを任せた場合、メンバーに負担をかける可能性が高く、組織にとっても離職リスクを招きます。このタイプのリーダーには、経験豊富なフォロワーとなるメンバーをつけたり、上長がメンターとしてリーダーの補助に入ったりする工夫が必要だといえます。
P機能とM機能の磨き方と具体例
最後に、PM理論を用いてリーダーシップを向上させる具体的な方法を解説します。
自分のリーダーシップのタイプを知る
まず大切なのは、4つの中で自分がどのリーダーシップのタイプかを把握することです。PM理論には診断テストもあり、Webで無料でできるものもあります。
ただし、Web診断は主観的な判断になるため、客観的に判断したい場合はメンバーや上長にフィードバックをもらうことも大切です。
自分のリーダータイプを知ることで、P機能、M機能どちらの機能を磨けばいいかが自ずと見えてくるでしょう。
P機能の磨き方
では、P機能「目標達成機能」を向上させるためにはどうしたらよいのでしょうか。前述したとおり、P機能は比較的定量管理が容易であり、モニタリングしやすい内容です。
具体的には下記を行うことで、P機能を向上させることができます。
・達成すべき目標を明確にする
まずは達成すべき目標を明確にし、メンバーに周知することです。できれば曖昧なものではなく、数値など結果がはっきりと出る定量的な目標が好ましいです。
・目標達成までのプロセスを明確にする
ゴールまでの道筋が具体的であればあるほど、目標達成の見込みは高くなります。そのためにはKGI(Key Goal Indicator)の設定や、その途上のKPI(Key Performance Indicator)を適切に設定することが大切です。
・達成までのモニタリングを行う
目標とプロセスを明確にしたら、メンバーを放置するのではなく、定期的に報告を受けて経過を確認しましょう。目標達成が難しいと判断した場合、途中で修正を加えることも忘れてはいけません。メンバーの行動をきちんと把握して、リカバリができるように準備することが大切です。
目標設定の方法については、ぜひこちらの記事もご覧ください。
管理職の目標設定のコツ。組織やメンバーを成長させるための考え方
M機能の磨き方
続いて、M機能「集団維持能力」を引き上げるための方法です。
M機能はP機能とは違い、機械的に判断することが難しい項目です。M機能の向上には、メンバーとの交流や、コミュニケーション量の増加など、単純な数値では計れない“人に配慮した取り組み”が必要となります。
・メンバー一人一人とのコミュニケーション量を増やす
チームの関係を良好に保つためには、まず自分と個々のメンバーの関係性を良好に保つことが大切です。まずはコミュニケーションの量を担保して、ビジネス上の相互理解を深めましょう。1on1などを定期的に設定して、相手の仕事の目標や、日々の業務内容を共有する場を作ることが大切です。
・メンバー同士が話し合える場を設定する
チームはリーダーとメンバーだけの関係で成り立つものではありません。メンバー同士のコミュニケーションが盛んになることで、より強いチームを作ることができます。お互いの仕事を知るチームミーティングなどの場を意識的に設けることも重要です。
・ITツールを導入する
メンバーが外出が多く、すれ違いが多く発生するような職場であれば、雑談や仕事の話題を簡単にできるチャットツールなどを導入するのも良いでしょう。
チームビルディングについては、ぜひこちらの記事もご覧ください。
成果につながる「チームビルディング」とは?目的や意識すべきポイント
まとめ:PM理論を活用して理想のリーダーを目指そう
PM理論を活用することで、自分のリーダーとしての強みや弱みを具体的に発見することができます。P機能、M機能、どちらの機能が弱くても長期的に強いチームを作ることは難しいので、弱い部分を理解し、理想のリーダーを目指して補強していきましょう。