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成果につながる「チームビルディング」とは?目的や意識すべきポイント

近年、価値観の多様化やダイバーシティが進み、1つのチームに所属するメンバーの在り方も様々です。そんな中、管理職に求められるスキルの一つとして「チームビルディング」に注目が集まっています。

 

強い組織ではメンバーの一人一人が最高のパフォーマンスを発揮することで、より大きな成果に繋げることができます。そのような環境を作るための組織構築の手法が「チームビルディング」です。

 

この記事では、チームビルディングの目的やメリット、管理職が意識するポイントなどを詳しく解説していきます。

チームビルディングとは

「チームビルディング」とは、個々のメンバーの能力を最大限に引き出し、高い成果を上げることができるチームを構築するための手法です。

昨今の社会を取り巻く環境は複雑化しており、先行きが予測困難な「VUCA(ブーカ)」の時代と呼ばれています。そのような時代に対応するためには、ただ上の言うことを聞いて画一的に動くだけでなく、個々が自律・自立して動くことができるチームの形成が求められます。

そのようなチームを形成するためには、メンバー全員が相互に良い影響を与え合い、高い能力を発揮しうる集団になるよう管理職がチームビルディングを行なうことが重要です。

チームビルディングの目的

では、チームビルディングを行うことの具体的な目的とは何でしょうか。

ビジョンの浸透

1つ目の目的は、ビジョンの浸透です。

チームビルディングは、事業年度の期初、新組織または新規プロジェクトの発足時などに導入されます。その際、会社のビジョンやプロジェクトの目標や方針、ゴールが共有されるでしょう。チームビルディングを行なうことで、それらのビジョン・ゴールをメンバーに浸透させることができます。

するとチームは同じ方向を向いて仕事をすることができます。1つのビジョンへ向かう意識が強くなると、チームの結束力を高めることにもつながり、メンバーが自分が何をすべきかを自発的に考え、行動することも期待できます。

メンバーの育成

2つ目の目的はメンバーの育成です。

チームビルディングでは、チーム内の多様な人材と関わることが重要視されます。多様な人材と有機的に関わる機会を増やすことで、新入社員や若手社員には、中堅社員や中途入社の仕事を学ぶ機会が生まれます。また中堅社員にとっても、若手への指導力の強化や、チームリーダーである管理職のフォロワーシップを学ぶ機会になるでしょう。

人材育成の記事はこちら
人材育成の手法とは。効果を上げるポイントや注意点を解説!

心理的安全性の確保

3つ目の目的は心理的安全性を確保することです。

チームビルディングのために意識的にチーム内で関わる機会を増やすと、相互理解が進み、メンバー同士での信頼関係が生まれます。その結果、自分の意見を安心して主張できる「心理的安全性」が生まれるのです。

逆に信頼関係が育まれていない場合、ミーテイングなどで生じた小さな違和感、先行きや見通しの危険サイン、反対意見などが言えなくなってしまいます。

当事者意識の形成

4つ目の目的は当事者意識の形成です。

チームビルディングを行なうということは、達成すべき目標があるということです。目標を達成するためには、個々のメンバーの当事者意識が大切です。チームビルディングでは、管理職がメンバーの役割を明確化し、自覚してもらいます。

「目標達成」に向けて、メンバーの役割を明確化することで、個々人の仕事に対して当事者意識が生まれます。

チームビルディングの意外なメリット

また、チームビルディングには副次的ではありますが、「新しいアイデアが生まれやすくなる」というメリットもあります。

相互理解が深まり、率直に会話ができるようになると、相乗効果で新しいアイデアが生まれやすくなります。お互いの違いや多様性を尊重することで、自分だけでは実現できなかった問題解決の方法や、成果を出すためのアイデアも生まれます。お互いの視点や視野、視座のちがいを歓迎する議論が活発化することによって、年次や役職を超えたリスペクト・コミュニケーションが可能になっていきます。そうなると、結果的にチームのパフォーマンスの質も生産性も向上します。

「タックマンモデル」におけるチームビルディングの5つのステージ

チームビルディングにおける代表的な考え方として「タックマンモデル」があります。心理学者のブルース・W・タックマンによって提唱されたモデルのことです。チームを形成する中で起こる変化を、5段階に分けて客観的に考えることができるモデルとなっています。この項では5つのプロセスについて順番に見ていきましょう。

形成期

「形成期」は、組織が形成されたばかりの時期をさします。チームメンバーのこともよく知らず、コミュニケーションにはややぎこちなさがあります。自身の意見を言う際も、周囲の様子を気にする傾向にあります。

そのため、まず必要なのは相互理解であり、コミュニケーションの量が重要になります。アイスブレイクの時間を多めに設定したり、交流する場を設けることも重要です。またこの時期にリーダーはビジョンを示し、目標を伝えて、目指すべき方向をメンバーに共有する必要があります。リーダーが伝えることで、無目的だった集団が、チームに編成されていくのです。

リーダーの良い声かけ事例
● 私たちは異なるバックグラウンドを持っています。これこそが私たちの強みです。お互いの強みを共有して、チームの結束を高めましょう!
● 皆さん、このチームで自分を成長させましょう。そしてお互いの成長に貢献しましょう!
● 新しいアイディアや提案があれば、どんどん言ってください。私はリーダーとして、オープンなコミュニケーションを大切にする場にしたいと思っています

リーダーの悪い声かけ事例
● 何でまだ仕事に取り掛かっていないの?
● 私が言った通りにやりなさい。
● こんな基本的なこともできないの?

混乱期

ある程度お互いの事が分かってくると、考え方や価値観の違いから意見がぶつかったり、目標や仕事内容に不満が出てきたりするタイミングが訪れます。これが「混乱期」です。

「混乱期」ではメンバー間の衝突や、不満を抱えたりしやすい状態になります。この時リーダーがまず意識すべきことは、「混乱期」はチームビルディングを行う上で、避けては通れない段階であると認識する事です。コミュニケーションの質が大事になってくる時期なので、チームメンバー一人一人の考えや不満に思っている点について丁寧に向き合いましょう。くれぐれも「混乱期」を怖がる必要はありません。これはチームが成長していくための試練です。そして、リーダーとしての器を大きくしていくための試練でもあるのです。

リーダーの良い声かけ事例
● 今は混乱を感じているかも知れませんが、それは成長している証拠だから大丈夫。みんなが新しいアイディアを出し合い、最善の方法を見つけ出しましょう
● 失敗は成功のもと。失敗から学び、次に活かすことが重要です。誰もが失敗することを恐れず、率直に意見を交換しましょう
● 助けが必要なら、遠慮せずに頼んでください。みんなで協力して問題を解決しましょう

リーダーの悪い声かけ事例
● あなたたちにはもう任せられないから、私の言う通りにやってください
● あなたたちの提案は全然役に立っていない。もっと真剣に考えてください
● あなたたちの問題は、あなたたちで解決してください

統一期

混乱期を乗り越え、メンバー全員が同じ目標達成を目指し、行動できるようになる時期を「統一期」といいます。この段階になると、チームメンバーは互いの価値観や考え方を理解し、相互に良い影響を与えながらアクションを起こせるようになってきます。

個々の役割や強みをメンバーが理解しているので、メンバー間でも生産的なコミュニケーションが図れるようになり、チームの能力が飛躍的に向上するタイミングでもあります。この時のリーダーは一歩引いて俯瞰してチーム全体を見て、目標から反れそうな場面があれば、軌道修正を行なっていくと良いでしょう。

リーダーの良い声かけ事例
● みんなの協力のおかげで、チームが一つにまとまってきました。とても頼もしいです!
● 個々の力を最大限に発揮していますね。これからもお互いの強みを生かして、一緒に成果を上げていきましょう!
● いい感じですね!この調子で進んでいきましょう

リーダーの悪い声かけ事例
● もっと頑張らないとこのままじゃ目標は達成できないですよ
● もっとやってくれなきゃ困ります

機能期

統一期を経て、メンバーが自身の役割を理解し、動けるようになると、組織全体が自走できる状態になります。これを「機能期」といいます。高いパフォーマンスを持続的に発揮できる時期でもあるため、リーダーはこの「機能期」の状態を持続させる役割が求められます。

多くのメンバーが役割を理解し、リーダーの役割も肩代わりできる状態になっている為、リーダーはメンバーのメンタル面のチェックや業務の負荷などを見ながら後方支援に回ると良いでしょう。

リーダーの良い声かけ事例
● みんなのおかげで、業績が向上しています。これからもお互いに助け合いの精神でゴールの達成を目指しましょう!
● チームがスムーズに機能してきましたね。新しいやり方やアイディアを取り入れて、今よりもさらに効率的な方法を見つけていきましょう!
● ミスや失敗は、みんなで乗り越えれば大丈夫です。チャレンジを楽しみましょう!

リーダーの悪い声かけ事例
● もっと革新的なアプローチを考えてください
● この調子じゃ達成はムリですよ。責任取れますか?

散会期

「散会期」は、チームが役割を終え、解散する時期のことです。散会期でリーダーに求められる役割は、良い形でチームを締めくくることです。チーム活動の中でメンバーの成長した点や良かった点、次回挑戦したいことや成長したいことなど振り返りの機会を設けるとよいでしょう。やりきった達成感や充実感をお互いに称賛し合い、メンバーたちが燃え尽きることなく次のチャレンジへ送り出すのがリーダーの役割です。

リーダーの良い声かけ事例
● 自分自身の成長とチーム全体の成功に貢献してくれてありがとう。この期間すべてが尊い時間と体験だったなと思ってくれたら嬉しいです。これまでの協力に感謝します。それぞれみんなが新たな道を歩む際も、お互いの成功を祈っています
● 素晴らしい時間を共有できました。これからも新しい挑戦が待っていますが、お互いに刺激し合える仲間でいましょう!

リーダーの悪い声かけ事例
● もう終わりだからといって、簡単に気を抜かないでください。
● 本当に大変なチームでした。

チームビルディングで意識すべきポイント

チームビルディングは、チームを作れば自然に生まれるわけではなく、能動的に効果を生む環境を作っていかなければなりません。「タックマンモデル」に関しても、時が経てば自動的に「統一期」に辿り着くわけではありません。

では、管理職やリーダーがチームビルディングを行う上で、意識すべき事はなんでしょうか。

相手の意見を否定しない場を作る

チームビルディングにはメンバー間のコミュニケーションが不可欠ですが、集まったばかりのメンバーが初めから気兼ねなく話をするというのは難しいでしょう。そのためリーダーは、相互理解が出来る場作りを意識的に行う必要があります。

まず必要なのはリーダーとメンバー間の信頼関係です。初期の段階ではメンバーとのコミュニケーションの量を増やすことで、相互理解が進み信頼関係が生まれます。大切なのは、リーダーが相手の意見を否定しない場づくりを行うことです。チームメンバー同士が意見を否定せずに、反対意見を建設的な意見として歓迎する姿勢をリーダーが示すことが重要です。そして、リーダーはメンバー一人一人から信頼が深まることで、メンバーがリーダーに相談しやすい関係性が構築できます。

リーダーとメンバーの信頼関係が出来てくると、自ずとチーム内でも発言しやすくなります。そしてチーム内でも自身の発言が否定されないと分かってくると、チーム全体がメンバーにとってどんな意見であっても受け止めてくれる安心安全の場となっていきます。

そうなれば意見の対立を恐れなくなります。賛成にしろ反対にしろ、根拠や意見、意志を伝えることが自立して思考していることの証です。この一人一人の思考と行動こそが、自分一人では生み出せないソリューションや新たなアイデアを生まれやすくさせる場づくりなのです。

信頼関係構築の記事はこちら
管理職とメンバーの信頼関係構築のポイント

メンバー間で価値観や経験を共有する

チームで最大限のパフォーマンスを発揮するには、メンバー同士の相互作用が不可欠です。その為、チームリーダーだけでなく、メンバー同士も経験やスキル、価値観を自ら進んで伝え合うことが大切です。お互いの強みや長所を知れば知るほど、補強し合える強いチームになっていくでしょう。

チームの「形成期」にはアイスブレイクや、相互理解が進むようにコミュニケーションの量を増やす取り組みを仕込んでいくようにしましょう。

メンバーの強みを引き出すコーチングについての記事はこちら
部下の育成につながる! 管理職が身に付けるべきコーチングスキルとは

役割を明確にする

チームはあくまでもビジネス上の関係なので、成果を上げる、目標を達成することが目的です。

この時大事なのが、個々のメンバーの役割を明確にすることです。トラブルが発生した際に「誰が」「何を」「担当しているのか」が明確になっていないと、当事者意識が生まれづらく、責任転嫁をしてしまうこともあるでしょう。初めの内は、誰が各タスクのボールを持っているのかを明確にすることが重要です。

また若手には若手の、中堅には中堅の成長を促したいポイントを初期にヒアリングしておき、チームにおいて果たして欲しい役割、個々のストレッチ目標を設定するのもメンバーの成長を促す上で効果的でしょう。

まとめ

今回は個々のメンバーの能力を最大限に引き出し、高い成果を上げることのできる「チームビルディング」の手法について解説しました。「チームビルディング」は自然発生的に作られるものではなく、リーダーが意図をもって能動的に動く事で構築していくものです。

まず、最初に「リーダーの意志と意欲ありき」です。
チームメンバーの相互理解を進め、信頼関係を築く事で、より高いパフォーマンスを上げる事ができる組織を作っていきましょう。

河村 晴美のイメージ画像

河村 晴美

NHKクローズアップ現代に出演した『叱りの達人』
今まで25年間、トヨタ自動車、東京海上日動、大阪府警察本部など、のべ15万人へ講演
研修の実績あり。新卒入社した有線放送会社で同期入社700名中で5位の営業成績を挙げ
るものの、部下育成はおでこに蕁麻疹が出るほどストレスで自信を失う。心理学やキャリ
ア形成、コーチング、西洋哲学(言語分析)などを学び『リスペクト&ユーモアで伸ばす
叱り方』でパワハラ予防の専門家として活躍中。好きな映画は、スターウォーズ、鬼平犯
科帳。京都女子大学卒
叱りの達人協会(有限会社ハートプロ)
我慢や力押しせずにラクして相手が動き出すコミュニケーションのコツを知りたい方はこちら
https://shikarinotatsujin.com/present/#merumaga

【書籍】
「やる気をONする叱り方」(PHP研究所)等多数あり
【メディア出演】
日本経済新聞、読売新聞、産経新聞、朝日新聞、奈良新聞、NHK、
読売テレビ、関西テレビ、Abema TVなど多数。
KRY山口放送ラジオ『どよーDA』レギュラー出演中
【趣味】
落語鑑賞や神社仏閣めぐり、宿坊体験など
母親より書道を3歳の時より指南され、墨の香りに癒される

 

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