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人材育成の手法とは。効果を上げるポイントや注意点を解説!

現代のビジネス環境は、急速な技術革新、VUCA(不確実性、不安定性、複雑性、解消性)の時代、そして少子高齢化など、大小さまざまな課題の中で舵取りを求められています。

このような状況であるからこそ経営資源の中でも「人」が最重要だと言われています。組織において「人材育成」は必須の戦略です。この記事では、人材育成のメリット、手法、ポイントを解説いたします。



【目次】
・人材育成のメリット
・人材育成の手法
・育成効果を上げるためのポイント
・人材育成の注意点:若手と中堅それぞれに適した人材育成とは
・まとめ

人材育成のメリット

組織が繁栄し成長するために人材育成は欠かせません。なぜ人材育成が組織の成長につながるのか、まずはそのメリットを詳しく紹介します。

① 組織の生産性向上
組織が持続的な成功を収めるためには、従業員の能力を向上させることが必要です。従業員がトレーニングや教育プログラムを通して、標準的なスキルや新しい技術を獲得することで、業務の効率性が向上し、結果として組織全体の生産性が向上します。

②チームの強化と共通の文化の構築
人材教育による従業員それぞれの成長が、チームの連携やコラボレーションを強化し、共通文化を構築する基盤になります。共通の価値観や行動規範を学び共有し、従業員同士の間で関係と協力関係を育む。すると組織の結束が強まり、共通の目標に向けて一丸となれるのです。

③従業員のモチベーションの向上
成長の機会を提供されると、従業員の中に組織への愛着や仕事の誇りなどが生まれます。そして、成長によりチームへの貢献度が上がることでモチベーションが向上します。

④人材流出の抑制
上述のように、従業員が適切な育成や成長の機会を得ることで、組織に対するロイヤリティや満足度が高まります。これにより、従業員の離職率が低下し、結果として人材流出を抑制する効果が期待されます。

特に、優秀な人材ほど自分自身をさらに成長させて価値を高めたいと考えています。優秀な人材をつなぎとめておきたいならば、成長の機会を提供する、人材教育に熱心な企業である必要があるのです。

⑤革新と競争力の強化
人材育成の過程で、従業員が新たなアイデアやアプローチを学ぶことで、組織内での革新を推進し、変化の激しいビジネス環境でも競争力を維持できるようになります。その結果、先進的なソリューションやサービスを行えるようになります。

⑥管理職自身の成長とリーダーシップ強化
管理職が部下の育成に注力することで、自分のリーダーシップスキルやマネジメント能力も向上します。 部下の成長を促進することは、指導力やコーチングスキルを養うことでもあり、より優れたリーダーへの成長の機会を得ることができます。

コーチングスキルについての記事はこちら
■部下の育成につながる! 管理職が身に付けるべきコーチングスキルとは

人材育成の主な手法

では、どのように人材育成を行なうべきなのか。代表的な4つの手法を紹介します。

①OJT(On the Job Training)
新しいスキルを身につけるために、職場での実践的なトレーニングを提供する効果的な手法です。OJTでは、従業員が実際の業務環境で学び、経験を積むことを重視しています。

具体的な手法には、以下のようなものがあります。

・シャドウイング(見習い): 新入社員やインターンが経験豊富な従業員に同行し、業務の流れや基本行動を学びます。これにより、実務の理解が深まり、業務にすぐに参加できるようになります。主に個別対応型で、1対1など少人数で行う場合が多いです。習得状況によって臨機応変に指導ができることがメリットです。

・1on1面談(マンツーマン面談・個別面談):部下が成長していくためには、実際の業務を行った後が重要です。上司が部下へフィードバックをすることで、ミスや失敗をも学びに変換できるという経験を与え、部下は失敗を怖がらなくなるからです。
さらに、管理職が心を開いて、部下の長所や優れている点を発見し率直に伝えることで、信頼関係が構築されていきます。

②Off-JT(Off the Job Training)
職場外でのトレーニングのことです。従業員が職場から離れて新しいスキルや知識を獲得することを可能にします。

具体的な手法として、講習、研修、セミナー、ワークショップなどの形式があります。セミナーやワークショップは、業界や特定のスキルに焦点を当てた短期のトレーニングプログラムです。外部の専門家やトレーナーが従業員に対して新しいアイデアやスキルを紹介し、実践的な実践やこれにより、従業員は異なる視点やアプローチを学ぶことができます。指導者1名に対して、受講者は大人数でも対応可能。効率良く人材育成ができるメリットがあります。

③SD(Self Development)
企業側から学習機会を与えられるのではなく、社員が主にキャリアアップを目的に、自分自身の意思で行う能力開発やスキルアップのことです。業務に関連する資格取得や知識・スキルの習得などを社内外のセミナー参加、読書、音声学習や動画学習、オンラインスクールなど多岐にわたる方法で行います。企業の人的資本経営のスタンスに左右されずに、本人の意志で行うことができるのがメリットです。

④ブレンディッドラーニング(Blended Learning)
従来の対面式教育とオンライン学習を組み合わせた、総合的な学習アプローチです。この手法は、人材育成の分野で広く採用され、効果的な学習環境を提供するために用いられています。その特徴の一つは、柔軟性と効率性です。
受講者はオンラインのプラットフォームにより自分のペースで学習を進めつつ、トレーニングやセッションでは、受講者同士や講師との対話、実践的な演習が行われます。この組み合わせにより、個々の学習スタイルや進度に合わせた最適な環境が提供され、従来の一方向性の教育手法を超えた効果的な学びが生まれます。

また、会社側は受講者の進捗や理解度をモニタリングし、必要に応じて個別にサポートを提供することができます。 データ分析や教育プログラムの改善点も把握すれば、プログラムの調整や改善にも効果をもたらします。

育成効果を上げるためのポイント

続いて、人材育成で効果を上げるために、管理職が意識すべきポイントを紹介します。

①明確な目標設定
育成を受ける本人がキャリアの見通しを立て、成長を実感できるように、現在地とゴールを明確にすることが重要です。そのために管理職は、具体的で測定可能な目標設定をサポートしてあげるとよいでしょう。

②成果の認知とフィードバック
管理職は、人材育成を受けて成長した成果に対して適切な認知と肯定的なフィードバックを提供しましょう。 部下の強みを認識し、その強みを伸ばすためのフィードバックや支援を提供することが、成長の実感を高めるサポートになります。

フィードバックについての記事はこちら
■人材育成のためのフィードバック。管理職がすべき正しい手法

③成長の機会の提供
責任ある役割、または自己のコンフォートゾーンを超える機会を考慮して、成長の機会を提供しましょう。挑戦的な状況は成長をもたらし、その過程で部下は自己の成長を実感できるようになります。

管理職がこれらのポイントを押さえることで、部下は自己成長を実感し、モチベーションが向上します。その結果、さらなる成長を目指して積極的に業務に取り組むようになります。

人材育成の注意点:若手と中堅それぞれに適した人材育成とは

実は、人材育成をする上では若手と中堅従業員へのアプローチを変える必要があります。それぞれのアプローチのポイントを紹介します。

・若手層へのアプローチ
若手従業員には、基礎的なスキルの習得と経験の蓄積を重視するアプローチが有効です。一見すると非効率のようにも感じますが、若手の成長のためには、何度もトライし、失敗を繰り返したとしても許すことも必要なのです。

試行錯誤し経験を重ねることで、創意工夫の思考力と、失敗してもへこたれないストレス耐性が養われます。この経験こそが、その後のキャリアで待ち受ける試練や修羅場で突破力として発揮されるのです。

・中堅層へのアプローチ
中堅層の従業員はすでに基礎的なスキルを獲得しており、組織内での経験も豊富です。だからこそ、成長の機会を提供しつつ、彼らの専門性や人を巻き込み動かすリーダーシップを高めることが求められます。

管理者としてのスキル、プロジェクトリーダーシップ、問題解決能力を育成し、組織戦略に対して深く関わってもらうことが、さらなる成長につながります。

まとめ

管理職が部下の育成に割ける時間や労力は限られていますが、人材育成を推進することは組織や管理職自身にも多くのメリットをもたらします。長期的な視点で人材育成の価値を認識し、積極的に取り組んでみてください。

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河村 晴美

NHKクローズアップ現代に出演した『叱りの達人』
これまで24年間、のべ15万人へ人材育成の講演研修の実績あり
営業や採用事務を経験、部下の育成などにも携わる中で「一声かけると人は
変わる」と体感。心理学などを学び、キャリアコンサルタント、コーチング
の資格を取得。部下育成研修などで講師を務める中「ほめるだけで人っての
びるのかな」という参加者の管理職の言葉から、ほめるの対義語である『叱
る』の意味を考えるようになる。自身もパワハラされた経験から、ただ怒鳴
ったりダメな点だけを伝えるのではなく「敬意と厳しさを両立させて、感謝
される叱り方」を具体的に伝えることで、パワハラのない社会を作りたいと
活動を行っている。京都女子大学卒
叱りの達人協会(有限会社ハートプロ)

【書籍】
「やる気をONする叱り方」(PHP研究所)等多数あり
【メディア出演】
日本経済新聞、読売新聞、産経新聞、朝日新聞、奈良新聞、NHK、
読売テレビ、関西テレビなど多数。
KRY山口放送ラジオ『どよーDA』月1回のレギュラー出演中
【趣味】
落語鑑賞や宿坊体験、3歳の頃より母親から指南された書道

 

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