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管理職ラボ

部下の育成につながる! 管理職が身に付けるべきコーチングスキルとは

対話を通じて、目標達成に向けたサポートをするコーチング。実は、コーチングスキルはメンバー育成にも役に立つ、管理職に必要なスキルなのです。

 

メンバーの強みや長所を引き出し、成果につながるコーチングとは何か。この記事では、コーチングの基礎知識から必要なスキル、さらには具体的な実践方法まで紹介します。



【目次】
・コーチングとは
・コーチングが組織にもたらすメリット
・コーチングを行なうべきタイミング
・コーチに必要な5つのスキル
・コーチングを成功させるための3つのポイント
・コーチングが失敗してしまう原因
・コーチング実践編:質問事例集
・まとめ

コーチングとは

コーチングとは、個人やチームのパフォーマンスを向上させ、成長を促進するコミュニケーションのことです。コーチングをする側を「コーチ」、受ける側を「クライアント」と呼びます。

コーチは、クライアントの行動スタイルや思考のクセ、習慣などについて、クライアント自身が気づくための問いかけやフィードバックを行います。

コーチとクライアントの関係は、上下関係や師弟関係ではありません。つまり、「コーチが正解を握っていて、クライアントを誘導する」行為はNGです。あくまで、クライアントの内面から湧き上がる動機を引き出し、クライアントの意志で「よし、やるぞ!」と決めて立ち向かうきっかけを与えることがコーチの役割です。

また、コーチには、クライアントが目標達成するまでのプロセスを「見守る」役割もあります。自分で決めた事でもなかなか前に進まず停滞している時に、コーチは「何が本人の行動を阻んでいるのか」を肯定的な眼差しで観察し、再びコーチングによって前進するきっかけを見出してあげることができるのです。

コーチングが組織にもたらすメリット

コーチングを受けることによる、クライアント側のメリットは、主に以下の3点が挙げられます。

・モヤモヤした感情が言語化される。
・心理的盲点に気が付く。
・不愉快な感情に絡め取られていた状態が客観視できる。

コーチングを受けると新しい「視点」「視野」「視座」で物事を捉えられるようになります。これは、業務につまずいていたり、キャリアプランが見出せずにいたりするメンバーの問題解決に必要なことです。

つまり、管理職がメンバーを適切にコーチングをすることで、メンバーが抱える問題を自ずと解決することができ、組織としても成長できるのです。

コーチングを行なうべきタイミング

では、管理職はどんな時にメンバーにコーチングを行なうと良いのでしょうか。

・管理職から見て、メンバーが仕事が行き詰まっているように見えた時
・メンバーからアドバイスを求められたり、悩み相談を持ちかけられた時
・期末やプロジェクト終了など、一区切りしたタイミング
・個別の定期ミーティングや1on1面談
・人事考課面談の最中
etc…

このように、コーチングを行なうタイミングは日常業務の中でも溢れています。管理職は、メンバーの様子に常に目を配り、少しでも必要と感じたら積極的にコーチングを取り入れましょう。

コーチに必要な5つのスキル

では、組織内でのコーチングを成功させるためには、管理職にどんなスキルが必要なのでしょうか。5つ紹介します。

①傾聴スキル
傾聴スキルとは、相手の話に耳を傾け、理解しようとする能力のことです。発する言葉だけでなく、非言語的なサインや感情にも注意を払いながら、真に理解しようとする姿勢が大切です。

② 承認スキル
承認スキルとは、ほめるだけではなく、感謝、ねぎらい、称賛、認めることも含みます。
どんな立場の人であっても、私たち人間は「わかってほしい」と思っています。例えば、「一緒のプロジェクトに取り組めて嬉しい」など、「私はあなたの味方である」ことが伝わる言葉をかけてあげることで、グッと信頼関係が深まります。

③質問スキル
コーチングでは、クライアントに新しい視点・視野・視座をもってもらうための問いかけが必要です。例えば、プロジェクトが上手くいっていないメンバーに対して「もっとこうしてほしい」と指示命令を出すよりも「どうしたら改善できると思いますか?」と問いかけた方が、メンバー自身に深い気づきを与えることができるのです。

④フィードバックスキル
フィードバックとは、否定や非難ではなく「今、こうなっていますよ」と、現在地を教えること。また、成果を出すための建設的な改善点を提供し、相手の成長と改善をサポートすることも指します。

★フィードバックスキルの磨き方は、こちらの記事をチェック
人材育成のためのフィードバック。管理職がすべき正しい手法

⑤世界観共有スキル
一見業務に関係がなく感じるプライベートなことであっても、メンバーが没入していることを把握し、その世界観に管理職が寄り添うスキルです。

質問でメンバーの「世界観」を引き出し、管理職もその「世界観」の言葉を使用することで、メンバーの能力を発揮する場合があります。例えば、以下のような会話が想定されます。

管理職 「仕事以外で、最近没入してることは何かありますか?」
メンバー「ネットゲームにハマっています」
管理職 「どんなおもしろさがあるの?」
メンバー「見ず知らずの人でもヴァーチャル空間では仲間なんです。仲間のために自分が戦うことは、誰かの役に立ってる実感が得られます」
管理職 「なるほど、あなたは誰かの役に立った時に、自分の存在が認められたって感じるのですね。ヴァーチャル空間で仲間をサポートしたように、仕事でも後輩たちを支援してあげると、もっとあなたの活躍の場が広がると思うよ。ネットゲームの仲間へのサポートで、喜んでもらえたことって、どんなことなの? とても興味深いので、教えてもらえるかな?」

コーチングを成功させるための3つのポイント

続いて、管理職からメンバーへのコーチングを成功させるためのポイントを紹介します。

①自分の考えをゼロにリセットする
人それぞれの「大切にしていること」=価値観には上下や優劣はありません。コーチングをする際は、自分の価値観は横に置いて、メンバーが大切にしていることを真摯に聴くようにしましょう。

②メンバーに教えてもらう姿勢をもつ
管理職だからといって、どんなことでも部下より知識を持っておく必要はありません。むしろ、ITなどのテクノロジーや最新技術は、メンバーの方が詳しいことも。素直に知らないことを公言し、新しいことを知る喜びを表現し、いつでも興味、関心、好奇心を示す柔軟な姿勢を示しましょう。

③事象を「点」ではなく「立体的」にとらえる
不具合が生じた時に、その出来事を「点」でとらえると、真の原因を見つけることができず、いつまで経っても不具合の解決に至りません。例えば「指示したことをメンバーができていない」場合、メンバーの理解力や思考力の欠如だと思いがち。しかし、実はメンバーに不満があって、仕事に身が入らないのかもしれません。

目の前の事象を観察し、周辺領域にも想像を広げて原因の仮説を立てる。すると真の原因が発見できるかもしれません。

コーチングが失敗してしまう原因

ここまで様々なスキルやポイントを紹介しましたが、それでもコーチングがうまくいかないこともあります。管理職からメンバーへのコーチングが失敗してしまう主な原因も紹介します。

①信頼関係が構築できていない
メンバーが管理職に心を開いていない場合、率直なコミュニケーションができません。何か言うと怒られたり、否定されると、誰だって本音を隠そうとしますよね。

②目的が共有されていない
管理職から面談で呼び出された際、何の目的なのかがわからないと、メンバーは身構え、警戒心をもちます。管理職が思っている以上に、メンバーは力の上下関係を意識しているものです。コーチングをしたい際には、メンバーへ「君の成長のために、あなたの率直な意見や考えていることを教えてもらいたいんだ」と伝えると良いでしょう。

③「聴く時間」より「話す時間」が長い
管理職が話してメンバーが聴く役割に回るパターンは、コーチングではありません。管理職は自分の考えを述べるのではなく、メンバーへ問いかけを意識しましょう。

コーチング実践編:質問事例集

最後に、組織内でコーチングを行なう際に使える質問例を紹介します。状況に応じて、活用してみてください。

・メンバーの業務が上手く行っていない時
「何の制約もなければ、どんな方法を試してみたい?」
「あなたが最も得意な方法でやって良いと言われたら、どんなことをするかな?」
「一番避けたい、最悪な状況ってどんなこと?」

・メンバーのあと一歩の成長を後押しした時
「何があなたの行動を止めているのかな?」
「成功したいのに、自分でブレーキを踏んでいることは何だろうね?」

・メンバーが抱える業務内容や組織への「不満」を引き出したい時
「この職場に一番欠けていることって、何だと思う?」
「今一番言ってほしい、ねぎらいの言葉って、何かな?」

・メンバー間の人間関係のトラブルを解消したい時
「あなたの発言を、相手の立場で見たらどう感じるかな?」
「あなたが嫌っている相手に、本当はわかってもらいたいことって何だろう?」

・メンバーの「キャリアプラン」を一緒に考えたい時
「今までで、一番やりきった経験、達成感や充実感を味わったことって、どんなことですか?」
「何でも叶うとしたら、どんなことを叶えたい?」
「今、自分に必要なスキルは何だと思う?」
「3年後の自分から振り返って、今の自分にアドバイスするとしたら、何て言ってるかな?」

まとめ

メンバーを直接変えることはできませんが、管理職側の「関わり方」を変えることはできます。今までコーチングを実践してこなかった管理職の方は、これらのスキルをどんどん活用してみましょう。きっとメンバーの成長と目標達成につながるはずです。

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河村 晴美

NHKクローズアップ現代に出演した『叱りの達人』
これまで24年間、のべ15万人へ人材育成の講演研修の実績あり
営業や採用事務を経験、部下の育成などにも携わる中で「一声かけると人は
変わる」と体感。心理学などを学び、キャリアコンサルタント、コーチング
の資格を取得。部下育成研修などで講師を務める中「ほめるだけで人っての
びるのかな」という参加者の管理職の言葉から、ほめるの対義語である『叱
る』の意味を考えるようになる。自身もパワハラされた経験から、ただ怒鳴
ったりダメな点だけを伝えるのではなく「敬意と厳しさを両立させて、感謝
される叱り方」を具体的に伝えることで、パワハラのない社会を作りたいと
活動を行っている。京都女子大学卒
叱りの達人協会(有限会社ハートプロ)

【書籍】
「やる気をONする叱り方」(PHP研究所)等多数あり
【メディア出演】
日本経済新聞、読売新聞、産経新聞、朝日新聞、奈良新聞、NHK、
読売テレビ、関西テレビなど多数。
KRY山口放送ラジオ『どよーDA』月1回のレギュラー出演中
【趣味】
落語鑑賞や宿坊体験、3歳の頃より母親から指南された書道

 

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