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管理職ラボ

部下のキャリア形成支援のために、管理職が心がけておくべきこと

生き方・働き方の価値観が多様化し、転職だけでなく、副業・複業・地方へ拠点を移してフルリモートなど、自分らしい生き方・働き方を実現する選択肢も増えました。多くのビジネスパーソンが、自身のキャリアについて大なり小なり悩んでいます。

 

部下がキャリアに悩んでいる時、管理職として何をすべきなのか。実は、管理職が部下のキャリア支援をすることは、より良い組織への成長にもつながるのです。 の記事では、部下のキャリア形成     支援をすることの     メリットや方法、押さえるべきポイントを解説します。

キャリアとは何か?

まず、キャリアという言葉の定義から。キャリアとは、職場・家庭・地域など、他者や社会で担う立場や役割を果たす過程で積み重ねていく、価値観・知識・経験・スキル、人間性です。

「キャリアを形成する」とは、年収をあげること、知名度の高い企業へ転職するというような狭義の意味ではなく、価値観・知識・経験・スキルなどさまざまなものを積み重ねていくプロセスを指しています。また、人間性の向上も含まれているため、自己研磨、自己研鑽の継続的なプロセスと捉えることもできます。誰もが感じる「人生を豊かにする職場で働きたい」「働きがいがある仕事をしたい」という気持ちも、キャリアを形成する第一歩です。

一昔前は、年功序列・終身雇用を前提とし、就職ではなく「就社」とも呼ばれる価値観でした。しかし現在は、一部のスタートアップをはじめ、そもそも終身雇用を想定していない企業も増えています。働き方の選択肢・価値観が多様化し、自分のキャリア形成について考えることが当たり前の時代となっているのです。

環境に応じて柔軟にキャリアを変えるという「プロティアンキャリア」という考え方もあります。詳しい記事はこちら

部下のキャリア形成を支援する4つのメリット

では、管理職が部下のキャリア形成を支援するメリットとは何でしょうか。

1つ目は、部下自身が現在の職場や業務への納得度を高めることで、仕事の生産性が上がることです。

誰しもが自分のキャリアを考えなければならない時代、キャリア形成にプレッシャーを感じることもあります。特にジョブ型の人材マネジメントが進んでいる欧米とは異なり、ジョブローテションに代表されるように、会社側がビジネスパーソンの社内キャリアを積極的に支援してきた日本では、「キャリアは自己責任」という考え方はまだ馴染みがありません。

キャリアを考えることが不安に繋がってしまうと、目の前の仕事に集中できず、仕事のパフォーマンスにも悪影響がでます。そこで、管理職がキャリア形成を支援することで、仕事でも良いパフォーマンスを発揮できるのです。

2つ目は、管理職と部下の信頼関係が深まることです。

キャリアの相談相手を見つけるのは非常に難しいもの。例えば友人に相談しても、共感しあうことはできても、解決策は出てきにくいでしょう。親に相談しても、時代が異なるため、参考にしづらいアドバイスが返ってくるかもしれません。そんな時に、上司が自分のキャリアについて親身に相談に乗ってくれたら、確実に信頼関係が深まります。

この信頼関係は、それぞれのキャリア形成の中でたとえお互いの会社が変わったとしても強固なまま維持されます。社外にでた元部下たちは、頼れる外部パートナーネットワークになり、別の形で協働することが可能になるのです。

管理職とて転職する可能性はあります。だからこそ部下とは、社内のみで完結する関係性にとどまらず、長く続く関係性が築くことができれば、自身の人生のプラスにもなるかもしれません。

管理職とメンバーの信頼関係構築の記事はこちら

3つ目は、急な離職の防止になることです。

キャリア形成の支援によって、現業への納得度が高まり、上司との信頼関係も強固になっていれば、「来月末で辞めます」という急な離職報告は無くなります。最終的に離職することになったとしても、キャリアデザイン支援を行った方が在籍期間は長くなる傾向があります。

4つ目は、人が集まる組織になることです。

部下のキャリア形成を支援すると、離職者が増えることが心配になるかもしれません。たしかに、短期的にはそのようなリスクが生まれることはあります。しかし、スキルアップやキャリアアップが実現できる会社やチームには、中長期的には必ず人が集まってくるものなのです。

効果的なキャリア形成支援の方法

では、部下のキャリア形成をどう支援したら良いのか。
シンプルな3ステップを紹介します。

STEP①:自己分析
管理職ラボ第3回の記事で管理職自身が自己分析する必要性をお伝えしましたが、メンバーに対しても、自己分析の実施を提案しましょう。メンバー自身のWill/Can/Know+Personalityや、これまでに経験してきた業務、得られた知見やスキルを棚卸しします。転職意向が無くとも、職務経歴書という形式にまとめてもらって、それを一緒に眺めながら「どんな経歴をつくっていこうか?」と対話するのもオススメです。

自己分析の手法についての記事はこちら

STEP②:「なりたい姿」の明確化
現状を理解したら、何を・いつまでに・どのくらい変化させたいのかを具体的に考えます。「3年後にExcelレベルのデータ分析力を身に着けたい」「1年後に新規事業企画の起案をして、いずれ事業責任者になりたい」「半年後のワークショップのファシリテーション役を担えるようになりたい」等々、具体的に考えてもらいます。もちろん「3年後に年収100万円アップ」という年収目標でも構いません。なお、市場において需要>供給になっているスキルは習得すると年収をあげやすいので、「なりたい姿」を検討する際の参考にするのも良いでしょう。

STEP③:時間配分の最適化
「なりたい姿」が明確になったら、それを実現するために、どのような時間の使い方をすべきかを考えます。目標を設定しても、実際のアクション、すなわち時間の使い方が変わらなければ現実は変わりません。そして、この時間の使い方を考える際に、自社だからこそ経験できる仕事、得られる知識、知り合える人材、捻出できるスキルアップの時間、利用できる制度や研修機会などを提案できると、自社でキャリアを積む価値を実感してもらいやすくなります。

ほとんどのメンバーは、管理職ほど会社のリソースや機会に精通していません。また、業務内容や働き方について交渉余地がないと誤解しています。部下がそのような視野狭窄の状態で仕事をしていると、いつの間にか未来が見えなくなり、相談することなく転職意思を固めてしまったりします。それを防ぐために、折に触れて会社という場のメリットを伝えることは大切です。

部下のキャリアパスに合わせたマネジメントを

ところで、部下のキャリアデザインを支援していると、「悩む前に、まずは地力を高めようよ」と言いたくなる場面に出くわします。部下の自己評価が高すぎるために起こる現象でもありますが、そもそも部下がキャリアアップの原理原則を知らない可能性も考えられます。下の図をご覧ください。

キャリアパスを大まかに分類すると、①管理職として経営を目指すコースと、②特定領域のスペシャリストを目指すコースに分かれます。

①管理職コースの場合、役職があがればあがるほど現状業務の維持・改善よりも、改革・創造業務の評価比重が高まります。例えば、新規事業開発・チェンジマネジメント(組織変革を成功に導くマネジメント)・BPR(業務改革)などが代表的です。

②スペシャリストコースの場合は、特定領域におけるエースプレイヤーに到達した後に、自身の知見を育成に活かす、社内外に発信する等によって、影響範囲を広げていくことが期待されます。

どちらのコースを目指すにせよ、改革・創造・専門家育成・知見発信などの業務はすべて、知見はもちろんのこと、高いスキルが必要です。スキルが無ければ、キャリアアップはできません

そして、知識は手に入れやすいものですが、成果をだせるスキル習得には一定の時間が必要です。頭でわかっていることと、実際に成果をだせること・問題解決をできることは別次元。自分自身のスキル不足や、新しいスキル習得の大変さを理解していない人は多いものです。皆さんのメンバーにその兆候が見られたら、「まずは●●スキルを身につけるべき」と具体的にアドバイスしてあげてください。その上でスキル習得のために有効な書籍・研修の紹介や、スキル開発につながる役割や業務のアサインメントなどを、管理職としてフォローしてあげましょう。

もし、自分が具体的なアドバイスをできないと感じたら、部下が目指すキャリアを積んでいる人を探し(社外も含めて)、その方・自分・部下の3名で意見交換する場をアレンジして、部下と一緒に自分も学んでいくと良いと思います。

まとめ

キャリアに絶対的な正解はありません。部下それぞれに積み重ねたい知識・経験・スキル、そして大切にしている価値観や優先順位があります。それらを明確にするサポートを行って、会社内での生産性を高めながら、会社が変わっても続く信頼関係を築いていきましょう。



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「管理職とメンバーの信頼関係構築のポイント」
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監修者:中野 崇

Zoku Zoku Consulting 代表 ビジネスプロデューサー/ビジネスデザイナー

早稲田大学教育学部卒。良品計画を経て2005年にマクロミルへ。上海支社の立ち上げ(事業部長)、韓国支社の経営再建(取締役)、SaaS型事業開発・統合マーケティング部門の立ち上げ・グローバルMission/Vision/Value策定(いずれも執行役員)、電通マクロミルインサイトのCEOなど、第2創業期の要職を歴任。課長・部長・執行役員・取締役・代表取締役を経験し、延べマネジメント人数は500名超。2018年よりZoku Zoku Consultingを開業。豊富なマネジメント経験と新規事業開発経験を活かし、新規事業開発×チームビルディングを同時に実現する伴走型・OJT型のコンサルティングを提供している。

https://zokuzoku-design.co.jp/



【著書】『管理職のための数値化技術(日経BP)』、『多彩なタレントを束ね、プロジェクトを成功に導く ビジネスプロデューサーの仕事(すばる舎)』など

【Udemy】『現状分析からはじめるマネジメントの超基本』、『リモートワーク時代のマネジメント術』など多数。

一連のコンテンツを通して、自分らしい生き方・キャリアを実現する、ビジネス基礎スキルの向上ノウハウを発信している。

 

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