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仕事にまつわる体験談

“営業職の上司”ではなく、
“キャリアの上司”として指導する

キャリア職で活躍する女性たち。キラキラと働く裏で、これまで体験してきた仕事上の壁は数知れず。どんな壁に遭遇し、どうやって解決したのか。リアルな体験談から、働く女性の悩み解決のヒントを探ります。

自分より経験豊富な部下を指導しなければならない!

今回、お話を聞いたのは大手企業で働くHさん39歳。以前はシステム関連の企業に勤めており、現在の企業には中途入社5年目。3人の部下を抱えるリーダー職にも就いています。3歳のお子さんの育児中で、時短勤務中でもあります。

「私は個人に対する営業職なのですが、お客様には、時短勤務であることはあえてお伝えしないようにしています。もちろん、会社としては子育てしながら働く環境は整っていて、時短勤務も歓迎されています。でも、お客様にとっては正直関係のない話。時短勤務とお伝えすると気を遣われすぎてしまうと思うので。例えば、お客様がいますぐに私に伝えたいことがあっても、私に配慮していただくあまり遠慮してしまい、関係値構築に影響が出てしまうのではないかと思っています。

とはいえ家族の時間は確保しなければなりません。だからこそ、先回りが大切。お客様とのスケジュール調整や、必要資料などは言われる前にこちらから提案し、うまく時間をコントロールするようにしています」

仕事と家庭をうまく両立するHさんの働き方を理想だと思う方も多いはず。実際、部下3人はフルタイム勤務だが、関係も良好だといいます。

「ただ、リーダー職に就任した4年前はマネジメント面で悩みはありました。当時、私の年齢は35歳と管理職に就くには適齢期。でも、転職して1年目。以前はエンジニアや人事として働いていたので、営業としての自分の中での『勝ちパターン』が見えていない時期だったんです。なので、年下ではあるけど営業としての経験は私より豊富な部下に、何を教えられるのだろうと、不安でしたね」

【解決策】仕事術ではなく、部下のキャリアを導くための指導をした

では、実際にはどのように部下とコミュニケーションをとっていたのでしょうか。

「まずは部下と同じ方向を向くために、部下の人生がより良くなるためには今どうすべきかを導くようにしました。仕事でどのようにキャリアアップしていきたいのか、また時には仕事外での『こうなりたい』という話も聞いて、部下のキャリア形成を一緒に考えましたね。

部下の人生の方向性を考え、ゴールを握ることが、当時の私ができる上司としての役割だと感じていたので。じゃあそのためには今この営業で結果を出そう、という逆算で指導していました。

営業職としての上司、というよりももっと根本的な『社会人としての上司』という立場をとり、指導することを心がけていました。その上で、自分の中で営業職としての経験や必勝法などは随時シェアして、数字の目標達成も忘れないようにしながらですが」

部下の立場からしても、自分のキャリアまで親身に考えてくれる上司は信頼するもの。なぜこのような指導法に行き着いたのか、そこにはHさんの実体験から導いた『ポリシー』が影響していました。

「転職をした34歳の時は、自分のキャリアにとても悩んでいました。前職では総合職だったので、エンジニアから人事に異動したものの、次どこの部署に行って何をするのか分からない環境。『自分は何のために働いて、何がしたいのか』わからないまま30代中盤に突入しそうだったので、とにかくもがいていました。現実逃避的に仕事に関係のない資格をとったこともありましたよ(笑)。

そこで自分を見つめ直すためにも転職活動を開始。自分の『働く軸』を徹底的に考え抜き、出た答えが『人に寄り添うこと』だったんです。

だから部下に対しても寄り添い、本人たちのベストを探す。これは自分の中で営業法が確立された今でも続けています。部下のやりたいこと、できることを優先すれば数字も自然と後からついてきますし、成績も安定するんです」

最後に、そんなHさんに、同じキャリア職の女性にエールをもらいました。

「30代・40代って、自分が意図していなくても自然とキャリアの方向性が決まってしまう年齢だと思います。仕事での出世ルートもそうですし、そこにプライベートでの結婚・出産なども関係してきます。

身動きがとりづらい時期ではありますが、そういう時こそあえて自分の得意なことや好きなことを振り返る時間を作るべきだと思います。『こうなりたい』という理想を常に思い描くことで、自分らしく長く働き続けられるのではないかと思います」

Hさんのような、上司が部下のサポーター的な立場をとる態度は、はじめて管理職になった時や、部下との信頼関係構築に悩んだ時に参考にしたいエピソードです。ぜひ指導に取り入れてみてください。

(取材・執筆:菱山恵巳子)

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