『私なんて、と自分を小さく見せなくていい』<br>SBIインベストメント・執行役員 加藤由紀子さんのイメージ画像

マイキャリアストーリー

『私なんて、と自分を小さく見せなくていい』
SBIインベストメント・執行役員 加藤由紀子さん

女性なら誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

第8は、SBIインベストメント株式会社 執行役員 CVC事業部長加藤由紀子さんをインタビュー。マネジメントポジションに就く中で、心がけているコミュニケーションや仕事への取り組み方を伺いました。 

※所属・組織等は2023年3月取材時の情報となります。

加藤 由紀子さん のイメージ画像

加藤 由紀子さん

SBIインベストメント株式会社 執行役員 CVC事業部長

SBIインベストメント株式会社にて20年にわたりベンチャーキャピタリスト経験を有する。アイエヌジー証券会社投資銀行本部にてコーポレートファイナンス業務に従事後、2002年、SBIグループのバイオ・ヘルスケア専門VCバイオビジョンキャピタルの立ち上げに参画。2005年にSBIインベストメント株式会社に転籍後、投資部門にて国内外のベンチャー投資育成、経営支援等に携わる。2016年4月より、事業会社と共同で運営するCVCファンドの運用、オープンイノベーション支援に従事。2020年より執行役員に就任。

2019年3月より文部科学省 地域イノベーション・エコシステム形成プログラム推進委員会委員、地域イノベーション・エコシステム形成プログラム評価委員会委員を務める。

働き続けるキャリアの土台として、金融業界を選んだ

ベンチャーキャピタリストとして、20年超のキャリアを持つ加藤由紀子さん。SBIグループのベンチャーキャピタル(以下、VC)であるSBIインベストメントで、事業会社と共同でファンドを運用するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業部を束ねています。
CVC事業部が立ち上がった2016年には3人でスタートしたチームも、現在は20人。20社の事業会社とファンド運用を進めています。
前職はヨーロッパ系の投資銀行で、コーポレートファイナンス業務を担当。企業価値を高めるために、資金調達や事業投資、IR支援などを行っていました。 数ある選択肢の中から金融を選んだ理由は、「幅広くいろんな業種を見れるから」だったといいます。
「学生時代から、長く働き続けたい、という思いがありました。結婚や出産や育児、介護など、社会人になればどんなライフイベントが起こるか分かりませんし、自分自身もいずれはシニアになっていきます。自分がどんな状況になっても働いていたいと思い、そのために、どこに行っても通用するようなナレッジを身につけておいた方がいいだろう…と考えていました。

金融は、私たちが生きていく上で切り離せないもので、あらゆる事業を支える根幹です。金融業界に行けば幅広い業界に触れ、共通した知見がたまっていくだろうと思ったんです」
前職の投資銀行から、2002年にSBIグループに転職を決めた加藤さんですが、当時はバイオ・ヘルスケア専門のVC立ち上げに参画するというフェーズでした。 今ほどスタートアップが多くなかった当時、VCのどこに惹かれたのでしょう。
「前職で大企業のエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)を中心に行っていたのですが、その中にベンチャー企業との出会いがぽつぽつと生まれていました。例えば大学発ベンチャーが、それまでにない新しい技術やサービス提供を経て成長し、IPO(株式上場)して育っていく。そんな過程を見る中で、こんな風に新しくチャレンジしていく企業の支援に携わりたいと思うようになりました」
新しいものへの好奇心と、幅広く手触り感のある仕事をしたいという思いが重なったと話す加藤さん。ただ、VC自体の社会的認知度もスタートアップ企業の認知度も低かった環境に、不安はなかったのでしょうか。
「SBIグループも当時はとても小さな規模でしたが、オンラインの金融サービスの事業展開などを進め、急成長していくのが目に見えていました。VC立ち上げという経験もなかなかできることではありませんし、スタートアップに特化していくのは面白そうだった。自分も組織の成長に合わせて成長していきたくて、まずはやってみよう、という気持ちでしたね」

スタートアップに伴走し、見たことのない景色を見に行く

成長を見込んで投資を決めても、事業が順調に拡大するとは限らないのがVCの世界。その難しさに落ち込んだり、後悔したりした経験は数知れないと話します。
「10件の投資案件があったとして、10件とも成功することはあり得ません。一生懸命支援を続けていても、残念ながらうまくいかない企業もある。そのたびに、『自分の支援は本当に充分だったのか』『あのときの判断は正しかったのか』と自問自答を繰り返します。1年を通じて、大半の日々は、うまくいかないなと悩んでいるかもしれません」
投資を決めた責任に向き合うハードな仕事ですが、長く続けてこれた理由はどこにあるのでしょう。
「きちんとエグジットできた(IPOやM&Aなどによって投資資金を回収できた)ときは、やってきてよかった、報われたなとほっとします。それはVCとして追うべき成果の一つではありますが、短くて3年、長くて10年以上の時間がかかり、すぐに結果が見えない難しさがあります。

でもそもそも私は、スタートアップ企業に伴走するという仕事そのものが、とても好きなんです。私には起業家になれるほどの才能はありません。でもVCであれば、新しいものを生み出そうとしている起業家と同じ目線に立って、自分では絶対に見られなかった景色を見ることができる。それは、とても貴重な体験だといつも思っています。

私は新たな製品やサービスを手掛ける研究開発型のスタートアップに投資することが多いので、これまでの常識や過去の分析だけで未来を予想することはとても難しいんです。ですから、現状で何ができているかをファクトベースで情報収集し、どのような仮説が立てられるのか、成長戦略を描けるのか、またはどこにどんなリスクがあるのか、そのリスクを取るべきか否かを判断していくしかありません。

まだ芽の出ていない事業を追いかけていけるのは、この仕事の醍醐味。それだけ得難い経験をしているのだから、いいことも悪いことも起こるよね、と思えるのかもしれません」

強さを押し出さないリーダーシップだから、メンバーが伸びていく

現在は、2016年から立ちあがったCVCファンドの運用事業部で部長ポジションと、執行役員を務める加藤さん。ポジションを上げて挑戦を続けるご自身のキャリアをどう捉えているのでしょう。
「立場が上になっていくということは、それだけ自分が手掛けられる仕事のキャパシティが広がっていくということ。仕事は自分一人で頑張っていても限界があるけれど、周りと連携していくと、できることが増えていきますよね。VCの仕事が好きで、もっとできるようになりたい…と思っていたからこそ、ポジションが上がればチャレンジできる範囲が広がっていいな、とポジティブに捉えていました。

ただ、2020年に執行役員を任命されたときは、『私でいいんですか?』と思いました。ほかにも適任はいるでしょうと、具体的な名前も次々浮かんできました。

でも、一呼吸おいて『選んでいただいたのだから、前向きに考えよう。責任をもってやってみよう』と思い直しました。だって、チャンスはそう訪れるものではありません。これはチャンスなのかもしれないと一瞬でも思ったのなら、自分なんて…と卑下することはない。まずはやってみてから、できることを増やしていこうと思いました」
メンバーを束ねるマネジメント側としては、「相手の話をきちんと聞いて、フォローしていく」という加藤さんなりのスタイルがあるといいます。
「私は、強いリーダーシップで周りを引っ張っていくようなタイプではありません。 私自身が、キャピタリストとして動いていたとき、『まずは自分で考えて、決めて、動いていく』というやり方が得意であり、好きだったんです。メンバーも今、それぞれが投資案件を持ち、自律的に動いています。一人ひとりを尊重して、何をやりたいと思っているかに耳を傾け、それを実現するためにどんなフォローが必要かを考える。そういうリーダーでありたい、と思っています。
ですから、メンバーから『この案件はこう動いたらいいと思うのですが、どう思いますか?』と、きちんと自分の考えや仮説を持った上で相談に来られると、すごくうれしい。自分の“弱い”リーダースタイルでも、成長を後押しできていると実感できるからです」
自分が好きだと思える仕事に就き、実績を上げ、マネジメント力を発揮して、キャリアアップを続けていく。そんな風に加藤さんの働く姿を捉えると、「私には真似できない…」とつい思ってしまいます。 そう伝えると、「私もまだまだ発展途上ですよ!」という明るい言葉が返ってきました。
「毎日、もっと自信を持てるようになりたいな…と思っているんです。VCという仕事も、マネジメントの仕事も、正解がありません。自分なりに、これでいいのかなと思えるようになるまで、いろいろやってみるしかないのかもしれません。

どんな仕事にも、喜びはあると思うし、それ以上に苦労もたくさんあります。だから、苦労してもやった甲斐があると思える仕事かどうか、大変な思いをしてもまたやりたいと思える仕事かどうかは、いっぱい苦労してから『やってきてよかった!』という瞬間にぶつかるまでは、分からないもの。

今向き合っている仕事が、好きな仕事なのか、やりたい仕事なのか分からなくて、もがいているのなら、それは前に進んでいる証拠なんじゃないかなと思っています」


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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子

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