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マイキャリアストーリー

『事業への思いが、協力し合うチームを作る』
imperfect 代表取締役社長 佐伯美紗子さん【後編】

誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は前回に引き続き、imperfect株式会社 代表取締役社長の佐伯美紗子さんにお話を伺いました。

佐伯 美紗子(さえき みさこ)さんのイメージ画像

佐伯 美紗子(さえき みさこ)さん

imperfect株式会社代表取締役社長

社会課題への意識が、少しずつ広がっているのを感じる

― impefectの設立から4年目の2022年8月に、代表取締役社長に就任した佐伯さん。立ち上げ以降、ウェルフード マーケット&カフェ「imperfect 表参道」の企画運営やマーケティングなどを担当してきましたが、「自分が代表を務めることになるとは思いもしなかった」と話します。
「前任から、『次の社長は佐伯にお願いしたい』とバトンを渡されたんです。経営を学んだこともなく、テクニカルな部分で務まるのかは不安がありました。でも、『imperfectのことを一番大事に思っている人が社長をやるべきだと思うから』と言ってもらえて、スッと納得できました。代表をやりたいという積極的な考えはなかったけれど、外部から来た別の人が就くのは悔しかった。私が誰よりもこの事業を伸ばしたいと思っているんだ、と素直に思えたんです」
― 商品を直接消費者に届けることで、カカオやコーヒー豆の生産者を取り巻く現状を知ってほしい。最近では、その思いが消費者に届いていることを実感する機会が増えているといいます。
「あるとき、小学生のお子さんとお母さんが表参道店に来てくれたことがありました。学校の授業でサステナビリティについて調べている中でimperfectを知り、『お店に連れて行ってほしい』とお子さんからお願いされたのだそうです。お母さんから『佐伯さんですよね?』と話しかけてもらって、ブランドが少しずつ認知されてきたことをとてもうれしく思いました」
― 世界各国の生産者との交流も、事業を進める上で大切にしていることです。ブラジルやベトナムのコーヒー農園の方に、実際に来日、来店してもらったり、ガーナやコートジボワールのカカオ農家の方に、チョコレートがどのような形で売られているか実商品や写真を送ったり。「こんなに丁寧に扱ってくれて、素敵な商品にしてくれてありがとう」と感激のコメントをもらうことも多いといいます。
「お客様からの投票プロジェクトの一環として行った、ブラジルの女性のエンパワーメントに向けた取り組みでは、女性たちが『自分たちが作るコーヒーをもっとブランディングしていきたい』『価値を見出してほしい』と発信するようになりました。経年でプロジェクトの様子を見てきたので、意識の変化を感じられたことに、心から感激しましたね」

「生産者を取り巻く環境を改善する」
大事にしてきた価値観はぶらさない

― 経営者としてメンバーを束ねながら、「毎日が決断の連続」と話す佐伯さん。コミュニケーションの中で、判断の基準をぶらさないことをもっとも大事にしていると話します。
「imperfectは、生産者の環境をより良くしたい、という思いで始まった事業です。メンバーからはさまざまな提案が上がってきますが、『本当に生産者の皆さんが求めているものか』という軸が揺らいでは、事業の本質が揺らいでしまう。メンバーには、しつこいくらいに、『誰のための事業なのか』を問うようにしています」
― imperfectでは、多くの企業と一緒に「世界の食と農を取り巻く社会課題の解決」に取り組むことを目指しています。そのために掲げている活動テーマが、「Do well by doing good.」(=いいことをして世界と社会をよくしていこう)。この思いに賛同してくれた企業から予算を預かる形で、プロジェクトを組成、運営しています。
「お客様から、『この予算でどういうプロジェクトができるか』と相談を受け、提案することも多いです。ただ、今はエネルギーをはじめ、世界中であらゆるものが値上がりしていて、前年に行ったプロジェクトと同じことをしようにも、1.5倍の予算がかかってしまうことがあります。プロジェクトを組成する側としては、お客様にどう説明するか、現地の生産者とどう商談するか、双方向のコミュニケーションが必要になる。そんなとき、imperfectとして大事にしているのは、『現地との交渉はしない』ということです。彼らが必要とするサポートをするために事業を広げているのに、予算ありきで値引きを依頼するのは搾取になってしまう。本質的ではありません。
お客様に対して、値上がりの説明責任を果たすことは欠かせません。その上で、予算が据え置きであればプロジェクト規模を縮小するか、予算を多くいただいて前年と同じことをするのか、いずれかの判断を求めていく。私たちが理想とするのは、作る人も食べる人も、その間で働く人たちもみんなが対等で、笑顔でいられる社会。作ってくれるから食べられる、という当たり前の考えを広げていきたいんです。メンバーにも『立ち戻る判断基準は、生産者視点にある』ということを伝え続けています」
― 商社から事業立ち上げ、そして代表就任へ。もともと「社長になりたい」と思っていなかったという佐伯さんは、現在の自身の立場をどう捉えているのでしょう。
「会社を立ち上げたときも、“やりたいことを実現するための最適な方法”が別会社を作ることだ、という感覚でした。私が社長についたことで、このように取材してもらって発信の機会が増えて、imperfectが知られる一つのきっかけになるのなら、どんどんうまく活用していきたい、と思うんです。社長はポジション名であり、あくまでも役割。事業をより成長させるために、最終的な責任者という役割を与えられている、という気持ちでいます」
― 就任時の不安をどう乗り越えてきたのかと聞くと、「今も不安だらけで自信はないまま」と笑います。
「でも、やってみるとみんなが助けてくれるんです。事業を通してこんなことがやりたい、と言い続けていると、共感してくれる人が増えて、その可能性にみんなが賭けてくれるようになる。困っているなら助け合おう、という思いが広がっていくのを感じています。
全部自分で背負わなくちゃと思うと不安になるかもしれませんが、新しいポジションを打診されたということは、“できる可能性を見出してくれた”ということ。組織は一人じゃないので、やってみると必ず、助けてくれる人が現れると思います」

「前編記事」





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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子

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