『周囲のフィードバックを受け入れ、自分の強みを知る』<br>アズパートナーズ・人事 可知雅子さんのイメージ画像

マイキャリアストーリー

『周囲のフィードバックを受け入れ、自分の強みを知る』
アズパートナーズ・人事 可知雅子さん

誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は、株式会社アズパートナーズ 経営管理部人事グループ ゼネラルマネージャーの可知雅子さんをインタビュー。海外営業から人事へ、どのようにキャリアを選択してきたのか、お話を伺いました。

可知 雅子さんのイメージ画像

可知 雅子さん

株式会社アズパートナーズ  経営管理部人事グループ ゼネラルマネージャー

慶應義塾大学法学部卒業。大手印刷株式会社で海外営業を3年経験後、退社し、大学(通信制)で幼児教育を学ぶ。並行して不動産ベンチャーで総務・人事を経験し、人事領域のキャリアをスタートさせる。大手人材会社を経て、2014年に株式会社アズパートナーズに入社。

幼児教育の学びを通じて、「人事のプロ」を目指す意志が固まった

― 介護付きホーム(有料老人ホーム)やデイサービスなどの介護事業を手掛けるアズパートナーズで、人事業務全般を担う可知雅子さん。2014年の入社後、総務人事部マネージャーとして、新卒・中途採用から教育・研修の設計や運用のほか、備品管理やレイアウト変更といった総務業務も幅広く担当してきました。 人事のキャリアが長い可知さんですが、ファーストキャリアはまったく別の領域だったといいます。
「幼少時代をアメリカで過ごした経験から、将来は海外と日本を繋ぐパイプ役になりたいと考えていました。就職活動では、商社やメーカーの海外営業職に絞り、新卒で大手印刷会社の海外営業に就きました。
ただ、3年やって感じたのは、自分は営業で数字を稼ぐ事に興味が持てなかったということ。沢山の人と出会い接する事は楽しかったのですが、大手企業の一営業担当ではなく、私にしかできないほかの道を考え始めていました」
ー そこで可知さんの興味を引いたのは、「幼児教育」という新たなジャンルでした。きっかけは、幼稚園を立ち上げている女性との偶然の出会いだったそうです。「自分も幼児教育を学んで理想の幼稚園が作れたらいいな」と考え始めたといいます。
「子どもたちと一緒になって遊ぶことがすごく好きで、成長していく姿を見るのが純粋な喜びでした。
シュタイナー教育(※)をはじめ、さまざまな考えに基づいた幼稚園があると知り、その奥深さに惹かれていきました。幼児教育をきちんと学び、自分の幼稚園を経営して、一人ひとりに合った育成がしたいと考えるようになりました」
(※)オーストリアの哲学者、ルドルフ・シュタイナー博士が提唱した、子どもの個性と感性を尊重する教育法
ー 3年勤めた会社を退社し、玉川大学教育学部の通信教育課程に進んだ可知さん。教育実習を経て、教職免許も取得しましたが、その後は企業の人事として学んだことを生かす様になりました。どんな経緯があったのでしょう。
「夜間の授業に通いながら、日中は知り合いが勤務している不動産ベンチャーの会社で総務の仕事をしていました。社員30人ほどの小さなベンチャーで、最初はお手伝い程度でしたが、大学で教育学を学ぶ中で、徐々に人事や採用の業務も任される様になりました。3年間の通信課程が終わるころには、その会社で初めての新卒採用を担当することに。就職サイトへの掲載やホームページの更新、選考プロセスの設計など、手探りながら進めていき、初年度は2人の新卒採用が決まりました。採用したからには入社後の教育制度や研修内容も考えようと、さらにチャレンジの範囲が広がり、人事の仕事がどんどん面白くなっていきました。
そもそも人の成長に関心があり幼児教育を学び始めましたが、結果的には企業の人事として、より幅広く人に関わる専門領域に進もうと心が決まりました」
ー 人事のプロを目指すからには、網羅的なスキルが必要だと考え、給与計算や社会保険などの労務管理、人事評価制度の設計まで、自ら希望して経験を重ねた可知さん。9年半在籍した間に、約30人だった社員は300人まで増えていきました。
「ベンチャーだったからこそ、人事が社長の右腕のようなポジションで、沢山経験を積ませてもらいました。組織の拡大とともに、分社化したり新しい会社を立ち上げたりとチャレンジも多く、気づけばあっという間に組織が大きくなっていた感覚でしたね」

人が事業の根幹になっている「介護」業界こそ、人事の力が試される

ー その後、人事のプロとして更に経験を積むために、ベンチャー企業を飛び出し大手人材会社に転職。事業部の人事マネージャーを経験したのち、アズパートナーズへの入社を決めました。
「アズパートナーズを選んだ理由は、『自分の経験やスキルを、困っている会社を助けるために生かしたい』という思いが強くあったからです。
私は、周りを支援することにモチベーションを感じるタイプで、小さい頃から学級委員や部活の部長など、周りがやりたがらないまとめ役をよく任されていました。みんなが心地よく過ごすにはどうしたらいいかを考えて動くのが苦にならず、『自分だからできる役割』を担うことが好きでした。
当時の介護業界は、採用マーケットにおいてイメージは良くなく、IT化もまだまだ遅れていましたが、だからこそ、私にもできることがあると思ったんです。ただ、ものを売る会社ではなく、従業員一人ひとりがサービスを提供しているのが介護・福祉の世界です。従業員の成長がビジネスの成長に直結していて、人が事業の根幹になっている、人事の力が試される環境だと感じました」
ー 何よりも決め手になったのは、最終面接で社長から「この業界を変えていきたい」「新卒で、学生から選ばれる業界になりたい」と言われたことでした。
※植村社長は、(一般社団法人)全国介護付きホーム協会の副代表理事をしています。
「社長や人事部長から『まだまだこんな課題がある』『こんな会社にしていきたい』という熱い思いをぶつけられ、自分が経験してきたことを生かせる土壌があると思いました」
ー 入社後は、紙運用だった稟議書の承認フローを自動化させ、従業員の満足度調査を実施して組織改善につなげるなど、さまざまな施策を取り入れていきました。キャリア意向調査を行い、従業員一人ひとりが描くキャリアを人事異動に反映させる仕組みも整えていきました。
「とくに力を入れてきたのは新卒採用です。
少子高齢化で、介護業界は確実に伸びていく事業でありながら、若手人材の確保は難しくなっていきます。きつくて大変という介護の仕事のイメージを変え、学生に新卒で選ばれる業界にしていくことが、私のミッションだと考えていました」
ー 採用にお金も人材も投資すると決めたトップの熱意もあり、学生一人に担当社員がつくリクルーター制を導入。可知さんが入ったころは30人だった新卒採用数は、2023年には178人入社まで増やすことができました。
「アズパートナーズの介護付きホームでは、当社独自のEGAO linkというIoTシステムを導入しています。ご入居者の状態・記録をスマホ一台で把握できる仕組みで、従業員の働きやすさを向上しています。さらに記録したデータからご入居者の状態を数値で定量的に分析して、根拠のあるケアをする『科学的介護』を目指しています。日中のどのような活動が夜の睡眠にどう影響するのか、薬が変わると体調や日常生活にどんな変化があるかなどを看護職やケアマネージャーなどとデータに基づき分析した上で、ご入居者一人ひとりのケアを考えています。そのため、採用人材にもデータの理解力やケアスタッフとしての観察力が求められるやりがいのある仕事です。
テクノロジーの力で介護の現場を変えてきた私たちの姿勢に、興味を持つ学生が年々増えています。多くの学生に対して介護の魅力を伝え、ここまで採用できるということが、業界全体にもいい影響を与えていると思っています」

周りからのフィードバックを受け入れ、自分の強みを知る

ー ゼネラルマネージャーとして約30人のメンバーを見ている可知さん。メンバーと接する上で意識しているのは、「感情的にならないこと。一人ひとりの特性に合わせた育成をすること」と話します。
「メンバーにとって話しやすく、相談しやすい人であるために、感情の起伏はないほうがいい。どんなに忙しくても向き合って話すこと、勤務内の空いている時間はメンバーの時間にすることと決めて、全員にスケジュールをオープンにしています」
ー そう考えるようになったのは、前職のベンチャーで、労務管理を担当したときだといいます。
「『キャリアを広げるために、給与計算や評価、人事制度設計に携わりたい』と希望したとき、最初は上司からノーと言われたんです。理由は、『全従業員の給与や健康状態などの機密情報を取り扱うだけの安定性がないから』。仲の良い上司だっただけに、ショックを受けました。
人事として信頼され、任せてもいいと思われるためには、周りと明るくコミュニケーションを取れるだけではダメだ。これまでの振る舞いを改め、感情を保ち、周囲に安心感を与えられる人になろうと自分自身を変えていきました。
1年後にようやく任せてもらえましたが、あのとき自己変革を突きつけられたからこそ、メンバーが安心して相談できる存在に近づけたのかなと思っています」
ー マネージャーの面白さは、「一人ではできないことを組織で取り組める」ところだと話します。個々の成長がチームに影響を与え、チーム全体の目標達成につながり、全員で喜べる。その影響の連鎖をどう生み出すかを考え、カタチにしていくことが大きなやりがいなのだそう。 そのベースにあるのは、人と組織の変化を楽しむ可知さんの姿勢です。 「人事のプロでありたい」と道を定めて動いてこられたのはなぜだったのか。そう聞くと、「やってみて、フィードバックをもらう中にヒントがあった」という答えが返ってきました。
「何でもやってみることが大事だなと思うんです。人に会ってみる、薦められた本を読んでみる、動画や映画を観てみる、講演会に行ってみる。そんな小さな行動を重ねていくと、自分の好きな領域が見えてきます。
周りから自分のフィードバックをもらうことも大切にしています。第三者から『こういうことが得意だよね』と言われることの中に、自分では気づかない強みや弱みがあります。
海外営業の仕事をやめて、幼児教育の世界に進んでみようと思ったのも、友人たちの『子どもに好かれるし向いているよ』という声がきっかけでした。未経験から始めた人事・総務の仕事も、食わず嫌いにならずにやってみようと動いたから、好きなところが見つかりました。

選択肢に触れなければ、自分の価値観や大切にしている時間は見えてこない。今は『何がやりたいのか分からないな』と思っていたとしても、動きまわって触れていくことで、自分なりの道に近づいていくのだと思います」








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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子

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