ビジネスでの“断り方”のコツ。成果を出す管理職の「NO」の使い方
ビジネスにおいて断り方に悩む管理職は少なくありません。顧客や上司、社内メンバーからの依頼に対して、「断ったら関係が悪くなるのでは」「評価が下がるのでは」と不安を抱え、つい全てを引き受けてしまう…そんな経験はないでしょうか。
本記事では、『Noを伝える技術』(翔泳社)の著者であり、数々の企業でプロダクト開発を牽引してきた飯沼亜紀さん監修の元、関係性を壊さずに「NO」を伝えるビジネスでの“断り方”を解説します。前後編、前編です。
監修者:飯沼亜紀(いいぬま あき)
新卒でソニーデジタルネットワークアプリケーションズに入社。コンシューマ向けスマートフォンアプリの企画を担当。その後、ユニクロおよびファーストリテイリングでは新規事業立ち上げ、EC・デジタルコマース領域で国内外のプロダクトマネジメントを推進した。日本マクドナルドではモバイルオーダー立ち上げをはじめとするデジタル施策全般を統括し、店舗オペレーションと融合した新しい体験を構築。キャディではプロダクトマネジメントに加え、プログラムマネジメントやプロダクトデザイン組織もリードし、プロダクトと組織づくりの双方に取り組んだ。2024年に独立し、現在はスタートアップから大企業まで幅広い企業のプロダクト開発や新規事業開発を支援している。著書に『Noを伝える技術』(翔泳社)。
全て「YES」では、仕事を頑張っても報われない状況に陥る
- ービジネスにおいて、適切に断ることの価値とは?
- 飯沼:やることを極限まで削ぎ落とせるので、本来やるべきことにフォーカスを当て、結果が出ることだけができる状態に近づけます。 また、無理な約束をしないで済むことで、後から「やっぱりできませんでした」と信頼を損ねることがなくなりますし、周囲にしわ寄せが行くことも防げます。
- ー管理職が「NO」と言えないことで起きる組織への弊害とは?
- 飯沼:全ての要望を受け入れてしまうと、単純に仕事が進まなくなります。チームがすごく忙しいのに成果が出ていないという状況に陥ってしまうからです。
全部をやろうとしてしまうあまり、中途半端なクオリティになってしまったり、本当にやるべきことができていなかったり、いわゆる“仕事をしているフリ”が横行してしまいます。
メンバー全員が頑張っていても、その頑張りが報われないというのは非常に辛い状況で、大きな問題です。
私自身も、以前は「NO」が言えず、自分自身は頑張っているのに成果に結びつかないという経験を何度も繰り返しました。本当に心が折れそうになった時、これじゃダメなのだと思い、「NO」を適切に伝えるようになりました。
ビジネスで成果を出すために、“断るスキル”は必須
- ー断ることにハードルを感じる管理職も多くいます。
- 飯沼:「要望は全て受け入れることこそが正しい」と思ってしまいがちですよね。特に、中間管理職は社内でも板挟みになるので、全て受け入れることがラクでもあります。顧客や上司からの要望を受け入れてチームメンバーに「ごめんね、やってね」とお願いする方が確かにラクです。でも、チームのリソースも自分の時間も有限です。
自分がキャリアで大きなことを成し遂げようと思った時、無駄なことはしていられません。だからこそ、「何をやるか」を選ぶことから逃げてはいけません。自分に対しても会社に対しても、最も成果が出ることを選ぶ責任が管理職にはあります。なので、「NO」を伝えるということは全く悪いことではないですし、むしろ良いこととして捉えてほしいです。
嫌われるのが怖いという感情もあるかもしれませんが、例えばその代わりにチームを犠牲にするのでしょうか。全てを「YES」で受け入れることには、そういったトレードオフが常に存在しています。また、あくまで持論ですが、どんな管理職でも嫌われる時は嫌われるものです。「何かを断ったから」という理由だけで嫌われるわけではありません。
“良い管理職”とは、チームを引っ張って成果を出す人です。「NO」を言えない人は、いずれ成果を出せなくなり、チームを率いることも徐々に難しくなってきます。ビジネスパーソンとしての長期的な戦略として、「NO」を伝えるスキルは身につけてほしいです。
断る時は、相手の話を聞き、目的を揃えることから
- ー相手との関係性を崩さない断り方の基本的なステップは?
- 飯沼:まず、とにかく相手の話をきちんと聞くこと。何も話を聞いていないのに「いやそれダメです」「やりません」と、いきなり「NO」を突きつけるから揉めるのです。きちんと話を聞いてくれない態度は、不信感に繋がります。
次に、目的を揃えること。相手は何のためにこのリクエストをしてきているのかという目的を探り、擦り合わせます。実は、相手側も要望はあるものの、その目的までは理解してないケースもあります。例えば、上司に言われたから伝書鳩のようにとりあえずリクエストをした、というように。そういった場合、一緒にその上司の意図を組み立てていくことも有効です。目的を揃えた上で、今依頼されていることが不必要となったら「NO」を伝えていくというステップになります。
- ー無意識にやってしまいがちなダメな断り方とは?
- 飯沼:「検討します」「持ち帰ります」などの曖昧な答えです。
この場合、自分の中では断りたいと思っているはず。でも「YES」とも「NO」とも伝えず、何も言っていないのと同じです。しかも時間が経つと、自分の中ではNOと伝えたような気持ちになってしまう。一方、相手としては「あの時検討してくれるって言ったし、やってくれているだろう」と、どちらかというとYESの解釈をしてしまいます。このようにお互いにズレた期待をしている状態が一番良くないです。その場は凌げたとしても、確実に後々信頼を損なうことになってしまいます。
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後編では、シチュエーション別の断り方を、実践的に紹介します。
(取材・執筆/菱山恵巳子)





