『自信のベースとなる“技術の柱”を立てたい』
株式会社デンソー モビリティエレクトロニクス事業部 小坂千明さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、株式会社デンソーで製品の機能安全アセスメントを担当している小坂千明さんにお話を伺いました。
小坂 千明(こさか ちあき)さん
株式会社デンソー
モビリティエレクトロニクス事業部
電子PFシステム開発部 セキュリティ開発室
FSCSアセス課 課長
職場復帰と重なった課長への昇格
- “技術の柱”を作ってキャリアを重ねていこうと、ハードウェア設計から機能安全アセッサへと専門領域を移してきた小坂さん。その背景には、「ライフイベントにもしなやかに対応していきたい」という思いがあるといいます。
- 「長く働き続けたいという思いを持っていたとしても、どうしても仕事から離れなくてはならない状況に陥る可能性があると思うんです。それは男性でも女性でも一緒で、自分自身に何かあるかもしれないし、家族に何かが起こるかもしれない。育児や介護がある方、女性の場合は妊娠・出産をする方もいるでしょう。そういった人生のさまざまな出来事、山や谷があったとしても、戻ろうと思ったときに戻れるような、自信となる軸を作りたいと考えていました。
特に私の場合は、前職で事業買収により職場環境が大きく変わる出来事も経験しました。それもあって、『外部要因にも揺らがずに働いていけるようになりたい』と、意識をより強めたのかもしれません」
- 機能安全・サイバーセキュリティアセッサの部署に異動した翌年には産休・育休を取得しました。その後、23年4月からフルタイム勤務で職場復帰。その間に、仕事への向き合い方がガラっと変わったと話します。
- 「自分の時間を自分のためだけに使い、仕事にフルコミットしていたときと比べて、集中できる時間はどうしても限られます。成果を出していくためには、周りに託すことも大事だと思うようになりました。今では、職場でも家庭でも、自分の状況をオープンにして早めに相談することを心掛けています」
- 現在、課長として機能安全/サイバーセキュリティ両方で11名のメンバーを受け持つ小坂さん。マネジメントポジションに就いたのは、育休からの復帰と同時期の23年4月でした。
- 「昇格したのが産休・育休中だったので、聞いたときにはびっくりしました。休んでいる間に何度か上司と面談があったのですが、復帰の数か月前に『昇格したよ』と言われたんです。てっきり、マネジメントポジションに上がるためのステップとして、プレイングマネジャーになるのかな…と思っていたら、メンバーを持つ課長職になっていた。復帰後は初めての職務と、子育てとの両立でとにかく必死でした。1年経ってようやく、自分なりのマネジメント像を模索する余裕が出てきたかなと思っています」
- デンソーでは、前年度の業績評価で翌年の昇給・賞与が決まります。また、育児・介護休職中の社員を昇格候補対象から除外しないことを定めています。そのため、成果を出した社員が産休・育休に入ったとしても、評価や昇格審査に影響することはないのだそう。ただ、実際に昇格と長期休暇期間が重なったケースは多くはなく、小坂さん自身もそのフラットさに驚いたといいます。
- 「産休・育休中の社員に対して、『これから子育ても大変だろうから(昇格を)遅らせたほうがいいだろう』といった一方的な見方はしない。会社のぶれない姿勢を改めて感じました。性別や年次に関係なく、それまでの仕事への向き合い方を平等に見てくれるのは、働く側として安心できます。全員を正しく同じ土台で評価しようとする環境をとても気に入っています」
課題が分かれば解決するための方法も見えてくる
- とはいえ、女性の管理職はまだまだ多いとは言えず、小坂さん自身が「ロールモデルになっていく立場」だといいます。
小坂さんの背中を見てこれからのキャリアを歩む。そんな後輩たちへのメッセージをお願いすると、「何とかなるよ!に尽きるかな」と笑顔を見せてくれました。 - 「これからも、キャリアには山あり谷ありでプラン通りに進むとは思っていません。それでも、その都度選びながら進んでいけば何とかやっていけるんだよという姿を、後輩たちに見せられたらいいなと思っています。
今、娘は2歳で絶賛イヤイヤ期。保育園に行くまでの時間だけでも大変です(笑)。子育てとマネジメント職の両立は、やる前は想像もできませんでしたし、『そんなの無理だろう』と尻ごみしたくなる気持ちもわかります。でも、やってみると何ができて何が大変なのかが分かってくる。そうすると、『ここは夫と分担しよう』とか『この業務はチームで対応できる体制を組もう』などと、解決するための方法が見えてきます。どうしてもダメだったとしても、またそのときに考えればいい。
課題が見えない間は漠然とした不安でいっぱいですが、『きっとできない・・』と先回りして悩むよりも、一歩踏み出して行動に移してみてはどうでしょうか。どんな課題にも対応策はあるし、それを一緒に考えてくれる人も必ず現れると思っています」
→「前編記事」
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写真:Astudio 齊藤朱里
取材・執筆:田中 瑠子