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マイキャリアストーリー

『事業への思いが、協力し合うチームを作る』
imperfect 代表取締役社長 佐伯美紗子さん【前編】

誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は、imperfect株式会社 代表取締役社長の佐伯美紗子さんにお話を伺いました。

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佐伯 美紗子(さえき みさこ)さん

imperfect株式会社代表取締役社長

消費者の小さなアクションを、生産環境の理解の向上につなげていく

― チョコレートやコーヒー、ナッツ、スパイスなどの販売を手掛けるimperfect株式会社。生産者の労働環境や生活環境、自然環境に配慮された原材料にこだわり、社名には「たとえ不完全(imperfect)でも自分たちにできることから取組み、世界と社会を少しでもよくしていこう」という思いが込められています。
設立は2019年3月。同年7月に、ウェルフード マーケット&カフェ「imperfect 表参道」がオープンし、百貨店などでのポップアップ店舗などでも展開を広げています。

総合商社でカカオやコーヒーの原料を扱う部署で働いていた佐伯美紗子さんは、同じ課題意識を持った仲間5人で事業を立ち上げ、2022年より代表取締役社長に就任しました。
「原料の輸入に携わる中で、生活環境の改善や、森林保全の取り組みを大事にしながらものづくりをしている生産者の思いを知り、彼らに寄り添い、サポートをしたいという思いが強くなっていきました。
でも、日本ではサステナビリティの考えがまだまだ浸透していなくて、環境に配慮した原料を…と提案しても日本のメーカーから賛同を得られることが少なかった。それならば、消費者への直接販売を通じて、日本市場全体のマインドを変えていきたいと思ったんです」
― imperfectの店頭では、商品を購入したお客様に“投票チップ”を渡しています。「森林保全」「家族が農園で働く子どもへの安全な教育機会の提供」「女性の働く環境の改善」など、3つのテーマの中から、お客様自身が「もっとも応援したい」と思うものに投票してもらう仕組みです。
「そんな小さなアクションを通じて、生産者が置かれた環境を知り、思いを巡らせる機会につなげてほしい。私たちの活動に気軽に“参加”してもらえるように、と考えています」

中学生で見た光景が、社会課題に目を向けるきっかけに

― 大学卒業後に総合商社に入社した佐伯さん。就職活動の時点で、「社会の仕組みを最適化したい」という思いを持っていたといいます。
「せっかく人生の時間の大半を使って働くのだから、社会がより良い方向に進んでいくために、社会の構造そのものに携われる仕事がしたいと思っていました。経済活動の一環として何かできないかと思ったとき、総合商社はやりたいことができる環境だと思いました。
商社は、業界の川下から川上まで、バリューチェーン全体の最適化に関わる存在です。エネルギーや金属、食品などあらゆる業界で、10年後、20年後の社会がどうあるべきかを考えて、さまざまなパートナーと事業展開ができる。とても魅力に感じました」
― そもそも、社会の構造に目を向けるきっかけは何だったのでしょう。 父の仕事の関係で、中学生時代をアメリカ・テキサス州で過ごしたという佐伯さん。よく訪れていたメキシコで、生活環境や経済格差を目の当たりにした経験が大きかったと話します。
「父の職場がメキシコだったので、私も連れて行ってもらうことが多かったんです。その街中で目にしたのは、私と同い年くらいの子どもたちが路上生活をしながら物乞いをしている姿。大きな衝撃を受けました。父の同僚のメキシコ人は、貧富の差が生まれた背景を教えてくれると共に、『今、目の前の子どもに恵んでも、根本的な課題は解決しない。社会全体の構造から変えていかなければいけない』と説いてくれた。“社会課題”を考えるようになったのは、そんな大人たちに恵まれたからかもしれません」
― 商社に入社後は、食品を扱う部署に配属され、日本の食品メーカーの国内流通や海外進出のサポートを担当。その後、M&Aを手掛ける部署や、食品メーカーへの出向などを経て、カカオやコーヒー豆の輸入を扱う部署へと異動しました。

佐伯さんがimperfectの構想に触れたのは2018年ごろ。同部署の先輩たちの、「私たちが消費者と直接コミュニケーションを取ることで、生産者たちの社会課題を知ってもらおう」という思いに共感したといいます。
「商社の仕事は、原料の調達と輸入という、バリューチェーンの川上に寄っています。私は食品メーカーへの出向でマーケティングやブランディングに携わった経験から、商社が持つ世界とのネットワークやアセットを活用して、消費者に寄ったマーケティングやブランディングまで手掛けることができれば、ビジネスの幅はもっと広がるのではないかと思っていました。
生産者を取り巻く社会課題に目を向けたチョコレートやコーヒーの製造から販売まで携わる仕事は、まさに私がやりたかったことだったんです」

「後編」に続きます。





~あわせて読みたい記事~
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子

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