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マイキャリアストーリー

『機会を待つのではなく取りに行く』
PwC Japan・人事部 芹沢亜衣子さん

女性なら誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

 

第5回は、PwC Japan合同会社 人事部マネージャーの芹沢亜衣子さんをインタビュー。新卒で入社した大手日系メーカーから外資へと、40歳で大きなキャリア転換を決めました。どんな経験を経て、現在の仕事に向き合っているのか、お話を伺いました。

芹沢 亜衣子さんのイメージ画像

芹沢 亜衣子さん

PwC Japan合同会社 人事部マネージャー

大学卒業後、大手グループ清涼飲料メーカーに入社。IT部門にてシステム開発・導入に従事する。その後、人事部門にて、評価・ジョブローテーションの制度運用・労務対応やダイバーシティ推進・タレントマネジメントなどの新規施策の企画・運用をリードする。2020年、PwC Japan合同会社に転職。HRBPとして要員管理・タレントマネジメント・人材開発・組織開発その他、部門の戦略・特性にそった人事戦略全般の企画・実行を担う。

プロとしての期待感が、自分を伸ばしてくれる

監査法人からコンサルティング、ディールアドバイザリーや税務など、幅広い専門領域を持つPwC Japanグループ。芹沢さんは、グループ全体のコーポレート業務を担うPwC Japan合同会社でヒューマンキャピタル(人事)部門のビジネスパートナー(HRBP)を務めています。 各部門のリーダーと対話を重ねながら、人と組織の「ありたい姿」を形にしていくのがHRBPの役割。どんな人材戦略や働き方が、PwCで働くメンバーのパフォーマンスにつながり、組織全体の価値を最大化させるのか。リーダーのメッセージをメンバーに届けるサポートから、スキルアップに向けた育成施策、評価・報酬などの人事制度設計・運用まで、人と組織の成長に多方面から携わっています。 PwC Japan合同会社に入ったのは、2020年10月。“人事のプロ”としてグループをリードする芹沢さんですが、「プロ意識が芽生えたのは、転職してから、ここ1~2年のこと」と話します。
「前職は新卒で入社した大手飲料メーカーで、約13年間、人事領域で経験を積んできました。労務から採用、育成、異動、制度運用まで、人事業務は一通り経験し、実績もあったと思います。でも、前職にいたときは、“ジョブローテーションの一環でこのポジションにいる”という感覚がありました。
PwCに来て、『人事のプロとしての意見が聞きたい』と求められるようになって初めて、自分の立ち位置を認識し、プロとしての知識を体系的につけようと必死になれました。周りの期待が、自分を作ってくれたと思っています」

与えられた環境で見出した、自分の“得意領域”

前職で人事の道に進んだのは、「会社の異動で求められたから」でした。でも、やってみると、自分の性格特性ととてもマッチした仕事であることが分かったといいます。
「もともと、将来のキャリアを逆算して設計するようなタイプではなくて、就活時点で自分の強みや適性なんてほとんど分かっていませんでした。
大学時代は、体育会のバレーボール部で練習漬けの毎日。背が小さくてバレーボール向きではなかったのですが、チームでつないで得点する気持ちよさにハマり、小学生のころからずっと続けていたんです。大学ではプレーヤーとして通用せず、主務(マネージャー職)としてメンバーが最高の状態で試合に臨めるよう、裏方仕事を担当しました。メンバーの悩みを聞いたり、練習相手になったり、チームの状況を監督と共有して課題解決に動いたりすることで、チームの役に立っていることがうれしかった。プレー以外でもやりがいを見出せるんだ、という発見がありました。今振り返れば、人と組織の“いい状態を作る”人事の仕事と、求められる要素が同じだなと、不思議な気持ちがします」
バレーボールと同じように、夢中になれるものを仕事にできたらいい――。そんな漠然とした期待感とともに飲料メーカーに就職したものの、配属されたのは「まったく興味がなかった」という社内IT部門。悶々とした日々は約3年続いたといいます。
「エクセルもろくに使えなかったのに、システム開発のプロジェクトマネジメントを任され『私がここにいる意味はあるのだろうか』とずっと悩んでいました。でも、『あと1年だけ頑張ろう』と続けていたら、だんだんと自分の強みに気づき始めたんです。それは、“分かりにくいシステムを、分からない相手に分かりやすく説明する力”でした。エンジニアの皆さんの難しい説明を、実際にシステムを使う営業現場の皆さんに私から説明すると『なるほど、そういう仕組みなんだ!』と理解してくれた。現場から私に質問がたくさん寄せられるようになり、信頼されたことが成功体験になりました。プロジェクトマネジメントを通じて、課題を整理し、解決するための工程を考え、誰を巻き込んで動かすべきかを論理的に設計する力も鍛えられ、その後の人事の仕事にもつながっていきました」
そこで培ったITスキルと、相手に伝える力、プロジェクトを立ち上げる経験を買われ、人事部に異動した芹沢さん。人事評価システム導入など裏方の業務を担当しながらも、働き方改革やダイバーシティ&インクルージョン推進のプロジェクト立案も担当。社会の変化に応じて、社員の人生に大きく関わるプロジェクトを数々任され、責任の重さに面白さを見出していったといいます。

機会を待つのではなく取りに行く。大胆な環境変化が、成長のチャンスをくれた

2人の子どもを出産し、子育てと両立させながらマネージャーポジションで活躍していた芹沢さん。そこから転職を決めたのにはどんな理由があったのでしょう。
「前職では年に1回、今後のキャリア希望について自己申告する機会がありましたが、40歳になって突然、自分がここにいて何をしたいのかが書けなくなってしまったんです。それまではやりたいことのアイデアが沸き上がってきていたのに、このまま変化がなければ、正しい判断や決断ができなくなると思いました」
ただ、そんな危機感があった一方で、自分の限られた経験や、これまでの慣習を考えると、すぐに動くのは難しいという諦めもあったといいます。
「人事の立場上、メンバーに“キャリア自律”の大切さを発信していたのに、自分自身がキャリアを自分で選ぼうとせずに、機会が回ってくるのを待っている・・『これでは人にキャリア自律を促す資格がない。外の世界を見てみよう』と決めました。
当時、小学5年生と2年生だった2人の子どもたちを見て、彼女らは将来、1社にずっと勤めるような働き方はしないだろう…とふと思ったんです。転職したり、独立して個人事業主になったり、起業したり。いろんな選択肢の中で生きていくのなら、自分がまずその経験をしてみるのも面白いかもしれない。自分で選ばずに留まってモヤモヤとするくらいなら、選んだと思える場所で、いろんな壁にぶつかっていこうと思いました」
転職先を選ぶ軸は、「現場に近い人事をすること」と「前職とまったく異なるビジネス、組織文化に身を置くこと」でした。せっかく変わるなら大きく変わろうと、外資系企業を受けている中で、PwC Japanでの面接が入社の決め手になったと話します。
「面接官は、入社後の上司になる方でした。『もうすぐ60歳の定年を迎えるんだ』と言いながらも、担当部門の課題や、これから実現したいことをすごい熱量で語ってくれたんです。いくつになっても現役でいる姿勢や、組織を変えていこうという意欲に衝撃を受け、この方のもとで数年でも学びたいと思いました。
当初は自信のなさから、マネージャーではなくメンバーポジションで応募していたのですが、『経験があるのだから、マネージャーで入りなさい』と言ってくれた。経験や職歴をフラットに見てくれたことに感激しました」
入社後に感じているのは、全員がプロフェッショナルという意識の高さ。年齢や性別など属性にかかわらず、同じ目標に向かっていくカルチャーは、厳しくも心地よいものだと話します。
「最初の1年は、こんなに勉強したことがないというくらい、必死で知識を身に付けました。経験と勘、社内ネットワークで仕事を進めていた前職では、人事の原理原則を体系的に学んでこなかった。PwCに来てから、上司にすすめられた本はすべて読み、英語を含めて、周りから求められる“プロ”のレベルにならなくてはと自分を追い込みました。
まだまだ伸びしろがあると思えたことがうれしかったし、勉強したものをアウトプットする機会も多く、それが確かな自信につながりました。成長機会を欲していたんだと思います。それに、前職で経験してきたことや教わったことが、人として本当に大切なことだったということにも改めて気づき、育ててくれたことに感謝しています。」

迷ったらわくわくするほうを選ぶ。できない理由は一度置いて考えよう

仕事と子育てを両立させてきた中で、「今の自分があるのは、子どもたちが頑張ってくれたから」と話す芹沢さん。長女は生まれて9か月のときに、次女は6か月のときに保育園に入り、子どもたちの様子を見て仕事への姿勢が固まったといいます。
「保育園という新しい環境で、元気に振る舞う姿を見たら、『中途半端に働くのはやめよう』と思えました。子どもを預けて申し訳ない…と後ろ髪を引かれたまま働くことのほうが申し訳ない。ちゃんと働くぞ!と覚悟が決まりました。
今振り返ると、女性だからとか、子育てと両立しているからと言われないように、仕事でパフォーマンスを上げなければと、誰よりも自分がとらわれていたのかもしれません。でも私にとって、母であり妻である以前に、自分が社会に貢献していることがとても大事でした。無理したこともあったけれど、家族というチームがあったから、今のポジションで仕事ができています。人のために、組織のために、社会のために何ができるだろうと動く人たちと働けていることがとても楽しいですね」
キャリアの中で大事にしてきたのは「わくわくするほうを選ぶこと」。前職も大好きで心地よかったけれど、今は、この道のプロとして自分の経験や実績に誇りを持てていると話します。
「軽やかに動いているように見えるかもしれませんが、いつもモヤモヤと悩んできましたし、これからも悩みながら進んでいくんだと思います。
一歩踏み出してみて思うのは、ストッパーをかけているのはいつも自分自身だということです。ほかの会社で活躍するなんて、外資に行くなんて、40代から全然違う環境に飛び込むなんて無理でしょうと、誰よりも私が思い込んでいました。でも、ほかの場所にいる人に聞いてみたら、全然違う見方があるのだと、転職活動を通じて気づかされました。
迷っているのなら、動いてみて、心地よい人の声を聞いてみたらいい。『でも…』と思い浮かぶ理由を、一旦脇に置いて考えてみると、本当にやりたいことが見えてくるかもしれないと思っています」


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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子

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