組織の心理的安全性を高めるために。メンバーと信頼関係を築く実践ポイント|石井遼介さん監修
心理的安全性の重要性を理解していても、「実際には何をすればいいの?」と悩む管理職は少なくありません。部下へのフィードバックやトラブル対応、会議や1on1など、日々の関わり方一つで、チームの心理的安全性は大きく変わります。
今回は、心理的安全性の専門家である石井遼介さんに、管理職が今日から実践できる具体的なコミュニケーションの工夫や、信頼されるリーダーになるためのポイントについて伺いました。前後編、後編です。
前編は、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://bemyself.pasonacareer.jp/skill/skill-4795/
監修者:石井 遼介(いしい りょうすけ)
株式会社ZENTech 代表取締役。一般社団法人日本認知科学研究所理事。武蔵野大学しあわせ研究所研究員。
東京大学工学部卒。シンガポール国立大経営学修士(MBA)。組織・チーム・個人のパフォーマンスを研究し、アカデミアの知見とビジネス現場の橋渡しを行う。心理的安全性の計測尺度・組織診断サーベイを開発すると共に、ビジネス領域、スポーツ領域で成果の出るチーム構築を推進。著書に『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)監修に『心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)。2026年8月『書くカウンセリング』(サンマーク出版) 刊行予定
心理的安全性を高める第一歩は、管理職自身の「受け止め方」を見直すこと
- ー組織の心理的安全性を高めるために、管理職が最初にするべきことは?
- 石井:報告や相談を受けた際、自分がメンバー(報告者)の立場だったら、今の対応が「よし、もっと頑張ろう」と思える効果的なものだったかを振り返ることです。
報告しても管理職からダメ出しされるだけだったら、報告会自体が憂鬱になってしまうかもしれません。管理職として、メンバーからまた相談したい、いち早く報告したいと思ってもらえる対応になっているかを振り返ってください。
- ートラブル発生時など、厳しく言いたくなる場面ではどうすれば良い?
- 石井:まず、厳しく言うことの目的を考えたいと思います。厳しく言う目的にはいくつかあります。例えば、相手に同じミスを繰り返さないでほしいという、改善を求めるためのものや、起きたトラブルをなんとか解決するために、正確な情報や状況の共有を求めるためのものなどです。
実は心理学の実験では、厳しく叱りつけるとネガティブな感情は産まれるが、同時に言われた指摘内容は頭に残らない、という知見があります。つまり、厳しくすることは、相手の成長のためにあまり効果的ではないんですね。
そして、もちろん厳しく叱ると心理的安全性が低下し、正確な情報や状況も共有されにくくなってしまいます。相手が保身に走りやすくなる、次からネガティブ報告をしなくなる、ということです。
とはいえメンバーのミスやトラブルなど、想定外のことが起きるとつい責めたくなることもあるかと思います。第一声で「え?なんで?」とつい言ってしまうこともあるかもしれません。
ですので、まずネガティブな報告があった際には「報告してくれてありがとう」から伝えるなどのルールを自分の中で決めておくと良いかと思います。
メンバーを責めている暇があったら、問題解決の方法を考えた方が良いですよね。「言ったのになぜ繰り返すのか」「誰に責任があるのか」という自分が言いたいことは一旦後回しにして、今起きているトラブルをメンバーと一緒にどう解決するかにフォーカスする。このように、あらかじめ自分の中でルールを決めておくと、トラブル発生時も強い組織になりますし、心理的安全性も保たれます。
- ー繰り返しミスをするメンバーへはどう対応したら良い?
- 石井:どんなアクションをすれば良いかを小さなステップで伝えられると良いでしょう。「資料をうまく作るためにはいくつかポイントがあって、〇〇さんはここはできてるけど、ここはまだ改善の余地がある。ここができると一段階ステップアップできる」というように。「この資料、読みにくいんだよね」と言われるより「何をしたらいいか」がわかりやすいですよね。
また、怒られたからとりあえず「わかりました」と言ったけど、本当はわかっていないというパターンもあります。心理的安全性が低いと「こういう理解で合っていますか」と質問ができず、とにかく「わかりました」「気をつけます」でやり過ごしてしまうというパターンです。
さらには「ミスではない」ケースすらあります。つまり「気をつけていれば防げるはずのミスだ」と、上司も本人も思っているが、実は「そもそもの理解が間違っている」というケースです。こういったケースは、実際に眼の前でやってもらったり、丁寧に理解を確認してみると検出・改善することができます。
会議や1on1で心理的安全性を高めるポイント
- ー心理的安全性を高めるために、日常の会議でできることは?
- 石井:会議の最初に、その会議の目的と、なぜ呼ばれているのかの理由、最終的に何が決まれば良いのかを話してください。それだけで、メンバーからするとそこにいる理由が明確になり、話しやすくなりますね。
アイデアを出してほしい会議なのか、上層部からの通達事項の共有の場なのか、お互いの理解を深める場なのか…「何の会議なのか」がわからない場が、一番発言しにくいものです。
あとは、会議の場で人を詰めることはNGです。例えば、数字が目標に達していない時。達成しているかどうかは見ればわかることなので、わざわざ指摘する必要はないですよね。次に数字を上げるためにどういう工夫ができるかのアイデアを話し合ってください。
- ー1on1で本音を引き出すための心理的安全性の作り方は?
- 石井:良い1on1ができれば心理的安全性も高まります。一方で、心理的安全性こそが、良い1on1のベースでもあります。そもそも信頼してない上司との1on1では、本音を喋ろうとは思えないからです。ですので、どちらかといえば普段からの関係性によって有意義な1on1になるかが決まります。
その上で、良い1on1のためには、相手が「どうしたいか」を聴くことです。今日はただ話を聴いてほしいのか、アイデアを出し合いたいのか、問題を解決してほしいのか、意思決定してほしいのか…。どんなつもりで上司である自分は1on1を行えば良いのか、相手に聴いてみてください。
目指すのは「優しい上司」ではなく、「信頼される管理職」
- ー組織の心理的安全性を高めたい女性管理職にメッセージをお願いします。
- 石井:組織の心理的安全性を高める上で、信頼される管理職であることが大切です。フランクに雑談できる組織や、ニックネームで呼び合う組織が心理的安全性が高いわけではありません。それよりも、メンバーから見て「この人はトラブルの時にもちゃんと話を聞いてくれて、いきなり詰め寄ったりしない」と思われるような管理職であれば、組織の心理的安全性も高まります。
メンバーとの距離を縮めることを目的にするのではなく、良い仕事をすることを目的にしてください。優しい管理職というよりは、仕事に対して真剣に向き合う姿勢が伝わる管理職であることが大切だと思います。
そして、優しいだけの上司よりも、良い仕事を共に成し遂げられる上司の方が、結果として信頼されるものだと思います。
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(取材・執筆/菱山恵巳子)





