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「辞めそうな部下」の兆候と対処法|早期発見と対応で離職を防ぐ

管理職をしていて、「最近あの部下の様子が少し変だな……」と感じることはありませんか?

 

そうした部下への違和感は、離職につながるサインかもしれません。優秀な人材の退職は企業にとって大きな損失となり、チームのモチベーションや生産性にも影響を及ぼします。

 

本記事では「辞めそうな部下」の特徴や兆候、そして早期に対処するための具体的な方法を解説します。

辞めそうな部下に見られる兆候とは

部下が退職を考えている場合、その兆候は日常の言動や態度に現れることがあります。管理職は以下のようなサインを見逃さないことが、早期の対応につながります。

コミュニケーションの変化

普段は雑談や意見交換をしていた部下が、急に口数が少なくなったり、挨拶が簡素になったりすることはありませんか?

これは上司と部下の間に心理的な距離が生じ、会社とのつながりが薄れ始めているサインです。会議での発言が減る、提案に対する反応が鈍くなるなども、業務への関心の低下を示しています。

仕事へのモチベーションの低下

これまで積極的に業務に取り組んでいた部下が、指示待ちになったり、明らかに業務の質が落ちたりする場合、仕事への意欲が薄れている可能性があります。

具体的には、目標以上の成果創出に消極的になったり、与えられた業務以上に仕事の範囲を広げないなど消極的な姿勢が見える場合は注意が必要です。

勤務態度・出勤状況の変化

勤務態度や勤務時間の変化も見逃せないポイントです。特に遅刻・早退が増える、残業時間が急激に減少する、有給休暇の取得が急に増えるなど、勤務時間に変化が見える場合はいつもより気をつけて部下を見るようにしましょう。

心身の疲れや気持ちの切り替えの現れである場合もありますが、離職の準備をしているケースも考えられます。

身だしなみや周囲への態度の変化

服装や髪型の変化が目立つ、社内での振る舞いがそっけなくなるなど、些細な変化も見逃せません。

特に「周囲からどう見られても構わない」というような態度が見える場合は、組織への関心が薄れている可能性があります。

業務引き継ぎや私物整理などの行動

突然、引き継ぎ資料を整え始めたり、自分のデスク周りを整理し始めたりする場合、すでに退職を視野に入れて行動を起こしている可能性が高いです。

この段階では、すでに意思が固まりつつあることも多く、引き止めたい場合は早急な対応が求められます。

なぜ部下の離職の兆候を把握する必要があるのか

ここでは、部下が辞める兆候を早期に察知する必要性について4つの視点から解説します。

生産性の低下や会社の損失を防ぐ

優秀な人材の離職は、そのまま業務効率の低下や後任への負担増につながります。

採用や教育にかかるコストも大きく、企業にとっては金銭的にも時間的にも損失になります。兆候を見逃さず、早めにフォローすることで、組織へのダメージを最小限に抑えることができます。

早期発見で離職を防げる可能性がある

残念ながら離職の意思が固まってしまってからでは、引き止めは難しいです。相手から離職を切り出された時点で、すでに転職活動を終えており、対話・対応の余地がないケースも少なくありません。

しかし、離職の意思が固まる前の段階で適切な対話や対応を行えば、離職の意思を変えるチャンスはあります。早期発見できれば、部下の信頼を取り戻し、会社への帰属意識を再構築できる可能性もあります。

優秀な部下の離職を防ぐリテンションマネジメントについての記事はこちらをご覧ください。
優秀な社員の離職を防ぐリテンションマネジメントの重要性

従業員の健康を守る

モチベーションの低下や態度の変化は、心身の不調が背景にある場合もあります。

働きすぎや人間関係のストレスが原因で、メンタルヘルスに問題を抱えているケースも少なくありません。兆候に気づくことは、従業員の心身の健康を守るためにも大切なのです。

他の従業員への影響

一人の離職は、他の社員の不安や不満につながることがあります。

特に新しい人材の育成が完了するまでは、辞めた人の分の工数を、残ったメンバーが負わなければならないケースも少なくありません。またチーム内で信頼されていた人が辞めた場合、残されたメンバーの仕事に対するモチベーションに悪影響を及ぼす可能性もあります。

離職の連鎖を防ぐためにも、最初のサインを見逃さないことが重要です。

部下が辞める理由・背景にあるもの

部下が退職を考えるとき、表に出る理由は「家庭の事情」「やりたいことが見つかった」など、あくまで表層的なものにとどまりがちです。しかしその背景には、職場環境や人間関係、将来への不安など、一人一人異なる要因が絡んでいます。

ここではいくつかの例を紹介します。

人間関係のストレスや孤立感

職場での人間関係は、働く上での満足度や定着率に大きく影響します。

上司や同僚との関係にストレスを感じていたり、孤立していると感じたりすると、「ここではもう続けられない」と思いやすくなります。特に、心理的安全性が低い環境では、本音が言えず、相談もできず、離職を選ぶ傾向が高まります。

これらは放置しておくと、離職の連鎖を招いてしまうため、早急に察知する必要があります。

仕事内容・キャリアパスへの不安

やりがいを感じられない業務、成長を実感できない仕事が続くと、「このままでいいのだろうか」という不安が強まります。

また、ロールモデルがいない、自分の将来像が描けない職場では、キャリア形成のモチベーションも低下し、転職を視野に入れるようになります。
われる用語や、密接に関連する概念が多く登場します。ここでは4つの関連キーワードを取り上げて解説します。

評価・報酬に対する不満

成果を出しているにも関わらず、正当に評価されないという不満は、働く意欲を大きく削ぎます。

例えば、「頑張っても昇進につながらない」「給与が見合っていない」と感じると、会社への信頼は一気に失われてしまいます。評価制度の透明性や納得感が問われるポイントです。

プライベートやライフステージの変化

結婚・出産・介護など、ライフステージの変化も退職の要因になります。

このような場合、柔軟に働けるか、長期的に働きやすい環境かどうかが、離職を決める重要な判断材料になります。仕事と私生活の両立が難しいと感じたとき、人は新たな環境を求めて離れていくのです。

辞めそうな部下への対応

兆候に気づいたタイミングで適切な対応をとることで、離職を防げるケースも多くあります。ここでは上司がとるべき行動をいくつか紹介します。

日頃の声かけを意識する

面談などの改まった場は、部下も緊張しがちであり、本音を引き出すことは難しいでしょう。そのため、日常的なコミュニケーションの中で自然に声をかけることが大切です。

挨拶や日頃の雑談など、日常的にコミュニケーションが取れていれば、大事なことを話すハードルも下がります。普段から「最近どう?」と声をかけるだけでも見守ってくれる安心感につながりますし、部下の変化や本音に気づくきっかけになります。

大切なのは、詮索ではなくあくまで見守る姿勢を持つことです。そうした姿勢が信頼につながります。

配置や業務内容の見直し

部下のモチベーションが下がっているとき、その背景には「自分に合っていない仕事をしている」「成果が出しづらい環境にいる」といったミスマッチが潜んでいることがあります。

本人の適性や希望、過去の実績を踏まえて、担当業務やポジションの見直しを検討することは、状況の改善につながる有効な手段です。大きな異動や抜本的な変更でなくても、業務の一部を調整したり、新たな役割を与えたりすることで、部下のやる気が回復することもあるでしょう。

そのためにも、日頃から部下との間で、キャリアに関する希望などを共有する場を設けていることが重要になります。

キャリアパスや成長機会の提示

モチベーションの低下は、「この職場にいても成長できない」という思いから来ている場合があります。そのため、本人の希望とすり合わせながら、一緒にキャリアを描く姿勢が重要です。

「あなたにはこういう役割を期待している」「こういうスキルを伸ばせる機会がある」といった、将来の展望を伝えることが効果的です。

キャリアに関する話し合い(キャリア面談)の方法についてはこちらの記事もご参考ください。
キャリア面談を通じて部下の力を伸ばす。話す内容や方法を解説

退職の意思を伝えられたときの対応

ここでは退職の意思を伝えられた時に、上司が取るべき対応について解説します。

感情的にならず、まずは受け止める

退職の話をされたときに「なんで?」「今じゃなくてもいいじゃないか」などの否定的な反応をしてしまうと、部下の気持ちはさらに離れていきます。

まずは、驚きや戸惑いがあっても、しっかり話を聞くことに徹しましょう。受け止める姿勢を見せることで、相手も本音を話しやすくなります。

相手が話しやすいように会話を進めるには、ペーシングなどのコミュニケーション手法も有効です。ぜひご参考ください。
ペーシングとは?信頼関係をつくるコミュニケーションスキルを解説

引き止めるべきかの見極め

全ての退職を無理に引き止める必要はないと、ある程度冷静に割り切ることも必要です。本意でない引き止めは、本人の心身の健康を害したり、他の従業員への不信感につながる場合もあります。最終的に決めるのは本人です。

まずは本音を聞いて、会社側として提供できる環境改善や希望の実現が可能かどうかを見極めましょう。改善による引き止めが現実的であれば誠実に提案し、難しければ無理に引き止めず、前向きな旅立ちをサポートすることも必要です。

会社に対する悪印象を残さないことで、最後まで責任をもって引継ぎを行ってくれる期待もできるでしょう。

円満退職のための準備

最終的に退職が決まった場合でも、円滑な引き継ぎと社内への影響最小化を意識することが必要です。

部下の貢献に感謝の意を伝え、気持ちよく送り出せるかどうかで、残されたメンバーの受け止め方も変わります。組織全体の士気を下げないよう、最後まで丁寧に対応しましょう。

辞めない組織づくりのポイント

「辞めそうな部下」への個別対応も大切ですが、根本的には“辞めにくい職場”をつくることが、離職防止の鍵です。

ここでは、離職を防ぐためのポイントを紹介します。

エンゲージメントを高める職場風土の形成

従業員のエンゲージメントが高い職場では、個々が会社と自分の成長を結びつけて働いています。

「自分はこの会社で成長できている」「会社に貢献できている」と感じられる職場風土があることで、帰属意識や働きがいも向上し、離職のリスクが低くなります。日頃から感謝の言葉を伝える、成果を共有し褒め称える文化など、日常的な取り組みが従業員のエンゲージメントを高めます。

ワークエンゲージメントについては下記の記事もご参考ください。
ワークエンゲージメントとは?高めるための方法や測定方法を解説

適切な業務内容と評価

従業員のモチベーションや組織への帰属意識を高めるためには、適切な業務内容とボリューム、正当な評価が不可欠です。

業務量が過剰だったり、逆に能力を発揮できない仕事を割り当てられていると、モチベーションは低下します。また、「頑張っても評価されない」という不満が続けば、離職に直結します。

適切な業務内容・業務量を見極めるためには、上司が部下の得意・不得意・志向性・業務スピードなどについてよく知っている必要があります。
また適切な評価には納得感のある人事評価制度の設計が欠かせません。

人事評価制度については、ぜひこちらの記事もご覧ください。
人事評価とは?目的・種類・運用のポイントをわかりやすく解説

相談窓口の設置

悩みを抱えたときに、気軽に相談できる環境があるかどうかも非常に重要です。

直属の上司には言いづらいことも、第三者の相談窓口があることで早期にフォローできるケースがあります。制度としての整備はもちろん、「本当に頼っていい場所」と感じられる運用がポイントです。

まとめ:早期発見と信頼関係の構築が鍵

部下の離職は、企業にとって大きな損失です。しかし、その多くは突然の出来事ではなく、日頃の積み重ねによって起こります。普段から部下とよく関わり、違和感を見逃さず、早い段階で声をかけることで状況を大きく改善できる可能性があります。

辞めさせないための対応は、辞めようとする「その時」ではなく、「日常」の積み重ねの中にあります。部下の未来に寄り添いながら、組織としても成長していくマネジメントが、離職のない職場づくりの第一歩です。

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