名ばかり管理職は違法?判断基準や問題点、防止方法などを解説
「仕事内容は通常の社員と同様なのに、管理職だから残業代が出ない」ということはありませんか? これは違法行為にあたります。このような「権限がなく、肩書きだけの管理職」は「名ばかり管理職」と呼ばれます。
この記事では「名ばかり管理職」について詳しく解説します。
目次
名ばかり管理職とは?
「名ばかり管理職」とは、肩書きには管理職がついているにもかかわらず、実際は管理職の権限はなく、残業代が支払われないなど、待遇が不十分な状態のことです。
労働基準法41条では「監督もしくは管理の地位にある者」を「管理監督者」と呼び、「管理監督者」については労働時間等に関する規定が適用されない(※)」と記載されています。
(※ただし深夜残業手当については支払う必要があります。)
つまり、管理監督者には時間外労働や休日労働についての割増賃金の支払いが不要ということです。この労働基準法41条を、「管理職の役職をつけさえすれば残業代を支払わなくて良い」と悪用することで、「名ばかり管理職」が生まれます。
しかし、名ばかり管理職は「違法」です。以前から問題視されており、過去裁判になった事例もあります。名ばかり管理職を含めた残業や時間外労働については2019年に法改正がされました。社会問題として国をあげて現在も対策が進められています。
管理職などの役職について、詳細な職務内容が知りたい方は下記の記事もご覧ください。
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名ばかり管理職の問題点
名ばかり管理職による一番大きな問題は、「残業代の不払い」です。それにより一般社員の時よりも手取りが減ることも起こりえます。
本来、残業代の支払い義務が生じない管理監督者の場合、代わりに役職手当など見合った待遇がされるはずです。
さらに、残業代が不要なことにより労働時間も増え、過労で体調を崩すなど、仕事ができなくなる状態になることもあります。
なぜ名ばかり管理職問題は起こる?
名ばかり管理職が発生している大きな原因として、「管理職」と「管理監督者」が混同されている点が挙げられます。
実は、労働基準法上の「管理監督者」と企業でいうところの「管理職」は厳密にいうと同一ではありません。
企業の「管理職」は役職によって判断されることが一般的で、課長以上が対象とされる場合が多いです。一方、労働基準法上の「管理監督者」とは、あくまで「実態」により決まります。
会社の役職上「管理職」であっても、労働基準法上の「管理監督者」にはあたらないということは起こり得ます。その場合、会社の役職上「管理職」であっても従業員に残業代を支給する必要があります。
日本では「課長」から管理職だと判断される場合が多いですが、実は「管理監督者」にはそう簡単に当てはまるものではありません。後述する4つの判断基準のうち一つでも当てはまらないものがあれば、「名ばかり管理職」となるため、残業代の支払いが行われていない場合には、違法となる可能性があります
管理監督者の判断基準
では「管理監督者」の判断基準は具体的にどのようなものでしょうか?
労働基準法で定める管理監督者の判断基準は「職務内容」「責任と権限」「勤務態様」「待遇」の4点から判断されます。
職務内容
管理監督者は、労働基準法41条2号では「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と定義されています。
その名の通り、「部署を管理・監督する立場」のことです。また職務において「事業主の経営に関する決定に関与している立場」であることも必要です。
責任と権限
管理監督者は、部署の管理・監督を任されているだけでなく、部署においての「責任と権限」も持っていなければなりません。ここでいう責任と権限とは、「人事」や「予算」に対する裁量権のことです。
勤務態様
また、管理監督者は自身の業務量・労働時間をコントロールできます。
労働時間について拘束時間がないので、出退勤の時間は自由に決めることができます。遅刻や早退により罰則や減給がある場合、管理監督者とは言えません。
待遇
賃金などの報酬について、管理監督者は職務に見合った待遇を受けている必要があります。基本給、手当、賞与など、一般の社員と比較して優遇されていなければなりません。
名ばかり管理職を防ぐ方法
では、名ばかり管理職の発生を防ぐには、企業としてどのような対策を取ればいいでしょうか。
労働時間を把握する
まず、企業側で社員の労働時間を適切に把握することです。
労働時間を適切に管理することで、
・裁量のはずの出社退社時間が定められている
・遅刻や早退が賃金から控除されている
など、不自然な勤務状況を把握できます。
待遇と権限を確認する
管理監督者に見合った待遇や権限が与えられているかもチェックのポイントです。
・部署の採用などの人事権があるか
・部署の予算に対する決裁権があるか
・役職手当など管理監督者に見合った報酬・待遇が保障されているか
などを確認します。
まとめ:名ばかり管理職は違法である
名ばかり管理職とは、「管理監督者」の基準に当てはまらない「管理職」を指し、不当な残業や賃金不払いが行われている状態のことを指します。
自分が名ばかり管理職に当てはまるかもしれない、と思った場合は、速やかに労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。