女性管理職の働き方の実態に関するアンケート(2023年)
Be myselfは、首都圏在住の女性管理職100名を対象に、『女性管理職の働き方の実態に関するアンケート』を実施いたしました。
日本においては昨年6月、政府より「女性版骨太の方針2023」が出されるなど、積極的な女性活躍推進に向けて様々な取り組みが進む一方で、部長相当職以上に占める女性の割合がいまだ8%(厚生労働省「令和4年度雇用機会均等基本調査」2023年7月)であるなど、各企業における女性管理職の登用は遅々として進まない現状があります。
そこで、Be myselfでは、日本企業の女性管理職登用促進の一助となるべく、現在、首都圏に在住する女性管理職100名を対象に、管理職になったことで得られた経験や、変化などについて調査を実施し、その結果を発表いたします。
調査レポート記事はこちら
<調査概要>
調査主体:Be myself(運営:株式会社パソナ)
調査対象: 女性管理職
調査方法: オンライン調査
調査地域: 東京、神奈川、千葉、埼玉
有効回答: 100名
実施期間: 2023年12月21日~26日
調査言語: 日本語
<アンケート回答者属性>
職 業: 会社員 管理職 ※課長職以上相当と定義
年 齢: 32~49歳(平均43.35歳)
婚姻状況: 未婚51%、既婚49%
子の有無: あり28%、なし72%
管理職歴: 1~25年(平均6.97年)
就任年齢: 24~48歳(平均36.5歳)
職種分類:フロントオフィス21%、ミドルオフィス27%、バックオフィス30%、コーポレート17%、その他5%
目次
- Q. 一般社員の頃、管理職になりたいと思っていましたか?(単回答、n=100)
- Q. 管理職になってみて、最も良かったことを教えてください。(単回答、n=100)
- Q. 管理職になってからの給与への満足度を教えてください。(単回答、n=100)
- Q. 管理職になったことで、労働時間に変化はありましたか?(単回答、n=100)
- Q. 一日の平均労働時間と平均睡眠時間を教えてください。(単回答、n=100)
- Q. 管理職になったことで、仕事のペース管理に変化はありましたか?(単回答、n=100)
- Q. 管理職になり、スケールの大きな仕事に関わっている実感はありますか?(単回答、n=100)
- Q. 管理職になったことで、仕事に対する裁量の大きさに変化はありましたか?(単回答、n=100)
- Q. 管理職になり、周囲からの信用・評価が上がった実感はありますか?(単回答、n=100)
- Q. 管理職になったことで特に成長を実感しているスキル・能力等を教えてください。(複数回答、n=100)
- Q. どのようなときに、チームビルディングの喜びを感じますか?(複数回答、n=100)
- Q. 社内の女性メンバーにも、管理職になるよう勧めたいですか?(単回答、n=100)
- Q. ご自身のキャリアを振り返り、管理職になってよかったと思いますか?(単回答、n=100)
- Q .上記の回答のご理由を教えてください。(自由記述、n=100)
- 「とてもよかった」、「よかった」
- 「どちらとも言えない」
- 「よくなかった」、「とてもよくなかった」
- Q. 今の会社は女性が管理職として働きやすい環境が整っていますか?(単回答、n=100)
- Q. 女性が活躍するために特に必要だと思うことはなんですか?(複数回答、n=100)
- 管理職に「なってよかった群」と「それ以外群」との比較
- 【クロス集計に対する考察】
Q. 一般社員の頃、管理職になりたいと思っていましたか?(単回答、n=100)
「なりたかった」と「ややなりたかった」を合わせても34%と、実際に管理職に就いた人でも、当初、管理職への就任意向がそれほど高くなかったことがわかります。
Q. 管理職になってみて、最も良かったことを教えてください。(単回答、n=100)
管理職になって最も良かったことを聞いたところ、「給与アップ」が最多となり、「裁量をもてる」「自身の成長」が続きました。管理職となったからこそ、それまでは持ち得なかった「裁量を持てる」ことで、一般社員の時からさらなる「自身の成長」を実感していることが伺えます。
Q. 管理職になってからの給与への満足度を教えてください。(単回答、n=100)
管理職になって最も良かったことを尋ねる設問で、最も回答数が多かった「給与アップ」。しかし、給与に満足している女性管理職の割合は、「満足している」「やや満足している」を合わせて42%にとどまる結果に。給与自体は責任の重さなどに照らし、もう少し給与を上げて欲しいと感じている人も少なくないとみられます。
Q. 管理職になったことで、労働時間に変化はありましたか?(単回答、n=100)
管理職になると部下の業務管理なども行う必要があり、業務量と共に労働時間が増加するイメージがありますが、41人は「労働時間が長くなった」と回答した一方で、回答者の半数が、管理職になっても「あまり変化はない」と回答しました。
Q. 一日の平均労働時間と平均睡眠時間を教えてください。(単回答、n=100)
労働時間:平均8.62時間(最小値5、最大値12)
睡眠時間:平均6.33時間(最小値3、最大値8)
負担が大きいイメージもある管理職。しかし、労働時間・睡眠時間ともに、一般的なビジネスパーソンと比較して、それほど大きな差異は見られませんでした。
Q. 管理職になったことで、仕事のペース管理に変化はありましたか?(単回答、n=100)
管理職となることで、部下の業務管理や予期せぬ事案への対応など業務範囲が広がる面はあるものの、仕事のペースについては46%が「あまり変化はない」、30%が「自分のペースで働きやすくなった」と回答。管理職ゆえに、自身の業務管理が自分で采配できるようになっていることが伺えます。
Q. 管理職になり、スケールの大きな仕事に関わっている実感はありますか?(単回答、n=100)
管理職になってから、スケールの大きな仕事に関わっている実感があるか聞いたところ、57%が「実感している」と回答。経営層との接点が増えたり、経営と直結した目標を持つ等する中で、仕事のスケールの変化を感じることが多いようです。
Q. 管理職になったことで、仕事に対する裁量の大きさに変化はありましたか?(単回答、n=100)
「管理職は決断の連続」といわれるように、管理職になると、自分自身の考えに基づいて問題を判断・決定できる度合いが高まるイメージがあります。
アンケートによると、裁量が「大きくなった」「やや大きくなった」合わせて63%の女性管理職が、裁量の大きさを実感しているとの結果が出ました。
Q. 管理職になり、周囲からの信用・評価が上がった実感はありますか?(単回答、n=100)
管理職になったことで、取引先や社内、家族、友人などからの見られ方が変わったかを尋ねる質問。
「強く実感している」「やや実感している」合わせて62%の人が、信用・評価の向上を実感していると回答しました。
Q. 管理職になったことで特に成長を実感しているスキル・能力等を教えてください。(複数回答、n=100)
管理職になったことで特に成長を実感しているスキル・能力等を聞いたところ、「問題解決力」が最多で41人が選択。一般社員としても求められるスキルではあるものの、管理職として解決しなければならない案件が増加すると共に、成長を実感する機会も増えるものと考えられます。
ほかにも、「メンバーマネジメント」や「リーダーシップ」など、管理職になったからこそ得られるスキルが選択されていることは納得感があります。
Q. どのようなときに、チームビルディングの喜びを感じますか?(複数回答、n=100)
管理職ならではの仕事の醍醐味といえば『チームビルディング』。全体として、チームの一体感を感じたとき、部下の成長を感じたときなどに、チームビルディングの喜びを感じる人が多いという結果となりました。
Q. 社内の女性メンバーにも、管理職になるよう勧めたいですか?(単回答、n=100)
後輩や同僚の女性などに、自社での管理職を勧めたいかを尋ねる質問。「ぜひ勧めたい」「どちらかというと勧めたい」を合わせても29%にとどまりました。「どちらとも言えない」が実に59%も占めており、『管理職が合う・合わないは人による』という考えの女性管理職が多いと推測されます。
Q. ご自身のキャリアを振り返り、管理職になってよかったと思いますか?(単回答、n=100)
管理職キャリアの満足度を問う決定的な質問でしたが、「とてもよかった」「よかった」を合わせて60%がポジティブな回答を行う結果となりました。この数字をいかに伸ばしていくか、今後の各社の取り組みが重要になります。
Q .上記の回答のご理由を教えてください。(自由記述、n=100)
「とてもよかった」、「よかった」
※回答の一部を抜粋
・自身の成長につながった
・給料が上がったから
・正当に評価してもらえたと実感できた
・他部への交渉がしやすくなったこと
・自分のやり方で仕事を進めやすい
・様々な経験ができ、キャリアアップに繋がった
・責任感を持って取り組むことができて、やりがいを感じるようになったから
・部下の成長が嬉しい
・自分のペースで仕事出来る
・周り(特に部下)への目配りが当たり前にできるようになった
・ならないと見えない景色があるから
・様々なことにチャレンジできる
・世の中に対する目線が変わり、いろいろなものを広い視野で考えられるようになった
・自分には合っていたから
・ミッション成功時の達成感が大きい
・管理職になったことで会社の中の環境の変化を得られ、飽きずに働けている
・多角的な視野が身に付き、組織の一員だという意識が高まったので
・管理職として様々な経験を経て、自分に自信が持てるようになった
・産休育休を経ても戻りやすい安心感がある
・給料が上がるし、今後転職等する際も有利
「どちらとも言えない」
※回答の一部を抜粋
・やはり、良い面も悪い面もあるから
・待遇面でも業務面でも特に今までと変わらないため
・まだ評価しかねる
「よくなかった」、「とてもよくなかった」
※回答の一部を抜粋
・突発的な計画変更等ストレスになる事案が増えた
・給料は上がったが、プレッシャーが大きく、休暇もあまり取れない
・ワークライフバランスの維持が大変。自分の時間がない
・部下の管理が大変
・社内に男尊女卑の文化があるから働きづらい
Q. 今の会社は女性が管理職として働きやすい環境が整っていますか?(単回答、n=100)
現在勤める会社について、女性が管理職として働きやすい環境が「整っている」または「どちらかと言うと整っている」と回答した人が46人。その46人については、約9割が管理職になって「とてもよかった」「よかった」と回答。企業の女性活躍推進に、職場環境の整備が求められていることが改めて浮き彫りとなりました。
Q. 女性が活躍するために特に必要だと思うことはなんですか?(複数回答、n=100)
※「その他」 記述回答
・会社をあげての長時間労働の是正
・特になし。本人の努力、実力、タイミングが大切。
女性活躍に必要な環境・条件等を尋ねる質問でしたが、「柔軟な勤務形態」と回答した人が56人と多くの票を集めました。
ライフステージの変化やプライベートでの突発的なイベントに応じて、柔軟に働き方を変えられる環境を、多くの人が求めていることがわかります。
管理職に「なってよかった群」と「それ以外群」との比較
本アンケートにて、管理職になって「とてもよかった(12%)」、「よかった(48%)」と回答した人を『なってよかった群』、「どちらとも言えない(31%)」、「よくなかった(7%)」、「とてもよくなかった(2%)」と回答した人を『それ以外群』とラベリングし、クロス集計を実施しました。以下がその結果です。
【クロス集計に対する考察】
(1)両群の間で、平均年齢、既婚未婚の別、子どもの有無、職種、管理職歴、管理職就任年齢、平均労働時間、平均睡眠時間に大きな差異は認められず、これらは管理職キャリアの満足度を大きく左右しないと推定される結果となった。
※労働時間については、『なってよかった群』が8.8時間と『それ以外群』の8.5時間よりもむしろ長い結果に。
(2)管理職になって成長を実感しているスキル数を比較したときに、『なってよかった群』が平均2.8個に対し、『それ以外群』は平均1.7個となった。成長実感と管理キャリアの満足度に一定の関係性が伺える。
(3)個別のスキルに目を移すと、『なってよかった群』は、 “メンバーマネジメント”、“課題発見・分析”、“経営的視点”のスキルにおいて、『それ以外群』の2倍以上の割合で成長を実感していると回答している。 これらの業務への手応えが管理職キャリアの満足度を左右していると考えられる。
(4)『なってよかった群』は、『それ以外群』の4.2倍の割合(41.7%)で「管理職になって仕事のペース管理がしやすくなった」と回答している。また、4.9倍の割合(61.7%)で「給与に満足している」旨の回答をしている。給与と共に、仕事のペース管理のしやすさが満足度を大きく左右することが伺える。
(5)『なってよかった群』は、『それ以外群』の約5倍の割合(68.3%)で自社に女性管理職が働きやすい環境があると回答している。両群を比較したときに、職場環境の面で非常に大きな開きが見られる。
(6)業務内容・労働条件に関する設問(労働時間、ペース、給与、スケール、裁量、信頼・評価の項目)へのポジティブな回答数を比較したときに、『なってよかった群』は、『それ以外群』の2.1倍多い(平均3.4個)。企業間で、女性管理職の業務内容・労働条件に格差が生じている可能性がある。
調査結果のポイント
・女性管理職の3人に2人は、管理職への意向が特にない中で管理職に就任。
・管理職になって良かったことの一位は「給与アップ(37%)」。次いで、「裁量を持てる(20%)」、「自身の成長(18%)」。
・女性管理職の一日の労働時間は平均8.62時間、睡眠時間は平均6.33時間。
・女性管理職の約2人に1人は、管理職就任後も労働時間に大きな変化なし。41%は労働時間が長くなったと回答。
・給与への満足度は、「満足」が13%、「やや満足」が29%、「どちらとも言えない」が25%という結果に。
・女性管理職の57%が管理職になり仕事のスケールが大きくなったと回答。
・女性管理職の63%が管理職になり裁量の大きさを実感していると回答。
・女性管理職の62%が管理職になり周囲からの信用・評価が高まったと回答。
・管理職になることを社内女性メンバーに勧めたいかという質問に対しては、「どちらとも言えない」とする回答が半数を超える。「勧めたい」とする回答は29%。
・今の会社は女性管理職が働きやすい環境が「整っている」とする回答が13%。「やや整っている(33%)」と合わせ、半数弱は、自社において女性管理職が相応に働きやすい環境があると回答。
・現役女性管理職が考える、女性活躍推進に必要なことの一位は「柔軟な勤務形態(テレワーク・フレックス・時短など)」。
・管理職になった決断について、「なってよかった」とする回答が48%で最多。「とてもよかった(12%)」と合わせ、女性管理職の60%が管理職に就いた決断に満足している結果となった。
・管理職に『なってよかった群』と『それ以外群』とに分けてクロス集計したところ、給与と共に、仕事のペース管理のしやすさが管理職キャリアの満足度を大きく左右すると推定される結果となった。
執筆:Be myself編集部