『楽な道と大変な道があれば、大変なほうを選ぶ』
株式会社ノバレーゼ 取締役執行役員 笹岡知寿子さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、株式会社ノバレーゼで取締役執行役員を務める笹岡知寿子さんにお話を伺いました。

笹岡 知寿子(ささおか ちずこ)さん
取締役執行役員 営業本部副本部長 婚礼衣裳事業管掌
うまくいかない理由を周りのせいにしていた

- 2003年の入社から20年以上、ノバレーゼの成長とともに、目まぐるしいスピードで異動を経験し、キャリアを重ねてきた笹岡さん。入社後、青山店、銀座店でのドレスコーティネーターを経験したのち、名古屋でウェディングプランナー、埼玉で式場の立ち上げ、栃木・宇都宮での支配人経験を経て、入社5年目には、中部エリアの支社長として100人以上のメンバーを持つマネジメントポジションを経験しました。
- 「自分を超えたいと思って全国転勤のあるノバレーゼを選んだのですが、引っ越しを伴う転勤には最初は戸惑いがありました。でも、それぞれ地域が持つ文化を学び視野が広がっていくと、3~4拠点目には『次はどんな出会いがあるんだろう』とわくわくした気持ちに変わっていきました」
- 順調にキャリアアップを重ねてきたように見える笹岡さんですが、成果を出せずに降格したこともあったそう。
- 「中でも大きな挫折は、30歳で挑戦した韓国法人の立ち上げです。そこで副社長を2年やらせてもらったのですが、うまく成果を出せずにウエディング事業の撤退を決めました。当初は永住する覚悟で渡韓したので、敗北感がすごくて…。しかもその後に異動した九州でも成績を上げられず、『転職したほうがいいのかな』と、ノバレーゼを去る選択肢が頭をよぎったこともありました」
- 次に結果が出なかったら辞めようと背水の陣で異動した長野で、プレーイングマネジャーとして力を発揮。成果が出るようになってようやく、過去の自分を振り返ることができたと話します。
- 「成果が上がらなかった時期は、ダメな理由を自分以外のところに見出そうとしていたんです。『マーケットが弱いから』『式場に魅力がないから』など、周りのせいにばかりしていました。長野では、3カ月で結果を出してから次のキャリアを考えます、と周りにも言い切っていて、自分を追い込みました。自ら言い訳のできない環境を作ったことで、これまでの自分の弱さや狡さに気づけたのかもしれません」
切り拓いた道は、次の世代に続いていく

- 結果を出したことで笹岡さんはエリア長に昇格。同時に妊娠・出産というライフイベントの変化も訪れます。「仕事が生き甲斐で仕事がすべて。起きている時間の大半は仕事に使っていた」という、それまでの生活スタイルから、時間の使い方が大きく変わり、周りとのかかわり方も変化していったといいます。
- 「コロナ禍や働き方改革の流れもあり、業務時間内でいかに効率的に、メンバーとのコミュニケーション密度を上げていくかを考えるようになりました。例えば夜に飲みに行くのではなく、ランチミーティングで対話を深めたり、オンラインを最大限活用したり。また、子どもとのコミュニケーションでは、どんな言葉でどう話せば伝わるのかが日々試されているので、以前の私を知るメンバーからは『話し方が丸くなって、今の笹岡さんのほうが好きです!』なんて言われています(笑)。子どもから学ばせてもらっていますね」
- 結婚や出産においても、大事にしているのは「自分が選んだ」という思いだと話します。
- 「妊娠や出産は女性であるからこそできた経験です。大変さも含めて、体や感情の変化、感動を味わうことができてありがたいな、という気持ちが大きかった。経験に対して、どこまでも欲張りなんだと思います。
今は、子どもがいる人もいない人も、一人で生きている人も誰かと生きている人も、人生の選択肢は多様にあります。自分の選択を仕事やキャリアに対する言い訳にしたくないですし、メンバーにもしてほしくない。そしてマネジメント側として、それぞれが進んだ道によってペナルティを負わされてしまうようなことは絶対にないように、フラットな環境づくりはとても意識しています」
- 女性が多く活躍するブライダル業界ですが、産休・育休を経て時短勤務で管理職を担ったのはノバレーゼでは笹岡さんが初めてなのだそう。自分が挑戦することで、道を切り拓いていく。そんなトライができる立場にいる人には、ぜひ挑戦していってほしい、と笹岡さんはいいます。
- 「今どこかで誰かが切り拓いた道のあとを、後輩の方が続いていきます。何かを選択すれば、その分整理しなくてはいけないことも出てくると思いますが、例えば子どもを産むことを選んだからキャリアを諦めるなど、どちらかの道を閉ざすことはしてほしくないなと思うんです。
もやもやと悩みを抱えてしまったら、それが小さいうちに紙に書き出してみては。もやもやの正体を分類して、解決できるところから取り組んでいけば、気持ちも晴れていくはずです」
- 笹岡さん自身が“これからやりたい挑戦”は、「結婚式の新しい形を作っていくこと」だと力強く話します。
- 「結婚や結婚式に対する価値観は、私が入社してからの20年で大きく変化しています。結婚式をあげたくない若い世代も増えています。そういう方たちとコラボして、結婚式の新しいスタンダードを生み出すことができたら、ブライダル業界の未来も変えていくことができるかもしれません。
目の前に楽な道と大変な道があれば、大変なほうを選びたい。現状維持や前例踏襲ではない難しいチャレンジを、これからも続けていきたいです」
→「前編記事」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子