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マイキャリアストーリー

『楽な道と大変な道があれば、大変なほうを選ぶ』
株式会社ノバレーゼ 取締役執行役員 笹岡知寿子さん【前編】

誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と決断できた理由を語っていただきます。

今回は、株式会社ノバレーゼで取締役執行役員を務める笹岡知寿子さんにお話を伺いました。

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笹岡 知寿子(ささおか ちずこ)さん

取締役執行役員 営業本部副本部長 婚礼衣裳事業管掌

未来が想像できないからこそ、ノバレーゼに惹かれた

婚礼施設やドレスショップ、レストラン運営などのブライダル事業を展開する株式会社ノバレーゼ。2024年3月から取締役執行役員に就任した笹岡知寿子さんは、営業面からドレスの仕入れまで婚礼衣裳事業全体の統括を担っています。社長から直々に取締役人事を伝えられたときは、「初心に返る思い」で挑戦を引き受けたといいます。
「衣裳部門の統括として、時代のニーズを敏感に取り入れながら、欧米のブランドのバイイング(仕入れ)から契約書の取り決め、納品までトータルで管掌する重要な役割を担っています。衣裳部門は、入社して最初に配属された部門。もう一度、新たな挑戦をスタートする気持ちで向き合っています」
現在、従業員数2,000人を超えるノバレーゼですが、笹岡さんが新卒で入社した2003年当時、正社員数は6人。小さなベンチャー企業への就職を決めた背景には、笹岡さんが育った環境が影響しているといいます。
「自営業の両親のもとに育ち、父は地元の小さな商店を、母は寿司屋を営んでいました。両親がお客様と向き合い、接客する姿がとても楽しそうで、自然と“自分が商店を継ぐ”ことが小さい頃からの夢になっていました。
大学に進学し、就職活動の時期を迎えても、家業を継ぐという将来像が揺らぐことはありませんでした。商店を発展させていきたい、そのために小さな会社から上場を目指す環境に身を置いて、事業拡大のプロセスを学びたい。ベンチャーに行きたいと思ったのは、そんな理由でした。就職活動は社会勉強だ!という思いで100社近くエントリーし、あらゆる業界、大小さまざまな企業を見に行きました」
世の中の仕事を幅広く知るためにブライダル業界にも足を運んだ笹岡さんは、ノバレーゼが持っていた“勢い”に引き寄せられるように入社を決めました。
「当時の社名は『ワーカホリック』。今の時代ではタブーみたいな社名なのですが、説明会で経営陣から、どれだけ一緒に頑張れるかと挑戦状をもらったような気持ちになったんです。気づけば、この人たちの熱量に負けたくない!一緒に上場まで目指したい!と思っている自分がいました」
就職活動では大手企業からも内定をもらっていたという笹岡さん。大学の友人たちからは、「なぜ将来どうなるかわからないベンチャーに行くのか」と首を傾げられたそう。しかし笹岡さんにとっては、将来が想像できない環境こそが魅力的でした。
「大手企業では、5年後には課長職を目指すんだろうなと、ある程度自分のキャリアステップが見えていました。でも、ノバレーゼの5年後、10年後は、自分がどこで何をしているかまったく想像できなかった。だからこそ、ここなら未知の自分に会えるんじゃないか、今の延長線上にある成長を超えていけるんじゃないか、とわくわくしたんです。母からは、『若いうちの苦労は買ってでもしなさい』『楽な道と大変な道があったら、大変なほうを選びなさい』とずっと言われていたので、その基準が根付いていたんでしょうね。どうせ働くのなら、お金のためだけじゃなくて、人生をかけて働ける環境に行こうと思いました」

ブライダルは一生に一度の非日常を作る仕事

入社後は、衣裳事業部に配属され、約1年間ドレスコーディネーターを経験。結婚式の会場が決まったお客様への衣裳の提案、ベールやグローブ、アクセサリーなどの小物の打合せのほか、ウォーキングや美しい姿勢を見せる練習、メイクやフラワーデザインを含めたビューティーアドバイザーを担当しました。その後、ウェディングプランナー職に異動し、4年目にはメンバーを持つ「支配人」のポジションを任されるようになります。
「入社して驚いたのは、徹底して”任される“ことでした。自分で意思決定してその責任を自分でとる、という経験を1年目からさせてもらって、気づけば4年目には支配人をしていた。自分の想像を超えるスピードで役職についていって、目が回るように働いていましたね」
もともとベンチャー企業を志し、ブライダル事業そのものに興味はなかったという笹岡さん。仕事を続ける中で、ブライダルの仕事に対する考え方が変化していったといいます。
「無形のサービスに対価を払っていただくのがブライダルのお仕事。お客様が求めるイメージと違うサービスを提供してしまったら、取り返しがつきません。お客様のためにどこまでも尽くした結果、それ以上の幸せをいただけるのが、仕事の面白さだと感じています」
今でも忘れられないと話すのは、支配人になりたての4年目の出来事。新人メンバーが担当したお客様からお叱りを受け、結婚式後に「タイムマシンを作ってほしい」と言われたことがあったといいます。
「『もう一度結婚式をやり直したい』ということですから、ウェディングプランナーにとってはとても厳しい言葉です。結婚式自体は楽しんでいただいたのですが、例えばウェルカムポスターの貼る位置がイメージと違っていたり、親族の皆さんにご協力いただくところで不備があったりしてしまって…。結婚式は、私たちブライダル企業で働くスタッフにとっては、仕事という“日常”の中で行うもの。でもお客様にとっては、一生に一度の非日常です。これから出会うお客様には、同じような思いを絶対にさせてはいけないと、結婚式の重さを痛感した経験でした。
私がもし1年目だったら、いただいたお叱りに対して、『こんなに頑張ったのに…』と思ってしまったかもしれません。でも、そう受け取ったところで、自分は何も成長しません。起こったことをいかにチャンスとしてとらえて、ポジティブに学びとして吸収していけるか。その考えはずっと大事にしてきたと思っています」


→後日公開の「後編記事」に続きます





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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子

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