『経験し、自信をつけることが道を開く』
FPTジャパンホールディングス・専務執行役員 グェン・ホアン・リンさん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、FPTジャパンホールディングス株式会社 専務執行役員 兼 最高レベニュー責任者のグェン・ホアン・リンさんにお話を伺いました。
グェン・ホアン・リンさん
FPTジャパンホールディングス株式会社
専務執行役員 兼 最高レベニュー責任者
来日後の経験を武器に、大手日系企業への営業を成功させる
- 2013年にFPTジャパンホールディングス(以下、FPTジャパン)に入社したリンさん。就職活動時から営業職を志望していたと言います。その理由を伺うと「大きな金額を数えるのが好きだし、お金も好きだから(笑)」と、気取らず答えてくれました。
- 「就職活動を行っていたとき、そこまで明確なキャリアビジョンを持っていませんでしたが、『ベトナムのために何か貢献できれば』とは思っていました。
日系企業からもいくつか内定をいただきましたが、通訳や翻訳、総務といった仕事しかありませんでした。でも私は昔から、大きな金額を数えるのが好きでしたし、お金も好き(笑)。そんな自分に適した仕事は何だろうと考えた結果、営業職に応募することにしたんです。
ちょうどFPTジャパンは営業職を募集していました。FPTジャパンは、まさにベトナムと日本の架け橋になっている企業で、FPTグループはベトナムを代表する大手IT企業。ここでならベトナムのために活躍ができると思い、入社を決めました。
実際、日本で一番大きなベトナム企業であり、ベトナム政府とのつながりもあります。日本での成功がベトナムのブランド力向上にもつながると実感しています。それがとても誇らしく、私自身のモチベーションにもつながっていますね」
- 約1年間、社長秘書を務めたのち、希望の営業職へ配属。来日してから培った“積極性”を武器に、入社直後から大手日系企業とのつながりを築いていきます。
- 「日本の大学進学時に企業の奨学金制度を利用していて、企業が主催する奨学生向けの食事会に何度か参加する機会がありました。その際に、多くの日系企業の社長や役員の方々と名刺交換ができました。
そこでFPTジャパンに入社後、秘書業務をしながら『数年後には希望していた営業職に就けるだろうから、名刺交換した社長へ挨拶しておこう』と考えました。『今、FPTジャパンというベトナムの大手企業に就職しました。一度ご挨拶させてください』と連絡を取り、資料を渡して『今後、FPTジャパンとお仕事できる機会があれば、ぜひご検討ください』と、直接お伝えしていました。
その後、営業に異動になったとき、ご挨拶した大手日系企業数社が、FPTジャパンのお客様になってくれていたことを知り感激しました。自分のアプローチが実を結んだのを目の当たりにして、『営業ってこんなに面白いんだ!』と、営業職の面白さを実感しましたね。そのうちの1社は今、FPTジャパンの重要な取引先になってくださっているので、本当に感慨深いです」
年上メンバーを率いるコツは、密なコミュニケーション
- CROとして全体を俯瞰した働き方をする一方で、営業メンバーへの細やかな配慮も伺えました。
- 「今、私がリーダーとして率いている営業チームは、最も日本人が多いチームですが、中途採用の方が多く、40〜50代の男性が中心です。全員、私よりも年齢は上ですが、あまり年齢は気にしていません。
うまくマネジメントしていくには、やはり密なコミュニケーションが何よりも重要だと考えています。むしろ、ほとんどの失敗はコミュニケーション不足が原因だと思います。特に最近はテレワークが普及し、オンラインでのやり取りが増えました。ですが、顔を見ずに声だけでやり取りするのはNGです。直接会って、顔を見て、どんな表情なのかを確認しながらコミュニケーションを取ることが重要だと思うんです。
密なコミュニケーションを心がけているので、メンバーも何か困ったことがあればすぐに相談に来てくれます。
営業経験自体は、私よりも彼らの方が豊富ですが、私は“FPTジャパンという看板を活かすためのノウハウ”を伝え、お客様との関係構築を支援するようにしています。FPTジャパンでの経験は私の方が長いですからね。そうすることで、メンバーも働きやすくなると思っています」
自分のための人生・キャリアを大切に
- 最後に、キャリアに悩む女性に向けてメッセージをいただきました。
- 「管理職になりたがらない女性が多いという話をよく耳にします。確かに日本ではまだまだ、女性管理職の事例が少ないかもしれませんが、大手企業を中心に、ここ数年で急激に増えてきました。そういった方々の活躍を参考にしながら、チャンスが巡ってきたら、ぜひ自信を持って管理職にチャレンジしてほしいと思っています。男性には管理職ができるのに、女性にはできないなんてことはない。私は、女性にもその力が備わっていると信じています。
また、仕事と子育ての両立に悩む方もいますよね。私自身も、まだ小さい子どもが2人います。日中の仕事に加え、夜は会食もあり、平日はなかなか子どもたちとの時間が取りにくいのが現状です。その代わり、休日はできるだけ仕事をせず、子どもたちや家族との時間を大切にしています。家族がいい表情でないと、仕事のパフォーマンスも安定しないですからね。でももし、『仕事と家族のどちらか一つだけを選べ』と言われたら、私は家族を選ぶと思います。おそらく、多くの女性が同じ決断を下すのではないでしょうか。
それでも……、自分のキャリアも大切にしてほしい。多くの人が60〜70歳ごろまで働くことを考えると、人生のうち40年近くは仕事人として過ごすことになります。一方で、子どもたちは20年程で巣立っていきます。子育て期間よりも仕事をする期間の方が長いんです。
人生の多くの時間を費やすからこそ、自分にとっての仕事の面白さ・楽しさを主体的に見つけ出す。それを足掛かりに“自分のためのキャリア”を築いていってほしいです」
→「前編記事」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:北森 悦