AI時代、管理職は何を評価すべき?「頑張り」が見えなくなる時代のマネジメント論|山本悠介さん監修
AIの普及により、職場の風景は大きく変わり始めています。部下が作る資料の完成度が上がった一方で、「どこまで本人の実力なのかわからない」「何を基準に評価すればいいのか迷う」という管理職の声も。AI時代、管理職は何を見て評価し、どのように部下を育成すればよいのでしょうか。今回は、AI活用専門家の山本悠介さんに、AI時代に求められるマネジメントについて伺いました。
監修者:山本 悠介(やまもと ゆうすけ)
AI活用専門家。株式会社renue 代表取締役社長。新卒でアクセンチュア株式会社に入社、金融・IT領域のコンサルティングに従事。その後、株式会社ジラフでプロダクトオーナー兼CMOを務める。フリーランスコンサルタントとして活動後、2021年に株式会社renueを設立。マーケティングを含めたアジャイルなプロダクト開発を得意とする。
AI時代に評価すべきは「チャレンジ精神」と「PDCA」
- ―AI活用が広がる中で、管理職がマネジメントで戸惑いやすいポイントとは?
- 山本:これまで「優秀な人」を見極めるために使われていた指標が機能しなくなってきていることです。これまでは人の能力を判断する材料の一つとして、話し方や態度、知識量、学歴、資料作成能力も重視されてきました。例えば採用の際も、履歴書の誤字脱字や面接での受け答えなどが評価の指標として使われてきましたよね。
でもAIを使えば、これらが得意ではない人でも質の高い成果物を作れるようになるため、従来の評価基準では人の能力を判断できません。管理職は前例が無い中で「本当に優秀である」とは何なのかを考えなければならないのです。
最近では、未経験の若手がAIを使って高品質なアウトプットを出してくるケースも珍しくありません。AIを活用している企業の方がアウトプットのスピードが速いのも事実です。おそらく1~2年後には「AIの業務活用を禁止する」という選択肢自体が現実的ではなくなると思います。
だからこそ今後は、「AIを使ったから評価しない」ではなく、「本人が内容を理解しているならAIを使っていても問題ない」と考えることが大切です。
- ―管理職は部下のどこを見て評価すべき?
- 山本:今のスキルがどれくらいあるかよりも、「チャレンジ精神」と「PDCAを回しているか」を見るべきです。これは今後の伸びしろに繋がります。
AIによって勉強や学習のハードルは大きく下がりました。その分、競争相手もものすごいスピードで成長します。だからこそ、従来以上に新しいことに挑戦し、多くの失敗をし、反省し、成長し続けることが重要になります。ある意味「はみ出ていく力」ですね。挑戦、失敗、思考、反省、成長というPDCAを回すことが大切です。
AIは学習や試行錯誤のスピードを加速させます。PDCAを回している人は、その恩恵を最大限受けられるので、驚くような成長を遂げることがあります。AIのおかげで、今後は未経験から1年でスーパープレイヤーになる人が出てきても不思議ではありません。
- ―では、AI活用が当たり前になる中で、価値が下がるスキル・上がるスキルとは。
- 山本:価値が下がるのは、どんなに習得難易度が高くても教科書を読めばできるようになるスキルです。例えば、人間にとって六法全書を全部覚えることは難しいですが、AIにとっては簡単なので。あとは既存情報をPowerPointにまとめるような、整理するだけのスキルです。
一方で価値が上がるのは、不足している情報を自ら探しに行く力です。顧客から情報を引き出したり、現場に足を運んだり、課題や問題の構造を考えたりする力は今後さらに重要になります。つまりは、プロジェクト管理の知識、コミュニケーション力、ドキュメンテーション力、課題解決力といった「PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)スキル」です。
管理職が育てるべきは「言語化能力」と「観察眼」
- ―AI時代の育成について。部下の伸ばすべき能力とは?
- 山本:AIにはない言語化能力と観察眼です。AIは非常に優秀ですが、人間の意図を汲み取ることは苦手です。例えば、人間ならばオンラインでの打ち合わせ中に画面を見たときに、相手の微妙な表情の変化などから、言葉にしていない思いや状況まで推察できますよね。でもAIは、基本的には「事実」しか説明できません。オンライン会議の録画からAIに推察させても「3名が映っていて、スーツを着た男性が笑っており…」というメモ帳レベルの出力になる。
だからこそ、人が見たことや感じたことを適切に言葉にする力が重要になります。物事を完璧に言葉にすることは不可能ですが、大切なところを切り取って上手く言葉に表せる人材は希少です。この力は、そのままAIへのインプット力になります。
また、観察眼がなければ、そもそも何を言語化すべきかもわかりませんし、AIの出力ミスにも気づけません。
- ―どのように育成するべき?
- 山本:言語化能力と観察眼のトレーニングとして、日々の報告を必ず文章で残してもらうこと。端的に言うと、大学入学共通テスト(センター試験)の国語レベルの文章力を日々鍛えるイメージですね。
ちなみに弊社では「文字に残っていないことは共有されていない」と考えています。コミュニケーションの頻度を増やすために物理出社を徹底していますが、正確に伝えるべきことは文字で残すようにしています。さらに、AIにチャットの内容を確認させ、日本語表現やコミュニケーション上のズレがないかもチェックしています。
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後編では、AI時代の管理職の役割や組織運営について解説します。
(取材・執筆/菱山恵巳子)





