『経験ゼロからでも、学びながら挑戦していく』
日工株式会社・広報 岡橋早苗さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、日工株式会社で広報を担当しながら、同グループ会社のトンボ工業株式会社取締役を務める岡橋早苗さんにお話を伺いました。
岡橋 早苗(おかはし さなえ)さん
2016年に日工株式会社に新卒入社。事業企画部に配属され、営業管理システムの導入や運用を担当。産休・育休を経て、2021年より経営企画部経営企画課で広報業務を担当。2024年5月よりトンボ工業株式会社取締役に就任。
常に現状に疑問を持ち、課題があるなら改善していく
- 『必要ならば作ろう』という思いで、広報プロジェクトを立ち上げた岡橋さん。もともと、常に現状に疑問を持ち、課題があるなら改善したいと考える性格だったといいます。
- 「日工には、会社のためになることであればどんなことでも立案すべき、というカルチャーがあって、年次に関係なく発案を受け入れてくれる土壌があるんです。
事業企画部にいた2年目には、顧客情報管理に課題があると感じて名刺管理ツールの導入を起案し、テスト運用から全社展開までをリードしました。
広報をやりたいと役員会で予算取りをしたときも、日工ならやらせてくれるだろう、と思っていました」
- 産休・育休を経て職場に復帰した際も、課題を見出し改善していく姿勢は変わらず、タスク管理ツールの導入も決めたと話します。
- 「子どもが生まれてはじめて、自分が“いつ仕事を休むかわからない状況”に置かれました。子どもが突然熱を出しても業務が滞らないようにするには、タスクの見える化が欠かせません。そこで、すぐに使えるタスク管理ツールを導入。経営企画部内のメンバーに共有し、業務内容をリスト化することにしました。タスク管理は、そもそもチームで仕事を進める上で必要不可欠なもの。今後、誰がどんな形で休んでも大丈夫なように、これを機に社内に広げようと考えました。」
- 岡橋さんが復帰した当時、子育て中の女性社員は少なく、仕事と育児を両立しながらキャリアを積めるのか疑問に感じていたといいます。ただ、会社全体が働き方や評価制度を見直す流れの中で、その不安は小さくなっていきました。
- 「復帰したとき、女性でマネジメントポジションについている人は一人もいなかったんです。でも、今では主任や係長の女性も増えていますし、2023年に人事制度が変わったことで昇給昇格のチャンスもぐんと広がりました」
- そして岡橋さん自身も、日工グループで初となる、女性の取締役に抜擢。『グループ全体でより良い環境を作っていこう』という流れにも後押しされ、挑戦を続けています。
- 「社長から取締役就任を打診されたときは、本当にびっくりしました。これまでの日工グループの取締役は、日工の役員か管理職が就任していましたが、私は役職もついていないし、子育て中。『本当に私でいいの?』というのが最初の気持ちでした。
でも、若手人材の積極採用や、働きやすい職場づくりのための惜しみない投資など、近年、会社が本気で変革を進めていることは肌で感じていました。
それだけに、『これまでの広報・PRの経験を、トンボ工業の魅力発信に還元してほしい』という社長の想いに応えたい気持ちが強かった。私も自分にできることで貢献しようと思っています」
心の安定を優先して家事を外注。素直に人の手を借りる
- 当初、苦悩した子育てによるキャリアの中断。今では「焦らなくてもいい」と思えるようになったと話します。
- 「産休・育休をとっていたときは、休んでいる分キャリアが遅れてしまうんじゃないか、と焦りや不安がありました。でも、一度休んだからこそ、ゼロから広報職としてキャリアをリスタートしようというエネルギーが湧いてきた。何をしようかと立ち止まって考える機会があったから、今があるのだと思っています。与えられた環境や時間の中で、自分にできることを模索する。そうすることで、キャリアが広がるチャンスは生まれてくるんじゃないかと思います」
- 社内で働く環境や働き方の改善を進めてきた岡橋さん。家事においても、どうしたらより心地よく進められるかを考え、行動に移しています。
- 「復帰後、半年くらいは仕事も家事も完璧に…と頑張っていて、土日のどちらかは作り置きのおかず作りで一日つぶれていました。でも、だんだんとそれがしんどくなってきて、せっかく作ったご飯を家族が食べてくれなかったりするとイライラするようになってしまった。これはよくないなと思い、土日は買い物だけして、月曜に家事代行の人に1週間分の食事作りをお願いすることにしました。お金はかかるけれど、食材の使い方が上手で、どれもおいしい。仕事を終えた後にご飯を作らなくていいということがすごく気持ちを楽にしてくれました。
両立に悩んだら、立ち止まって優先順位をつけ、場合によっては素直に人に頼る。すべて頑張ろうと気を張っているより、誰かにお願いできることはお願いして、私がニコニコと心穏やかにいられるほうが、仕事でも家庭でも、いい循環が生まれると思っています」
- 自ら手をあげて広報の仕事を始めて約3年。「もっと早く始めていればよかった」と思うことも多く、情報発信への反響に手ごたえを感じています。
- 「最近、日工の技術開発の取り組みをメディアが取り上げてくれることも増えてきました。それだけに、『もっと早く広報業に力を入れていたら、今よりさらに売り上げを伸ばせていたのではないか』と悔しい気持ちもあります。でも、過去を悔いても仕方ない。これから取り返せるようにさらに力を入れていきたいですね。
広報にチャレンジしたのも、取締役就任の打診を受けたのも、『チャンスがあるうちにやりたい』と思ったからです。巡ってきたチャンスを手放してしまったら、次いつやってくるかわからないし、もう一生巡り合えないかもしれません。私の場合は、たまたま、社長が私の仕事振りを見ていてくれて機会につながりました。いろんな人の出会いやタイミングが重なって、チャンスがある。目の前の貴重な機会を逃さないように、これからも挑戦を続けていきたいです」
→「前編記事」
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写真提供:日工株式会社
取材・執筆:田中 瑠子