管理職のための、仕事でのChatGPT活用法
今回のテーマは話題の「ChatGPT」。仕事でどうやって使うの? 管理職として知っておくべきことは? いま押さえておきたいChatGPTの基本をミホさんがマユミさんに教わります。
(※情報は2023年7月31日時点のものです)
34歳独身。明るく人懐っこい笑顔で、愛され上手。一方で、ややがさつな面もあり、不用意な一言で周囲をヒヤリとさせることも。営業職から企画職に移り、そろそろマネジメントを任されそう。親からは早く結婚するよう急かされているのも、モヤモヤのタネ。
42歳既婚。いつも落ち着いていて、気配り上手な優しい先輩……というのは表の顔で、実は些細なことで悩みがちな小心者。寝る前はその日の自分の言動を振り返ってモヤモヤするのが定番。現在はミホさんの隣の課の課長。小学生男子の子育て中。
目次
ChatGPTはあくまで「叩き台」を作るツール
ミホさん
マユミさんはChatGPTって使ってますか? 私はプライベートでちょっと触ってみたのですが、仕事で具体的にどのように使っていいかわからず、うまく活用できていなくて。
マユミさん
私は少しずつ業務に取り入れてるよ。
ミホさん
ぜひ参考にさせてください! どんなことに使っていますか?
マユミさん
メールの文章生成や、企画書のドラフト版作成とか。あと、事務職の同期は、Excelのデータ集計をするためにChatGPTにマクロ(Excel操作を自動化する機能)を書いてもらってたよ。
ミホさん
やっぱり業務時間の短縮になりますか?
マユミさん
一概に何時間減った! とは言えないけど、文章の叩き台を作ることには使えるから、その空いた時間で他の業務に集中したり、新しいことを始めたり、時間を有効に使えるようになったかもしれない。
ミホさん
叩き台、というのはどういうことでしょうか?
マユミさん
すべての業務をChatGPTに任せるのではなく、最終的に考えたり調整したりするのは自分。あくまで仕事の準備段階をChatGPTに助けてもらう感覚かな。
ミホさん
なるほど。
マユミさん
例えば、さっきのChatGPTにマクロを書いてもらう話だと、これまでデータ集計を自動化するためには、まず自分がマクロの知識を学んで、書いて、Excelに反映しなければならなかった。でも、マクロをChatGPTに任せることで、学んだり書いたりする時間が短縮される。その分、データを見て分析する時間に充てられるよね。ChatGPTを使うことで、新しい仕事に取り組むことができるんだよ。
仕事で使うなら、有料版「ChatGPT Plus」がオススメ
ミホさん
無料版と、有料版のGPT Plusがありますが、どちらを使ってますか?
マユミさん
有料版を使っているよ。一般的なソフトウェアだと、有料版と無料版の違いは機能の数だと思うんだけど、ChatGPTの場合は、機能の数だけでなく、そもそもの能力が違うんだよ。
ミホさん
有料版の方が、質の高い回答を得られる、ということでしょうか?
マユミさん
簡単に言うと、そういうこと。無料版と有料版だと、使っている言語モデルが違うんだ。無料版の言語モデル「GPT-3.5」より有料版の最新モデル「GPT4」の方が回答の整合性が高まっているの。
例えば、令和4年度の大学入試共通テストをChatGPTに解かせた実験では、倫理・政治・経済でGPT3.5は18%の正答率に対して、GPT4は80%の正答率だったんだって。受験者平均の69%よりも高い結果だったんだよ。
参考:usutaku@AI情報解説note「ChatGPTに共通テスト(旧センター試験)を解かせてみた」
ミホさん
こんなに差がつくんですね!
マユミさん
月額20ドル(約2700円)だし、仕事で使うなら有料版の方がオススメかな。
ミホさん
有料版ならば正しい回答をしてくれるから安心ですね。
マユミさん
いや、簡単に言うとChatGPTはあくまでランダムに「次の言葉」を予測してくれるシステムなんだよ。だから正しさの判断をAI側が行なうのは難しいし、特に答えが一つしかない場面の回答は苦手なの。
ミホさん
例えば、どういう場面が苦手なのでしょうか?
マユミさん
「今の内閣総理大臣を教えて」「2023年のWBC優勝国は?」「今日は何日?」とかは間違った回答が出る可能性があるの。そもそもChatGPTに学習されているデータは2021年9月時点のものだから、最新情報には答えられないっていう弱点もあるんだよね。
ミホさん
だからあくまで文章の「叩き台」を作るにとどめるべきなんですね。
マユミさん
どんな仕事でも、調べた情報が正しいかのファクトチェックは行うと思うんだけど、ChatGPTも同じ。何でもかんでも任せっぱなしにするのはNGってこと。
プロンプト入力は、部下への指示と同じで具体的に
ミホさん
では、業務での具体的な使い方も教えてください!
マユミさん
「プロンプト」と呼ばれる指示を入力するんだけど、これを入力すれば、この回答がもらえる! っていう万能なプロンプトはないの。プロンプト入力も、人に指示をするのと同じように、具体的に状況を説明して、辛抱強く対話をしていくのがポイント。
ミホさん
例えばどんなプロンプトを使っていますか?
マユミさん
メールの文章を考えたい時には“「明日の会議に出席する必要はありますか?」この文章を上司に送る用のメール文章に直してください。”とか、商品企画を考えている時には“プロのコピーライターとして振る舞ってください。ミネラルウォーターの商品タイトルを考えてください。なお、商品のメインターゲットは、40代の男性です。”とか。それに対して、ChatGPTから逆に質問が返ってきたら、丁寧に回答して回答の精度を高めていく。
ミホさん
たしかに、自分と相手はどんな立場で、何をしてほしいのか具体的ですね。
マユミさん
部下への指示も「ミネラルウォーターの商品名考えて」だけだったら何も伝わらないのと同じだよね。
ミホさん
そうですね。ちなみに、こういった商品タイトルなどのChatGPTが考えたアイディアって、そのまま使っても大丈夫なのでしょうか?
マユミさん
ChatGPTを運営しているOpenAI社がユーザーが生成した文章に対して著作権を主張することはないよ。でも、ネーミングなどの生成した文章をすでに他の企業が使っている可能性もあるよね。だからChatGPTの回答をそのまま使わずに、最後は人間が確認する必要があるんだよ。
ミホさん
そうですよね。その点は、人間同士の企画会議と同じですね。考えたアイディアを他の企業がすでに使っていないかは必ず確認しますもんね。
顧客情報をプロンプトに入れるのはNG
マユミさん
また、ChatGPTはユーザーが入力した情報も学習データとして活用するから、未発表の事柄を入力したら、それが他の人の回答で使われる可能性もあるから気を付けてね。
ミホさん
危ないですね。その点、職場内でもルール決めが必要になりそうです。
マユミさん
そうなの。私のチームでは顧客の情報をプロンプトに入力するのは禁止にしているのと、生成した文章をそのまま顧客に見せるのは禁止にしているよ。企画案であってもメールの文章であっても、ChatGPTの文章には間違いや不自然な箇所はあるのが前提。必ず最後は人の手での調整が必要。
ミホさん
その2点は徹底しないといけませんね。
マユミさん
その上で、新しい技術に恐れずにまずは触ってみることが大切かなと思うんだ。
ミホさん
よく「AIが人の仕事を奪う」と言われがちですが、マユミさんの話を聞いて、そうではなくて、AIは人間の仕事をサポートしてくれるツールということがよくわかりました!
POINT
①ChatGPTは文章の「叩き台」を作るツール。必ず仕上げは人の手で。
②プロンプト入力は部下への指示と同様、前提条件としてほしいことを具体的に。
③プロンプトとして入力した情報は、AIの学習に使用される可能性も。顧客情報を入力することはNG。
監修者:usutaku
AI活用インフルエンサーとして、AIを日常使いする方法をSNSで発信中。Notion公認資格所持。企業へのAI導入や受託開発、Notion運用支援の実績多数。国際基督教大学卒業。