ジェフ・ベゾスも実践!真のリーダーは「読解力」を磨いていた!
かのジェフ・ベゾスも重視した“読む力”。昨今、真のリーダーには、“話す力”だけでなく、相手の感情や沈黙、行間を読み取る「読解力」が必要といわれています。
これからの女性リーダーの新たな強みとなりえる、この「読解力」について、元渋谷教育学園渋谷中学高等学校・国語科教諭の市野瀬早織さんにお話を伺いました。
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市野瀬 早織
岡山県生まれ/早稲田大学大学院教育学研究科国語教育専攻修了/教育学修士
2008年から2018年にかけて、東京大学合格者を多数輩出する進学校「渋谷教育学園渋谷中学高等学校」にて、専任の国語科教諭として勤務する。
2018年4月からは、人材開発事業に携わり、同年7月に独立。2024年8月には株式会社The Rhythmを創業する。教育学の専門性と進学校での指導経験、そして人材開発の知見を掛け合わせた「読解力を子育てに活かす」独自のメソッドを体系化。子どもの主体性と問題解決力を育てる教育プログラムを展開し、多くの受講生を抱える。
世界のトップリーダーが磨く「読解力」
「リーダーには、伝える力が必要だ」そう言われることは多いでしょう。
・プレゼンテーション能力
・交渉力
・発信力
・影響力
特に女性リーダーはこれまで、「もっと自信を持って話すこと」「遠慮せずに発言すること」を求められてきました。
もちろん、「話す力」は大切な力です。けれど、世界のトップリーダーたちを見ていると、実は本当に優れた人ほど、別の力を磨いていることに気づきます。
それが「読む力」。つまり読解力です。
ここでいう読解力とは、単なる国語力ではありません。
・相手の言葉の奥にある感情を読む力
・数字の裏にある変化を読む力
・組織の空気を読む力
・チームの沈黙を読む力
・顧客がまだ言葉にできていない欲求を読む力
そんな「行間を読む力」のことです。そして実は、Amazon創業者のジェフ・ベゾスも、この「読む力」を極めて重視していたリーダーの一人でした。
Amazonは「話す会議」ではなく、「読む会議」をしていた
Amazonには有名な文化があります。
それは“PowerPointを使わない会議”。Amazonでは、一般的なスライド型プレゼンを行わず、代わりに「ナラティブ形式の6ページメモ」を作成します。そして会議の冒頭、参加者全員が黙ってそのメモを読むのです。
ジェフ・ベゾスは株主向け書簡の中で、こう語っています。
「優れたメモは、明晰で思慮深く、会議を質の高い議論へと導く」
【参考】2017年度 株主向け書簡 (2018年4月18日公開)
つまりAmazonは、話す速さより「理解の深さ」を重視していたのです。多くの組織では、
・すぐに意見を言える人
・声が大きい人
・場を仕切れる人
これらの人が評価されやすい傾向があります。けれど本当に重要なのは、じつは「どれだけ深く読み取れているか」。
浅い理解のまま発言するより、一度立ち止まり、読み、考え、本質を理解することの方が、組織にとって価値がある。
ベゾスはそれを知っていたのでしょう。
女性リーダーこそ、「読む力」が強みになる!
従来の男性リーダーがそうであったように、最近まで多くの女性リーダーは、
・強く主張すること
・堂々と話すこと
・自信を見せること
・理路整然と伝えること
などを求められて来ました。
中には、社会で語られる「女性像」とのギャップから、そうした言動をとることに抵抗を感じる方も少なくないかもしれません。
たしかにリーダーシップを発揮するためにそうした言動が必要な場面もあります。けれど実際の現場で最後に信頼されるリーダーは、必ずしも「一番うまく話す人」ではありません。
むしろ、相手の小さな違和感に気づく人や、チームの温度変化を察知できる人、さらには言葉にならない不安を汲み取れる人などが、長期的に信頼を積み上げていきます。
たとえば、会議で部下が「大丈夫です」と答えたとします。表面的には問題ありません。でも、本当に優れたリーダーは、その言葉だけを見ません。
・声のトーン
・表情
・間
・視線
・最近の働き方
までを総合して読んでいます。すると、
「本当はかなり疲れているのではないか」
「無理をしているのではないか」
「相談できずに抱え込んでいるのではないか」
という「行間」が見えてくる。
この力は、AIにはまだ難しい、人間的な読解力です。そして、この人間的な読解力こそ、女性リーダーがこれから新しいリーダー像を作り上げていくうえで、重要なスキルとなっていきます。
なぜ今、「読む力」が必要なのか
今は、情報が溢れている時代です。SNSを開けば、誰もが発信者になれる。AIは瞬時に文章を生成し、会議では次々に言葉が飛び交います。
けれど、言葉が増えれば増えるほど、逆に「本音」は見えにくくなっています。
・本当は苦しいのに「大丈夫」と言う
・孤独なのに笑顔を見せる
・退職希望を出す寸前なのに「問題ありません」と言う
そんなことは、職場で日常的に起きています。つまり今の時代は、言葉をそのまま受け取る力ではなく「言葉の奥を読む力」が必要なのです。
特にリーダーには、情報処理能力以上に「人を理解する力」が求められるようになっています。
AIはデータ分析が得意です。
けれども、人間の微妙な感情の揺れ、空気感、違和感、沈黙の意味までは、まだ完全には読み取ることができません。
だからこそ、これからの時代は、「読む力」を持つ人が価値を持つ。私はそう感じています。
チームメンバーの本音を読み違えない人が、最終的に選ばれる!
今の時代、リーダーに最も求められているものの一つが「心理的安全性」です。
つまり「この人になら本音を話せる」と思ってもらえること。
しかし、本音というのは、最初から言葉で出てくるとは限りません。むしろ、多くの場合、遠慮や沈黙、曖昧な返答、笑顔、さらには「大丈夫です」のような言葉の中にも暗に含まれている別の本音があるくらいです。
だからこそリーダーには、じつは「言葉をそのまま受け取らない力」が必要なのです。
たとえば、離職寸前の社員ほど「大丈夫です」「問題ありません」と言うことがあるかもしれません。本当に危険なのは、強く不満を言っている人ではなく、静かに限界を迎えている人だったりするものです。
読解力の高いリーダーは、その変化を見逃しません。
・返信速度が落ちている
・雑談が減った
・発言回数が減った
・笑顔が消えた
そんな小さなサインを読んでいます。
そして、この「読む力」があるリーダーの周りには、優秀な人たちが残ります。
なぜなら人は、「このリーダーは、ちゃんと自分を見てくれている」と感じる相手を信頼するからです。
読解力が低いリーダーに起きること
逆に、「読む力」が弱いリーダーは何を見落としてしまうのでしょうか。それは、表面上はうまくいっている組織において起こりがちなことです。
数字は悪くないし、会議も進んでいる。誰も文句を言わない。しかし実際にはメンバーが疲弊していたり、挑戦を諦めがちだったり、本音を言わなくなっていたり、相談が減っていたり……といった変化が起こっていることがあります。
読解力が低いリーダーほど、「言葉の表面」しか見ていません。しかし、組織の危機はいつも「行間」に現れるもの。このような小さな違和感を見逃さずにその場で適切な対処を選択できるリーダーこそが、最終的に強い組織をつくるのです。
ベゾスが見ていたのは、「顧客の言葉」ではなく「顧客の未来」
ジェフ・ベゾスは、別の株主向け書簡でこのような内容を語っています。
「顧客に何が欲しいかを聞くことは重要だ。しかし、それだけでは足りない。
最も大きな変化を生むものは、顧客自身がまだ求め方を知らないものだ」
【参考】2018年度 株主向け書簡 (2019年4月11日公開)
つまりベゾスは、「顧客の言葉」を聞いていただけではないのですね。
その奥にある「まだ言語化されていない欲求」や「本人も気づいていない不便さ」、「未来への期待」を読み解こうとしていたのであり、これこそ読解力の本質なのです。
本当に優れたリーダーは、今見えている問題だけではなく、「まだ見えていないもの」を読む。だからこそ、AIには起こせない変化のきっかけをつくることができるのです。
私がこの8年間、0歳~小中高生のお母様たちと行っている市野瀬教育研究所のプログラムでも最も大切にしている「読む力」。
それは私自身、教育や子育て、そしてリーダー育成に関わる中で、ずっと感じてきたことがあるからです。
それは、人は「理解された」と感じた時に、初めて伸び始めるということ。
勉強ができないのではなく、「わかってもらえない苦しさ」を抱えていることがある。やる気がないのではなく「どうせ言っても無駄だ」と感じていることがある。これは子どもだけではなく、もちろん部下も同じです。
だからこそ私は、相手の言葉だけではなく、その背景や感情、空気まで読むことを大切にしています。市野瀬教育研究所で重視していることもまた「表面的な正解」ではありません。
外側の正解を押し付けるのではなく、その人が本来持っている内側の力を、どう引き出すか。これが大切。そして、これを叶えていくには、観察力が必要です。
・どこでつまずいているのか
・何に傷ついているのか
・どんな言葉なら届くのか
相手の心の「行間」を丁寧に読む。
これは教育だけでなく、マネジメントにも共通しています。
優れたリーダーとは、正しいことを言う人ではありません。「相手を深く理解しようとする人」なのです。
信頼されるリーダーの共通項は、「読解力」だった!
現代は、発信の時代です。SNSでも、ビジネスでも、「発信力」が重視されています。
でも本当は、話す力だけでは、人はついてきません。
なぜなら、人は「理解された」と感じた時に、初めて心を開くからです。つまりリーダーに必要なのは、うまく話すことよりも「深く理解すること」。そして深く理解するためには読む力が必要です。
・空気を読む
・感情を読む
・沈黙を読む
・背景を読む
・行間を読む
この力がある人は、自然と信頼されます。
逆に、どれだけ話がうまくても、相手を読み違える人は長期的には人が離れていきます。これからの時代、リーダーに求められるものは変わっていくでしょう。トップダウン型の「強いリーダー」ではなく
【相手を理解できる人】
【違いを受け止められる人】
【見えない感情を察知できる人】
これらの力のある人が組織を導く時代にすでに変化してきています。
これまで女性リーダーたちは、「もっと話せ」「もっと前に出ろ」と言われ続けてきました。しかし、無理に誰かのようになる必要はありません。
あなたがすでに持っているかもしれない観察力、感受性、共感力、空気を読む力。これら【自分と相手の感情・思考・言動の読解力】は、これからの時代において極めて重要なリーダーの資質だからです。
信頼されるリーダーとは、雄弁な人ではありません。「相手の言葉にならないもの」を、丁寧に読み取れる人。真のリーダーは、実はずっと「読む力」を磨いていたのです。
執筆:市野瀬 早織





