キャリアデザインとは何か?今必要とされる理由や具体的な実施方法を解説
変化が大きい現代社会において、一人ひとりがキャリアデザインを考えることが重要です。社員がキャリアデザインを考えることは企業にとってもメリットがあります。人材育成の一環としてキャリアデザイン支援を行う企業も増えています。
この記事では、今必要とされるキャリアデザインについて、導入するメリットや具体的な実施方法を解説します。
目次
- キャリアデザインとは
- キャリアデザインがなぜ求められているのか
- 社会情勢による働き方の変化
- 働くことに対する個人の価値観の変化
- 企業が社員のキャリアデザインを支援するメリット
- 社員の自律と自己成長を促す
- 多様な人材の実力を引き出す
- 企業へのエンゲージメントが上がる
- 離職率の低下が期待できる
- キャリアデザインの設計方法
- 1.現状把握
- 2.ありたい姿や将来像の設計
- 3.アクションプランの作成
- 4.フィードバック
- 企業が社員のキャリアデザインに対してできること
- キャリア面談の実施
- キャリアデザインに関する研修の実施
- キャリアコンサルタントの導入
- 目標管理制度とフィードバック面談の導入
- まとめ:キャリアデザインを支援して、社員の自己成長を促そう
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キャリアデザインとは
「キャリアデザイン」とは、仕事をする上で将来ありたい姿や自分の人生そのものを自身で設計していく考え方のことをいいます。
類似の言葉に「キャリアプラン」がありますが、こちらは、あくまで仕事上のキャリアのみを対象とし、主に現職の企業でのキャリアアップを念頭に行われます。一方、「キャリアデザイン」では、仕事だけではなくプライベートも含んだ人生全体を設計します。
キャリアデザインを通して、自分が人生を通して将来どうなりたいか、そのためにはどんなプロセスが必要で何のスキルを得ることで実現できるか、ということを明確にしていくことができます。
キャリアデザインがなぜ求められているのか
今、キャリアデザインが求められる理由を紹介します。
社会情勢による働き方の変化
1つ目の理由は、社会情勢の変化によって人々の働き方に変化が起きたことです。高度経済成長期やバブル経済では、企業は「物を作れば売れる」という時代でした。社員側も年功序列・終身雇用が当たり前で、就職すれば毎年昇給し、段階を経て昇格していく「成功のレール」が敷かれていました。
ところが現代はVUCAの時代といわれています。経済は複雑化し、急激なICT化や新型コロナウイルスの感染拡大などもあり、いつどのような変化が起こるか分からなくなっているのです。企業も社員の将来の保証ができなくなっている中で、自身のキャリア形成を会社に頼らず、自分自身で考えることが重要になってきています。
働くことに対する個人の価値観の変化
2つ目の理由は、個人の価値観の変化です。年功序列・終身雇用制度が崩壊した今の時代、転職は珍しいことではありません。多様な働き方が認められ、ライフワークバランスといった言葉も一般的になってきています。ずっと同じ企業で働き続ける可能性が低下している今、自分自身のキャリアを自分で考えていくことが大切になっているのです。
企業が社員のキャリアデザインを支援するメリット
昨今、社員のキャリアデザインを支援する企業も増えています。社員がキャリアデザインを考えることによる、企業側の具体的なメリットについて解説します。
社員の自律と自己成長を促す
1つ目は社員の自律と自己成長を促すことです。
社員に自身の将来像を描いてもらうことは、今不足している力を認識させることにもつながります。目の前の仕事が自身の目指す未来とつながっていることがわかれば、仕事への当事者意識が強くなり、率先して動ける人材に成長していく可能性が高くなります。
多様な人材の実力を引き出す
2つ目は、適切な人材活用です。
現代は、同じことを着実に積み重ねていけば必ず成長できるという時代ではありません。企業にとっても、時代の変化に柔軟に対応できる人材や、必要なイノベーションを起こし続けることができる人材が必要です。多様な人材の個々の実力を引き出すうえで、社員のキャリアデザインを支援することが有用なのです。
企業へのエンゲージメントが上がる
3つ目は企業へのエンゲージメントが上がることです。
ここでいうエンゲージメントとは企業への思い入れや信頼関係を指します。キャリアデザインを支援することは、働いている個人が自分の将来像について考えるきっかけを提供し、明確なビジョンを描く手助けになります。結果的に支援を行ってくれる企業への信頼度は高くなり、仕事のパフォーマンスの向上も期待できるでしょう。
個人と「仕事」との関係性に着目したワークエンゲージメントについての記事はこちらをご参考ください。
ワークエンゲージメントとは?高めるための方法や測定方法を解説
離職率の低下が期待できる
4つ目は離職率低下の効果が期待できることです。
キャリアデザインを通じて長期的なキャリアが描けるようになったことで、未来に対しての不安が薄れ、自社で長期的に働くイメージもつきやすくなります。また、前項のエンゲージメントの向上も離職率低下に繋がるでしょう。
優秀な社員の離職を防ぐための取り組み「リテンションマネジメント」についてはこちらの記事をご覧ください。
優秀な社員の離職を防ぐリテンションマネジメントの重要性
キャリアデザインの設計方法
では、具体的にキャリアデザインはどのように行えばいいのでしょうか? まずは自分自身ですべきことを順番に解説していきます。
1.現状把握
キャリアデザインを考える際、最初にやることは現状把握です。過去の振り返りとも言い換えられます。
10代、20代前半、20代後半…と、自身の人生を振り返り、印象的な出来事や、何かのきっかけとなった出来事、成功体験や失敗体験を書き出します。また、今持っているスキルや資格、今の状況への満足度、不満があるとしたら何が不満なのかも書き出しましょう。
2.ありたい姿や将来像の設計
現状把握ができたら、次に自分がありたい姿や将来像について考えます。
「35歳までに管理職になりたい」といった具体的な目標でも「何をするかは決めていないけど40歳くらいまでに独立したい」といった曖昧な目標でも構いません。まずは5年10年と未来のことを考えます。そして、5年後に目指す将来像を実現するために3年後・1年後にどのような状態になっていなければいけないのかを考えます。はじめに未来にピンを置くことで、そこに辿り着くまでのステップが可視化されやすくなるはずです。
そもそも「なりたい将来像がわからない」という方はぜひ女性のキャリアについての下記記事もご参考ください。
女性のキャリアをどう考える?理想のキャリアプランの設計や考え方
3.アクションプランの作成
ありたい姿・将来像の設計が出来上がったら、それを具体的なアクションプランに落とし込んでいきます。1年後、3年後、5年後といったポイントで必要な能力を身に付けるために、何をすべきかという行動を具体的に検討します。
アクションプラン作成時には、上司や社内のロールモデルへの相談も有効になります。
4.フィードバック
キャリアデザインは作成しただけであれば意味がありません。
社内でキャリアデザインに取り組んでいるのであれば、管理職と共有し自分の立てた計画に対してフィードバックを受ける機会を設けましょう。
企業が社員のキャリアデザインに対してできること
続いて、企業が社員のキャリアデザインに対してできる、具体的な取り組みを紹介します。
キャリア面談の実施
キャリア面談の実施は社員のキャリアデザイン支援に有効な手段の一つです。
「うまく将来像を描けない」「将来像を描けてもアクションプランが描けない」という社員もいることでしょう。近年、部下の今の仕事や一歩先の業務内容をよく把握している管理職がキャリア面談を行う企業も増えています。そういった面談を通して、社員側も将来像を見据えたアクションプランを考えられるようになるはずです。
キャリア面談についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
キャリア面談を通じて部下の力を伸ばす。話す内容や方法を解説
キャリアデザインに関する研修の実施
キャリアデザインに関する研修の実施も効果的です。キャリアについて体系的に学ぶことにより、キャリアデザインを考える時に取り組みやすくなります。また、管理職と部下、社員同士間でキャリアに対する共通の認識が定着することで、企業内でキャリアデザインに関して相談しやすい土壌が生まれるでしょう。
キャリアコンサルタントの導入
これから社員のキャリアデザイン支援を始めるという場合、社外のキャリアコンサルタントの導入を考えても良いでしょう。
社外から呼んだキャリアのプロなので、社員も社内の利害関係を考えずに安心して気兼ねなく相談ができるのもメリットです。
目標管理制度とフィードバック面談の導入
キャリアデザインは、ただ作っただけでは形骸化してしまう恐れがあります。そのため、目標管理制度やフィードバック面談の導入を検討すると良いでしょう。
アクションプランに落とし込んだ行動を努力目標に掲げるのも良いですし、それが達成できたのかフィードバックができると良いですね。
社員としても、自身の将来像に近づくための目標を設定したという実感が持てれば、より自信を持って主体的に仕事に取り組めるようになるでしょう。
まとめ:キャリアデザインを支援して、社員の自己成長を促そう
キャリアデザインを支援すれば、社員の自律と自己成長を促し、主体的に動ける社員の育成が期待できます。キャリアデザイン支援を行い、企業全体の生産性を上げていきましょう。