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ミホさんとマユミさんがお届け!「お仕事お役立ちコラム」

360度評価って? メリットデメリットや、気を付けるポイント

一部の企業でも取り入れられている「360度評価」。どんな評価制度で、メリットデメリットはなんなのか、ミホさんとマユミさんが紹介します。

ミホさん
ミホさん

34歳独身。明るく人懐っこい笑顔で、愛され上手。一方で、ややがさつな面もあり、不用意な一言で周囲をヒヤリとさせることも。営業職から企画職に移り、そろそろマネジメントを任されそう。親からは早く結婚するよう急かされているのも、モヤモヤのタネ。

マユミさん
マユミさん

42歳既婚。いつも落ち着いていて、気配り上手な優しい先輩……というのは表の顔で、実は些細なことで悩みがちな小心者。寝る前はその日の自分の言動を振り返ってモヤモヤするのが定番。現在はミホさんの隣の課の課長。小学生男子の子育て中。

上司から部下の評価だけでは見えない「本当の姿」がわかる360度評価

ミホさん

ミホさん

先日、管理職をしている社外の友人と話していたら「うちの会社は360度評価だから、部下から何を言われるかドキドキする」と言っていました。私はあまりピンとこなかったのですが、どんな評価制度なのでしょうか?

マユミさん

マユミさん

360度評価は、上司、部下、同僚など立場を問わず一緒に仕事をしている人たちから、評価を受ける制度のこと。本来は、社外の取引先や外注先の方からの評価も指すけど、現実的にはそこまで評価者を広げるのは難しい。だから社内だけで行われるのが一般的みたい。

ミホさん

ミホさん

部下が上司を評価するのは、斬新です。

マユミさん

マユミさん

私たちの会社では、期初に設定した目標に対してどれだけ達成できているかを、上司が部下にフィードバックする「MBO(目標管理制度)」での評価を行っているからね。360度評価を取り入れている日本企業は10%くらいとも言われているんだって(※)。
(※)一般財団法人労務行政研究所による調査

ミホさん

ミホさん

やはり多くの企業はMBO評価なんですね。360度評価を導入すると、先ほどの私の友人のように管理職側のプレッシャーが大きそうですが、どんなメリットがあるのでしょうか?

マユミさん

マユミさん

メリットは大きく2つあって、1つ目はまさに部下が上司を評価できる点なんだ。一般的な評価制度では見えづらい、日ごろ上司が部下に対してどんな教育、接し方をしているかが、現場の声としてリアルにわかるでしょ? だから、管理職に対してだけ360度評価を導入しているケースもあるんだよ。

ミホさん

ミホさん

管理職がチーム内でリーダーシップを本当に発揮できているかなど、一緒に働くメンバーしかわからないですものね。

マユミさん

マユミさん

2つ目のメリットは、上司が見きれない成果・行動を評価できる点。会社ってプロジェクト単位で働くことも多いから、必ずしも上司と部下がセットで動いているわけではないよね? そんな時、プロジェクトメンバーから評価してもらえれば、適切な行動評価ができる、ということ。

評価の質担保の難易度の高さや、業務負荷増のデメリットも…

ミホさん

ミホさん

たしかにそのメリットだけ聞くと、すごく良い制度だと思います。でも…きっと色んなデメリットもありそうですよね。

マユミさん

マユミさん

そうなんだよ。そこが360度評価の難しいところで、デメリットも伝えておくね。1つ目は、評価の質の担保が難しい点。誰もが評価者としてきちんと評価基準を理解できるのかという問題や、一般社員が普段から評価対象者の仕事ぶりを意識して見ているのかという問題がある。

ミホさん

ミホさん

評価の時だけ「あの人どんな感じだったっけ?」と考えるようじゃダメですもんね。ましてや新卒1年目の社員が上司を評価することもあり得るとしたら、評価基準を理解するのもハードルが高いかもしれません。「普段お世話になっているから良い評価」という忖度も起きそうです。

マユミさん

マユミさん

でしょ? あと2つ目のデメリットは、一人ひとりの作業負荷が増えてしまう点。評価ってものすごく手間と時間がかかる作業だから、普段の業務にプラスして行うとなると、単純に大変。従業員から不満が出ることもあるんだって。

ミホさん

ミホさん

評価の時期って、管理職は通常の業務に加えて評価もしないといけないから、とても忙しそうですよね。それがどの社員にも発生するとなると…ちょっと混乱してしまいそうです。

360度評価により、企業のバリューが社員に浸透した例も

ミホさん

ミホさん

でも、きっと360度評価を導入して成功している企業もありますよね?

マユミさん

マユミさん

ちろん。例えば、会社の規模拡大と共に自社のバリューの浸透に課題を感じるようになった企業が、バリューを浸透させる手段の一つとして360度評価を取り入れて成功したケースもあるみたい。

ミホさん

ミホさん

なるほど。「社員としてどう行動すべきか」が評価基準に落とし込まれていて、それが様々な人から見られていると思うと、「こういう行動をしなければ」と強い自覚が芽生えますよね。

マユミさん

マユミさん

そういうこと。

ミホさん

ミホさん

ちなみに、なかなかハードルが高い360度評価ですが、成功させるコツなどはありますか?

マユミさん

マユミさん

1つ目は、企業として目指すべき人材像が明確になっていること。まずバリューが明確になっていないことには、行動評価基準が作れないからね。2つ目は徹底した教育を行うこと。360度評価を導入する際には、社員全員に評価研修を行わなければならない。そして新しい社員が入社した時にも都度研修を行う必要があるよね。

ミホさん

ミホさん

一般的には管理職の研修として行われる評価研修・フィードバック研修を全社員が受ける必要があるということですよね。

マユミさん

マユミさん

そういうこと。3つ目は、評価項目を明確にし、増やし過ぎないこと。例えば「リーダーシップはありますか?」などの漠然とした項目ではなく、「チームに目標を示せていますか?」のように、行動を明確にした項目じゃないと、評価しづらいよね。また、なんでも評価したくなるけど、評価項目はなるべく絞らないとどんどん漠然な評価になってしまうの。

ミホさん

ミホさん

抽象的ではなく、具体的な評価項目でないと、“なんとなく”な感覚で判断してしまいそうですもんね。

マユミさん

マユミさん

そして4つ目は、評価されるべき行動基準を等級によって変えること。例えば「チームワーク」の評価でも、新卒1年目と管理職では求められることが違うよね? 前者はチーム内での協調性の話だし、後者はチームをまたいだ協業が求められる。

ミホさん

ミホさん

これは一般的なMBO評価でも同じですよね。社員のレベルによって求められる成果は異なります。

自己評価と他者評価のギャップを成長に繋げるのが、360度評価

ミホさん

ミホさん

ここまでマユミさんの話を聞いただけでも、360度評価がいかに難しい制度かが良く理解出来ました…。うまくいけばとても良い制度だなとは思いますが。

マユミさん

マユミさん

そうだよね。いきなり「今期から導入します!」というわけにはいかなそうだよね。

ミホさん

ミホさん

もし、導入を検討している場合、気を付けるべきことはあるでしょうか?

マユミさん

マユミさん

3つあって、まずは評価者を、評価対象者からの指名制にするかどうか。評価対象者が「誰に評価してほしいか」を決められる企業もあるみたい。決められれば普段の仕事ぶりを見てくれる人に評価してもらえるというメリットの一方、忖度が起きやすいというデメリットもあるよね。

ミホさん

ミホさん

…難しい!

マユミさん

マユミさん

あとは、フィードバックを書いた人の名前を公開するか。誰からのフィードバックかわかれば有益だし、評価する側も責任感を持って評価するよね。でも、遠慮が生まれる原因にもなるんだよ。

ミホさん

ミホさん

かと言って誰が書いたかわからないのもモヤモヤしますよね。

マユミさん

マユミさん

そこも、会社としてどうするべきかは慎重に決めるべきだよね。最後は、従業員からの不満が出てきやすい制度な分、フォロー体制も整えておくこと。
360度評価の本質は、自己評価と他者評価のギャップに気付いて、成長の糧にすることだけど、そのギャップをどうしても受け入れられない人もいる。だから評価後に管理職がフォローする面談の場は必要だと思うんだよね。

ミホさん

ミホさん

そうですよね。周りからの評価があまりに悪いと働くモチベーションが保てなくもなりそうです。そんな時に上司が寄り添ってくれれば、立ち直るきっかけになると思います。

マユミさん

マユミさん

もし導入するならここまでしっかりと制度を整える必要があるんだよ。でも、導入しないにしても、例えば普段の1on1の面談で、部下の素直な気持ちを聞くだけでも、他者評価は知ることができる。まずはそういうことから始めてもいいかもしれないね。

POINT

①メリットもデメリットも多い360度評価。導入の際は慎重に。

②成功のコツは、「明確なバリュー&評価項目」「評価項目を増やしすぎないこと」「徹底した研修」

③360度評価の本質は、自己評価と他者評価のギャップを成長に繋げること。日頃から社内で率直な意見が言い合える関係値づくりから始めてみよう。

監修者:井上翔平

WHI総研研究員。2012年、政府系金融機関に入社。融資担当として企業の財務分析や経営者からの融資相談業務に従事。2015年、調査会社に移り、民間企業向けの各種市場調査から地方自治体向けの企業誘致調査まで幅広く担当。2022年、Works Human Intelligence入社。様々な企業、業界を見てきた経験を活かし、経営者と従業員、双方の視点から人事課題を解決するための研究・発信活動を行っている。

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