DEIとは? 多様な人材を活かすために、<br>管理職がすべきマネジメントのイメージ画像

ミホさんとマユミさんがお届け!「お仕事お役立ちコラム」

DEIとは? 多様な人材を活かすために、
管理職がすべきマネジメント

今回のテーマは「DEI」。あらゆる企業が推進し始めているけれど、実際に管理職として何を意識すればいいの? 気になる疑問を解説します。

ミホさん
ミホさん

34歳独身。明るく人懐っこい笑顔で、愛され上手。一方で、ややがさつな面もあり、不用意な一言で周囲をヒヤリとさせることも。営業職から企画職に移り、そろそろマネジメントを任されそう。親からは早く結婚するよう急かされているのも、モヤモヤのタネ。

マユミさん
マユミさん

42歳既婚。いつも落ち着いていて、気配り上手な優しい先輩……というのは表の顔で、実は些細なことで悩みがちな小心者。寝る前はその日の自分の言動を振り返ってモヤモヤするのが定番。現在はミホさんの隣の課の課長。小学生男子の子育て中。

DEIとは、多様な人材を公平に扱い、組織で活かすこと

ミホさん

ミホさん

最近、様々な企業が「DEI」を推進しているとよく聞きます。DEIが、「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」の頭文字をとった言葉なのはわかるのですが、その具体的な中身について詳しく教えていただけますか?

マユミさん

マユミさん

管理職研修などで扱うテーマだよね。特にここ数年、企業はD&IからDEIを推進するように変化しているよね。「多様な人材を受け入れて活かすこと」がD&Iの目的だけど、そこに「Equity(公平性)」が加わるようになったの。

「Equity(公平性)」とは、一人ひとりの状況に合わせて、リソースを用意し、その人の属性によってチャンスが不平等にならないようにすること。例えば、育児をしているから・介護をしているから・障がいがあるから「この仕事は無理」という考えではなく、「その人が最大限力を発揮できるようにどう関わるか」というのがEquity(公平性)な働きかけ。つまり、DEIとは「多様な人材を理解し、公平な取り組みにより一人ひとりを受け入れて活かすこと」なんだ。

そして、D&IからDEIに移行するためには、組織外とも繋がることが大切。多様な社会と繋がらないと、本当に会社が公平な立場にいるのかが見えてこないから。

ミホさん

ミホさん

「Equity(公平性)」は、平等ともまた違うのでしょうか?

マユミさん

マユミさん

平等とは、誰もに同じ機会を等しく与えること。公平とは、置かれた状況・環境を考慮しながらその人に合わせてリソースを与えることで、誰もが同じ条件になるように整えることなんだ。

「ビジネス」と「人権」は切り離せない時代へ

ミホさん

ミホさん

D&IからDEIに進化した理由はなんですか?

マユミさん

マユミさん

理由は2つあって、ESG投資がトレンドになったことと、圧倒的労働不足という問題解消のため。

まず前者から。これまで日本では、ビジネスと人権に関する認識が薄く、重視しない風潮があって、多様性や包括性にも遅れを取ってきたの。でも、2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」というものが規定されて、「ビジネスと人権」の繋がりへの関心が国内でも徐々に高まってきたの。

そして、2015年に「持続可能な開発目標SDGs」が採択されたことが大きな契機となりその流れが加速。その頃から、投資家が企業の財務情報だけではではなく、ESG=「Environment(環境)・Social(社会)・Governance(統治)」の要素を考慮して投資を行うESG投資がトレンドになったよね。

ミホさん

ミホさん

環境への配慮や企業統治などに配慮している企業は多いですが、なんとなく「Social(社会)」へは、配慮しきれていない企業もある気がします。

マユミさん

マユミさん

そうなの。「Social(社会)」には、人権や労働基準、安全衛生、多様性も含まれる。つまり、企業に「Equity(公平性)」が求められているということなんだ。

ミホさん

ミホさん

なるほど。ESG投資が注目を浴びて、D&IからDEIが注目を浴びるようになったのですね。では、労働不足がなぜDEI推進につながるのでしょうか?

マユミさん

マユミさん

昭和から平成まで、日本の企業は同質性が高く、新卒一括採用の男性中心の人材モデルが主流だったけれど、圧倒的な労働力不足で変化が激しく複雑な時代には、通用しなくなった。だからこそ、多様な人材を活かしていかなければならないんだよ。

ミホさん

ミホさん

たしかに、誰もが活き活きと働くことで、企業も成長できますものね。

人権・多様性への取り組みは、企業価値に直結

マユミさん

マユミさん

でもね、いざDEIを推進しようと思っても、よくわからないまま取り入れてしまうと、失敗することもあって。例えば、DEI推進を謳っているのに、上層部が差別的発言をして企業の株価が低下してしまうとか。

ミホさん

ミホさん

たしかに、企業が発信した情報やCMなどからの多様性を無視した発言や表現を見聞きすると、正直その企業への印象が悪くなりますよね。人権や多様性への取り組みが企業価値に影響を与えるようになりましたよね。

マユミさん

マユミさん

逆に、しっかりとDEI推進ができている企業は、企業としての価値が向上する。新しい顧客を得たり、良い人材確保にもつながるし、働く人の貢献意欲も高まる。そして、多様な人材が発言しやすくなり、組織外ともつながることで、新しいアイディアやイノベーションも生まれやすくなる。

ミホさん

ミホさん

名ばかりのDEIではなく、いま何をすべきなのか理解をした上で推進していくことが大切ですね。

DEI推進のために、管理職はまず組織の現在地を知ろう

ミホさん

ミホさん

では、DEI推進のために管理職として何をすべきなのでしょうか? 今後昇格した時のためにも知っておきたいです。

マユミさん

マユミさん

まずは組織の現在地を知ること。公平に機会を与え、多様性を実現するためには、組織内で今どんな人が働いているか、どのような状況にあるかにしっかりと目を向ける必要があるよ。組織の中の少数派の意見というのは、聞かれることもなく問題すら見えていないことがあるから。

例えば「今度の会食で、お寿司屋と焼き肉屋どっちに行くか」を10人の組織で決める時、お寿司派が9人、焼き肉派が1人だったら、後者の意見を聞くこともなくお寿司を食べに行くこともあるよね。このように、組織の中の少数派の人は、話も聞いてもらえないし、視界にも入らない状態に常にいるということ。

ミホさん

ミホさん

わかりやすいです。何を思っているか、何をしてほしいかを本人に聞くところからはじめなければならないですよね。

マユミさん

マユミさん

それに、内面の多様性である価値観を確認せずに、性別、年齢、人種、障がいなどの目に見える属性だけで一部の人を配慮しようとしてしまうと、「あの人だけがケアされている」という断層も組織内に生まれてしまうんだよ。

ミホさん

ミホさん

たしかに、例えばやみくもに管理職の女性比率だけを上げようとしても、女性側も望んでいないかもしれないし、逆に適切な評価がされない可能性や組織内の雰囲気が悪くなる可能性もある。

マユミさん

マユミさん

本来このような「女性活躍」はゴールじゃなくて、多様な人々を活かすための手段なんだけどね。手段が目的になってしまっている失敗例もあるよね。

だからこそ、常に、本当に少数派が置かれた状況に合わせたマネジメントができているかを常に問う必要があると思う。会社の制度が整っているから、研修も受けているから「うちの組織は大丈夫」という無意識の思い込みを取り払わなければならないの。

DEI推進に活かすべき管理職に必要なコミュニケーションスキル

マユミさん

マユミさん

そして、多様な人を受け入れ活かすためのスキルも磨き続けなければならない

ミホさん

ミホさん

具体的にどんなスキルでしょうか?

マユミさん

マユミさん

組織内での対立をポジティブにとらえ、問題解決を図る「コンフリクトマネジメントスキル」や、議論のスムーズな進行を促す「ファシリテーションスキル」、相手を尊重しながら自分の意見を伝える「アサーティブコミュニケーションスキル」など、あらゆるコミュニケーションスキルが必要かな。

■アサーティブコミュニケーションスキルを磨く記事はこちら
上手な自己主張の方法

■ファシリテーションスキルを磨く記事はこちら
会議で活発な議論を生むために、ファシリテーターがすべきこと

ミホさん

ミホさん

それらのスキルは、DEI推進にも必要だったのですね。

マユミさん

マユミさん

そうなの。スキルや知識だけでは無くて、「多様な人材を公平に扱い、組織の中に受け入れて活かす」ために使うという意識づけが大切。そのアンテナがあることで、メンバーの属性に関わらず適切に育成・評価をすることができるから。

ミホさん

ミホさん

組織のリーダーにその視点があると、メンバーとしても「この上司には話せそう」という心理的安全性も高まりますよね。

マユミさん

マユミさん

その通りだよね。組織が変わるのは時間がかかることだから、DEI推進をする上で、例えば「社員の●%を女性に!」のような大きな数字目標を掲げるだけではうまくいかないの。自分の意識を変えるところから始めて一歩ずつ小さな成功体験を積むことが、DEI推進には大切だと思うよ。

POINT

①DEI推進とは、その人の属性によってチャンスが不平等にならないようにリソースを与え、多様な人材を受け入れ、活かすこと。
②DEI推進ができていると企業価値向上につながり、新しいアイディアやイノベーションも生まれやすくなる。
③管理職として、コミュニケーションスキルをDEI推進に活かす意識が大切。

監修者:荒金雅子

ダイバーシティ・女性活躍推進コンサルタント。株式会社クオリア 代表取締役社長。都市計画コンサルタント会社、NPO法人理事、会社経営等を経て、2006年に株式会社クオリアを設立。1996年にD&Iのコンセプトに出会い、以降一貫して組織のD&I推進や女性の能力開発、リーダーシップ開発、組織活性化などのコンサルティングに取り組む。著書『多様性を活かすダイバーシティ経営』(日本規格協会)等多数。

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