『仕事を続けてきた自分が、将来の自分を支えてくれる』
楽天インサイト株式会社 事業統括本部 第二ブランドソリューションズ部 第一営業グループ 安原さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。リーダーとして活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、楽天インサイト株式会社でプロジェクトマネージャーを務める安原さんにお話を伺いました。
安原(やすはら)さん
楽天インサイト株式会社 事業統括本部 第二ブランドソリューションズ部 第一営業グループ。
2004年に大学卒業後、広告関連会社を経て、楽天リサーチ株式会社(現・楽天インサイト株式会社)に中途入社。営業職として、企業のマーケティングリサーチに関する課題ヒアリングから調査提案、納品までを担当。営業を軸に、プロダクトチームや海外調査チームも経験したのち、現在は金融・人材業界を中心に、プロジェクトマネージャーとして複数の調査案件を担当している。プライベートでは二児の母。
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仕事と家庭の大変さを支えた“さまざまな支援策を知っておく安心感”
- 家族との海外生活を経て、楽天インサイトに再入社した安原さん。仕事と家庭の両立が始まりました。
- 「両立に限界を感じたことは何度かありました。その頃は、日々の家事と仕事に追われている感覚がとても強くて、『仕事を辞めることはいつでもできる』と自分に言い聞かせて乗り切っていました。仕事も子どももどちらも大事で、すべてを一人で頑張ろうとしていたからだと思います。今振り返れば、それも良い思い出です」
- 仕事にもっと力を注ぎたいと思っていても、夫の仕事も忙しく、帰宅後の家事・育児を一人で担うことが多かったため、急ぎの業務を同僚にお願いして帰宅しなければならない日もあったそうです。
- 「正直、なぜ私ばかりが…と不満を感じたこともありました。でも、夫とお互いの仕事の状況を話し合う中で、夫もまた、子育て中の同僚の仕事をフォローしながら働いていることを知りました。夫も職場で誰かの仕事と家庭の両立を支えている。私はめぐり巡って間接的に、夫に支えられているのかもしれない――。そう考えるようになったことで、自分が担っている子育ても、家庭だけの役割ではなく、社会全体が支え合う仕組みの一部なのだと捉えられるようになりました。それに、会社の制度を活用しながら柔軟に働けたことや、周囲のメンバーが快くフォローしてくれたことも、これまで働き続けられた理由だと思います」
- いっぱいいっぱいだった自分の感情と距離を取れるようになると、今の自分に必要なサポートについて、冷静に考えられるようになったと話します。
- 「住んでいる自治体や社内にどのような支援制度があるのかを調べ、さまざまな支援策を知っておくだけでも、心に余裕が生まれます。実際に活用した制度は、調べたうちの1割ほどでしたが、『保育園が急に閉鎖したらどうするか』『出張で自分も夫もいないときはどうするか』など、起こり得るリスクへの備えとして、常に乗り切る方法を考えておけたことが、大きな安心感につながっていきました」
社内の知見を結集してチームワークを高める
- 現在、安原さんは営業として、金融や人材業界の企業を中心に担当し、案件ごとに組成されたチームでプロジェクトマネージャーの役割を担っています。チームは多いときで6名ほど。複数のプロジェクトが常に同時並行で進んでいるため、タスクの把握と管理は、重要な役割の一つです。
- 「どの業務を誰が担当するのかという分担と、プロジェクトが何のために動き、何をゴールとしているのかを明確に伝える旗振り役が、プロジェクトマネージャーの仕事です。置き去りにされがちな情報や、宙に浮いてしまう業務もこまめにキャッチしていきます。プロジェクトが終わればチームは解散し、また新しいメンバーで次の案件が始まる。だからこそ、みんなが気持ちよく仕事に向き合い、自分の持ち場で力を発揮できるように、日々のささいなコミュニケーションも大切にしています」
- 安原さんの思いの背景には、大きなターニングポイントになった「一人で抱え込んでしまったことによる失敗」があると話します。
- 「以前、お客様から少し特殊なご相談をいただいたことがありました。今から考えると、早い段階で専門部門に相談すべきだったと思います。でも当時、業務にも慣れ、社内外から一定の評価もいただいていて、子どもがまだ小さくて時間が限られていた中で、『相談する時間を割くより、自分で進めたほうが効率的』と判断して、案件を一人で抱え込んでしまいました」
- 結果的に、お客様の期待に沿う提案にはならなかったと振り返ります。
- 「わからないことが少しでもあるのなら、早めに周囲を頼り、巻き込むことがお客様にとっても自分にとっても一番良い結果につながると実感しました。営業は一人で成果を出す仕事ではなく、社内の知見を結集してお客様の課題を解決する仕事なのだと、この経験を通して学ぶことができました。今は一人で解決しようとせず、専門部門や関係者と早い段階で連携し、チームとして最適な提案を考えるようにしています」
状況は変化していく。長期的な視点を持ちながら、今を見つめてほしい
- プロジェクトで関わるメンバーの年次や経験はさまざまで、子育て中のメンバーからキャリア相談を受けることもある安原さん。自身の経験も踏まえて「目の前の大変さだけでなく、少し先の未来にも目を向けてほしい」と話します。
- 「私も子どもが小さいときは毎日を乗り切るだけで精一杯でした。でも、子どもが小学校高学年くらいになると、あっという間に手離れしていきました。そのときに、自分はこの仕事をやってきた、こんな風に社会に貢献してきた、と思えるものがあるかどうかが自分を支えてくれると実感しています。メンバーにも、『仕事があると寂しくないよ』と話すことがあります」
- 小中学生になった安原さんの子どもたち。今になって、仕事を続けてきた姿が子どもたちにも伝わっていると感じているそうです。
- 「在宅勤務をしている姿を見て、子どもたちなりに、親の仕事への向き合い方を感じ取っているようです。また、両親が働いて得たお金を大切に使おうという気持ちも芽生え、一緒に買い物に行くと『こっちのほうがお得だよ!』と選んでくることがあります。仕事をしている姿を見せることが、子どもの価値観を育てることにもつながるんだなと思います。
仕事と家庭は、どちらかを諦めるものではなく、お互いを支え合う存在になれると思っています。思い通りにいかず、もやもやしたりイライラしたり、ときにネガティブな感情が湧き上がってくることもあります。でも、その状況がずっと続くわけではありません。時間が経つことで、状況は変化していきます。後輩にも、感情に振り回されず、いったん距離を取って、『今起きている事実』『今の自分にできる最善の選択は何か』を、慌てず冷静に見極めながら乗り越えていってほしいです。そしていつか、自分が支えてもらったように次の誰かを支えられる存在になってもらえたら、とても素敵だなと思います」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子





