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マイキャリアストーリー

『周りに助けてもらった分は、後から恩返しすればいい』
ハーゲンダッツ ジャパン コーポレート本部部長 倉本 亜紀さん【後編】

誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は、前回に引き続き、ハーゲンダッツ ジャパン株式会社でコーポレート本部部長を務める倉本亜紀さんにお話を伺いました。

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倉本 亜紀(くらもと あき)さん

ハーゲンダッツ ジャパン株式会社 コーポレート本部部長
新卒で入社後、総務部経理課に配属。
営業推進部営業推進課に異動後、2000年に第一子出産に伴い約1年間の産休・育休を取得。2013年よりハーゲンダッツ全商品の在庫及び配送管理を担う物流部に異動。15年にマネージャーに昇格。24年より現職。人事業務全般を担当している。

先輩たちが作ってきた道を断つことなく歩いていってほしい

新卒でハーゲンダッツ ジャパンに入社後、経理、ショップ企画、営業推進部と3つの部署を経験していた倉本さん。営業推進部に在籍していた8年目には約1年間の産休・育休を取得し、子育てと仕事を両立させてきました。「以前は全部自分のために使えていた時間に制限ができた」ことで、業務を抱えるのではなくオープンに見せていく方向に働き方が変わっていったといいます。
「復職して感じた一番の変化は、子どもの体調不良などによる急な欠勤をどうしても避けられないということです。それまでは残業してでも頑張りたい!一人でやりきりたい!と仕事に向かうこともありました。でも復職後は、自分の業務進捗が誰にでも分かる状態にして、必要に応じて引き継いでもらう必要がありました。だから、できていることもできていないことも、全部オープンにしていこうと思えるようになりました」
入社した頃は、「子どもができた後まで働き続けるかは分からない」と漠然と思っていたという倉本さん。しかし、子育て経験のある女性の先輩から言われた、「大変なのは一時のことだから」という言葉に背中を押され、「続けられるかもしれないから、まずはやってみよう」と考えるようになりました。

産休・育休を取得した2000年当時、「妊娠・出産を機に仕事を辞める」という選択は今よりも一般的でした。そんな中で、復職を選んだ決断の裏にはどんな思いがあったのでしょう。
「私の時代よりさらに前は、産休制度しかなかったときもありました。そこから、育休制度ができ、子どもが3歳までの時短勤務制度が生まれ、今では子どもが小学校3年生になるまで時短勤務を継続できるようになりました。在宅勤務制度やフレックスタイム制度も整備され、働き方の自由度も広がっています。そうやって環境が整ってきたのは、最初はごく少数ながら、先輩たちが子育てと仕事を両立させながら道を切り開いてきたからだと思っています。
自分が新たにロールモデルになるなんて大それたことは考えていません。ただ、先輩たちが作ってきた道を断つことなく、後輩たちにも続いてほしいな、という気持ちはありました。私でも続けられるんだからみんなもできるよ、とハードルを下げたかった。その思いが強かったのかもしれません」
仕事と育児の両立をする上で、周りの同僚や先輩、上司たちの理解は欠かせないものでした。「帰らなくていいの?」「ここは任せてくれて大丈夫だから」といった些細な声かけに救われていたと話します。
既に子どもは社会人になり今は手を離れているそうですが、「この経験値を持って、もう一回子育てをやれたらいいのに!」と話すほど、子どもが小さい頃は日々のやるべきことに追われて余裕のない毎日だったと振り返ります。
「毎日何時に寝かせなくちゃとか、家に帰ったらあれとこれをやらなくちゃとか、いつも自分を追いこんでいました。でも、目の前の子どもの一瞬一瞬ってあっという間に過ぎ去っていくんです。だんだんと力の抜きどころが分かってきて、『保育園でちゃんと食べているんだから、夕ご飯はおにぎりだけでいいや!』と仕事終わりに買ってきたおにぎりを公園で食べさせたこともありました。もしできるのなら、『忙しさを理由にしないで、もっとじっくり話を聞く時間を作るといいよ』と過去の自分に教えてあげたいですね」

多様な意見やアイデアが出てくるチームを作っていく

育児休暇からの復職後、営業推進部での営業サポート業務を12年担当したのち、2013年に商品の在庫や配送管理を担う物流部に異動した倉本さん。その2年後には、管理職試験に合格しマネージャーに昇格します。
「マネージャーとして仕事ができたら業務範囲も広がって、一歩上の景色が見れるかなと試験を受けることにしました。上長からは、『マネージャーになったらメンバーの人生を背負うんだ』と言われて、重い!と怖気づいたこともありました(笑)。でも、やってみると確かにそうなんです。1on1で、一人ひとりと話す時間をとっていくと、それぞれの思いややりたいこと、仕事のアイデアが出てくるようになる。どんな風に話を聞いていくかが、メンバーのキャリアに大きく影響していくんだと実感しています」
24年からはコーポレート本部部長として、さらにマネジメントの範囲が広がっています。人事も総務も倉本さんにとっては初めての領域。「この1年は、自分が新しい業務を学ぶのに必死だった」と語る一方で、チームで動くからこそ多様な意見が聞ける面白さを日々感じているそう。
「10人いるメンバーの中には、人事、総務領域で経験の長いスペシャリストもいて頼もしい限りです。1年かけて関係を築いてきた今、『もっとこうしたい』『ここを改善すべきではないか』と多様な意見が出てくるようになりました。働きやすい環境づくりに向けて、これからのチームの化学反応が楽しみです」
メンバーとは業務内容以外にも、働き方やライフイベントとの両立などについて話すこともあるのだそう。そんなときに倉本さんが伝えるのは、「ハードルを下げて考えよう」ということだといいます。
「完璧にしなきゃいけないと、私も思い込んでいた時期がありました。でも、自分に余裕がないときには、思う存分周りに頼って甘えていい。そのうち時間が経って自分に余裕ができたら、助けてもらった恩返しを、また別の人にしていけばいいんじゃないかと思うんです。大変なときはお互いさま。周りのサポートやフォローを、遠慮せずにありがたく受け入れていってほしいと思っています」

「前編記事」





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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子

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