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マイキャリアストーリー

『ロールモデルがいないなら、自分なりの道を作っていけばいい』
NTT都市開発 ダイバーシティ推進室 原田 友加里さん【後編】

誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は前回に引き続き、NTT都市開発株式会社でダイバーシティ推進室担当課長を務める原田友加里さんにお話を伺いました。

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原田 友加里(はらだ ゆかり)さん

NTT都市開発株式会社 総務人事部 ダイバーシティ推進室担当課長
2008年、新卒入社。商業事業部、総務部採用育成担当を経て、2024年7月より現職。一児の母。

方向性を示してブレずに動けば、思わぬ出会いが舞い込んでくる

1年間の産休・育休を経て、休業前と同じ採用育成担当に復帰した原田さん。しかし、その1年後には再び商業事業部に異動が決まります。任されたのは、2025年春の竣工に向けた「原宿クエスト」の建て替えプロジェクトでした。
「イチ担当者だった前回とは違い、今度はプロジェクトマネージャーとして、コンセプト立案からスケジュール設定、コスト管理など全体を取り仕切る役割を担うことになりました。当時はまだ、子育てと仕事をどう両立させるか、自分なりのやり方を模索していた時期。なかなか手が回らず、家の中はいつもグチャグチャでしたね(笑)」
商業施設は、どんなテナントが入居するかによってカラーが変わってきます。「原宿をどういう街にしていきたいかという方向性を定め、賛同してくださる仲間を増やしていこう」と決めて、原田さんは動き出しました。掲げたコンセプトは「Re: HARAJUKU CULTURE」。多様な文化の交差点でありたいという思いを込めました。
「『原宿クエスト』プロジェクトで学んだことは、ブレることなく目指す方向を示していれば、思ってもいない出会いやアイデアが舞い込んでくるということ。『こういうこともできるかもしれない』と手を挙げてくれる人が増え、想定していなかったテナントとの出会いや、デザイナーとの共鳴がありました。自分のキャパシティを超えて具体的な実現案が多く生まれて行ったんです。
NTT都市開発でプロジェクトマネージャーを担っているのは4~5名ほどです。その限られた担当者の感覚や価値観だけで施設を作っていては、世の中にミスマッチなものが生まれるおそれがあります。近隣住民の方の声、学識者の意見など、原宿という街を様々な立場から見ている人の話を聞きに行くことは、商業施設のあるべき姿を描くために欠かせないプロセスです。約4年間かけて社内外の多くの方に実現したい街の姿を伝え、議論を重ねながら一緒に形を作り上げていった時間は、本当に幸せな時間だったと感じています」

「どんな仕事にも価値がある」と子どもに伝えられる自分でいたい

大学院で都市開発を学び、「トラッド目白」や「原宿クエスト」といったインパクトの大きなプロジェクトに携わってきた原田さん。その専門性を考えたときに、総務部での採用育成業務や、現在所属するダイバーシティ推進室の業務は、人によっては、不本意な異動と捉えてしまいそうです。街づくりの現場を離れたときの心境を原田さんに聞くと、「管理部門側?そっちに行くの?という驚きがあった」と率直に振り返ってくれました。
「でも、プロパーとして入社し長くお世話になってきた、この会社にはすごく思い入れがあるんです。採用は会社をつくる“人”に関わる仕事ですし、ダイバーシティ推進室は新たな社風を作っていくポジション。大好きな会社を作る側として携われるのは、ありがたいことです。
採用育成担当のときは、採用した若手社員と一緒に『原宿クエスト』プロジェクトを進めることになり、出会った人や築いた人間関係が、次のキャリアにつながっていくという経験をしました。どんなキャリアにも意味があるんだなと感じています」
最近は、6歳になった子どもから「どんな仕事をしているの?」と聞かれるようになったといいます。でも、建設中の「原宿クエスト」に連れていって見せたときの反応は、「ふうん」の一言だったそう。
「『これを作って何になるの?』と問われたかのようで、仕事の意義を自分の言葉で伝えられるようにならなくては、とハッとさせられました。
そんなやりとりもあって、今は『社会的に意義のある仕事をしているんだ』と、子どもに胸を張って言える自分でありたいと強く思うようになりました。大規模な商業施設を作ったからすごい、ということではなくて、その仕事がどういう意味を持つのかが大事なんだ、と。子どもから得た気づきは、ダイバーシティ推進の仕事に対するモチベーションにもつながっています」

気づきは発信し、改善のチャンスに変えていく

メンバーを持つ課長ポジションになった今、原田さんが心がけていることは「違和感を口にすること」だと話します。
「デベロッパー業界の中では、子育てをしながらマネジメントポジションに就く女性はまだまだマイノリティ。だからこそ気づけることがあり、発言しなければ意味がないと感じています。例えば、常に時間に追われている立場だからこそ『このルーティン業務は必要ないのでは?』と思うことがある。当たり前の“通常業務”に組み込まれていて見えにくいことも、気づけたならば変えられるチャンスだと思うんです。
発信が大事だと思えるようになったのは、『原宿クエスト』をプロジェクトマネージャーとして任せてもらい、自分の違和感や思いを自由に伝えさせてもらえたから。人の声に耳を傾ける姿勢を忘れずにいれば、多くの人を巻き込んで大きな意思決定につなげていける。そんな自信を持てるようになりました」
人が気づかないことに気づけることは、マイノリティが持つポテンシャルだと話す原田さん。
「かつてはロールモデルがいないことを不安に思うこともありました。でも、いないならそれはそれでチャンス。自分で自分のキャリアを作っていくことを楽しめばいいんだと思えるようになりました。性別や年齢で区切ろうとしても、人は多種多様です。しっくりくるロールモデルはそもそもいないのだと割り切って、自分らしく歩ける環境を楽しんでいきたいと思います」

「前編記事」





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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子

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