『管理職になって気付いた、新たな面白さとモチベーション』
株式会社セブン銀行 金融ソリューション部 紙中加代子さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。女性管理職として活躍する人はいつ何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、株式会社セブン銀行金融ソリューション部部長の紙中加代子さんにお話を伺いました。
紙中 加代子(かみなか かよこ)さん
株式会社セブン銀行
金融ソリューション部 部長
「メンバーが活躍する景色を見てみたい」という想いが原動力
- 2007年、株式会社セブン銀行に転職した紙中さんは、2015年から管理職を務めています。現在は60名超のメンバーを束ねていますが、当初は「管理職に向いているとは思っていなかった」といいます。
- 「管理職としてのキャリアは、インターネットバンキングシステムを担当している開発グループのグループ長からスタートしました。自分自身、管理職が向いているとは全く思っていなかったので、正直最初は少し気が引けました。
ただ、さまざまな人の話を聞く中で、管理職とはあくまでも仕事上の役割でしかないこと、チームとして成果を上げるために試行錯誤していくのが仕事であること、メンバーの先頭に立って自分の力でみんなを引っ張っていくことは必ずしも求められていないことを理解しました。
そのため、自分のキャラクターはひとまず脇に置いて、『チーム全体で成果を上げるための選択肢を考え、作戦を練る役割』と割り切って考えられるようになりました。今では、管理職の仕事に面白さを感じています」
- 管理職の仕事に面白さを見出せるようになったのは、リーダーを任されて1年ほど経った頃だったそうです。
- 「システム開発では、外部の専門企業に外注し、社内の人間はプロジェクトマネジメントを担うことが多いですが、そのやり方だけではなく、内製による開発体制も構築しようとしていた時期でした。
内製開発を行うとなると、IT部門に対する要求や、期待されるスピード感・柔軟性が大きく変化することになります。
そうした環境の変化にメンバーを適応させつつ、それぞれが持つキャリアビジョンに基づいてどのように成長を促していけるか、それこそがリーダーに求められる仕事だと感じました。
すると、私自身、『メンバーそれぞれがやりたいことを見つけ、活躍していく景色を見てみたい』と思うようになったんです。メンバーが成長していくために必要な取り組みを試行錯誤し、日々の仕事に落とし込む。管理職という仕事の面白さを実感しました」
管理職となったのちに訪れたターニングポイント
- 管理職となったことで、仕事に対する新たなモチベーションを見出した紙中さん。同じ時期、キャリアにおけるターニングポイントが訪れたと語ります。
- 「内製開発への取り組みを通じて、仕事内容だけでなく求められるスキルやマインドも大きく変わりました。
もともと、セブン銀行はチャレンジに寛容で背中を押してくれる会社なので、新しい取り組み自体への反対はありませんでした。でも、やはり“変化”は誰もが手放しに歓迎してくれるものでもありません。
変化への周囲の抵抗、何が正解なのか分からない状況に大いに悩みましたが、その中で、『自分自身の信念をぶらさずゴールに突き進むこと』の重要性を学びました。
この経験が私にとってのターニングポイントの一つになったと思います。
もう一つのターニングポイントは、2019年10月から1年半ほど、アメリカのシリコンバレーへ研修派遣に行かせてもらったこと。先ほどお話ししたように、内製開発の取り組みで、求められる能力や考え方がこれまで培ってきたものと大きく変化したのですが、具体的にどう変化したのか、自分自身でもあまり明確には言語化できていなかったんです。
そんな時、アメリカへの研修派遣に行くことになり、従来の延長線から一歩外れ、違う視点を取り入れることができました。また、デザイン思考やユーザー中心アプローチの方法・プロセスを学び、自分なりの軸を新たに組み立てるいい機会となりました。
その後の仕事に大いに役立ったという意味でも、アメリカへの研修派遣は一つのターニングポイントでしたね」
- 今後実現したいことを伺うと、こんな答えが返ってきました。
- 「一つは、金融サービスの中でも個人客領域のシステムを担当しているので、サービスによって人々の生活が豊かになったり、使うことが喜びになったり、生活に不可欠なものになったりするようなサービス開発に携わり続けたいと考えています。その中で新しい景色を見られたらという想いもあります。
もう一つは、自分の目の前にいる人たちが喜びを感じながら仕事ができるような環境を作ることです。自分の仕事が誰かの役に立っている、喜んでもらえているといった手触り感が、メンバーにとっても仕事上の喜びになると考えています。ですから、根本的な目的やニーズにきちんと向き合えるような仕事のプロセスや環境づくりをしていきたいと思います。それが私自身のモチベーションにもなりますから」
- 最後に、キャリアアップや管理職になることに躊躇している方に向けてのメッセージを伺いました。
- 「私自身がそれほど積極的な性格ではなく、自ら手を挙げてチャンスを掴みにいくようなことは、あまり行ってきませんでした。でも、その時その時で人からもらったチャンスを受け取り続けた結果、仕事への向き合い方が少しずつ変わっていったと感じています。
小さな一歩を積み重ねることで状況は変えられます。決して大きくなくていいので、小さなチャレンジを積み重ねていくこと。それが自分自身に対する信頼を蓄積していくことになりますし、ご自身のキャリアにも良い影響をもたらしてくれると思います」
→「前編記事」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:北森 悦