『生活の中に溢れているヒントに気づき、 アウトプットに落とし込む』
株式会社LIXIL・デザイナー 和田明日香さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。女性管理職として活躍するインタビュイーはいつ何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と決断できた理由を語っていただきます。
今回は、前回に引き続き、LIXIL Housing Technology 商品・デザイン本部 デザインセンターインテリアグループ シニアデザイナーの和田明日香さんにお話を伺いました。
和田明日香(わだ・あすか)さん
LIXIL Housing Technology
商品・デザイン本部
デザインセンターインテリアグループ
シニアデザイナー
仕事とプライベートのグラデーション
- LIXILには技術者やデザイナーなど、その道の専門性を持ったエキスパート人材を対象としたエキスパート資格制度というものが設けられています。この制度は人のマネジメントをする管理職のキャリア軸と横並びで、エキスパート管理職として専門戦に特化したキャリアを築いていける制度です。和田さんは2023年、デザイン部のエキスパート管理職に昇格しました。
- 「エキスパート管理職になることに、特に躊躇はありませんでした。もともと、暮らしに関係する製品にデザイナーとして携わりユーザーに届けたいという思いが一貫してありました。エキスパート管理職になることによって、より主体的に裁量権を持って製品に携われるので、自分のやりたいことを実現しやすくなるという感覚でした。
エキスパート管理職と一括りに言っても、それぞれ得意とすることが異なります。デザインセンターには、非常に精緻な造形を作り上げていくプロダクトデザイナーや、建築関連の知識が豊富でその知見から新しいアイデアや製品を生み出すデザイナーもいます。
私の場合は、既存の枠にとらわれず、自ら課題や新しいビジネスの芽を見つけ、作り方も含めて検討し製品化につなげていく。この点において専門性を発揮できているのではないかと考えています」
- これまでのキャリアを振り返って、経験してよかったことを伺うと「家事育児と仕事との両立が思った以上に大変だと実感できたこと」との答えが返ってきました。
- 「単に『両立は大変だ』で終わらず、最終的に両立できるようになったからこそ、自分のキャパシティや気づきの幅、気づきのポイントが増えたと感じています。そしてそれが、仕事をしながら子どもを育てて生活していく上での楽しさにつながっているように思うんです」
- 仕事とプライベートがグラデーションのようにつながっている和田さん。そんな和田さんは、オンオフの切り替えをしないと言います。
- 「職業柄、仕事とプライベートが暮らしや生活を通じて直結していることもあり、私の場合はオンオフを切り替えない方が性に合っています。
例えば、家でリラックスして外を眺めているような時でも、その手前にはサッシ・窓があって『もうちょっとこうだったらいいのにな』と、ふと思ったりすることもあります。そういった新たなアイデアの種が仕事につながりますし、日常の中にそういった種がたくさん転がっていることが、日常を楽しくしてくれるんです」
何度も挑戦と失敗を繰り返して、プロセスを歩んでいきたい
- 今後実現したいことを伺うと、一貫した強い思いを語ってくれました。
- 「入社してから一貫して続けてきたことを、これからも続けていきたいと思っています。 生活の中に溢れているヒントに気づき、具現化の方法を自分で考え、必要があればメンバーに声をかけて一緒に細かくデザインし、アウトプットに落とし込んでいく。LIXILに入社してから8年間、このプロセスを続けていますが、これからも続けていきたいと考えています。
もちろんこのプロセスでは失敗することも少なくありません。でも、まずは行動してみて、仮に失敗したとしたら何がいけなかったのかを考える。それを積み上げていくことが重要だと考えています。
私は、『新しいデザインは未来の暮らしを変えていく可能性を秘めている』と考えています。ですから、一連のプロセスを繰り返して新しいデザインを創出していくことが大事だと思っていますし、それが会社にとっても必要なことなのではないかと考えています」
- 最後に、キャリアアップすることに戸惑っている方、やりたいことが明確でなく迷っている方に向けてのメッセージを伺いました。
- 「エキスパート管理職になってみて感じるのは、自分がやりたいことを実現する筋道が立てやすくなったということです。その分、やりたいことが実現しやすくなり、結果的に仕事がより面白くなったと感じています。
そこには、キャリアの積み重ねで知識が増え、経験値が上がったことも影響していると思いますが、やはり自分の思い描いたことを実現できるのは楽しいものです。そういったプラスの面にも目を向けてみると、キャリアアップを前向きに捉えられるのではないでしょうか。
また、やりたいことが明確でない場合でも、読者の方もそれぞれに、楽しさを感じる場面はあるのではないでしょうか。ですから、まずは楽しいと感じることを軸に行動してみる。すると『こんなことをやってみたい』と、実現したいことが明確になってくると思います。そうしたら、それを言語化して周囲にも話してみる。その言葉が、ステップを登るきっかけになるのではないかと思います」
→「前編記事」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:北森 悦