『意図しない道に進むからこそ面白い景色に出会える』
パナソニック株式会社・商品企画 樫木智恵さん【前編】
誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は、パナソニック株式会社で電設資材事業の商品企画を担当する樫木智恵さんにお話を伺いました。
樫木智恵(かしき・ちえ)さん
パナソニック株式会社
電設資材ビジネスユニット 商品企画部
マンションシステム商品企画課 主幹
研究職を目指すも挫折、社内SEとしてパナソニックへ
- 家庭用電化製品から住宅設備、店舗・オフィス向けの商品・サービスまで多岐にわたる商材を提供する総合エレクトロニクスメーカー・パナソニック。
樫木智恵さんは、住宅設備を扱う部門で、オートロックマンションのインターホンを中心とした電設資材の商品企画を担当しています。営業も兼務し、企画した製品を自ら販売することで、お客様である新築マンションのディベロッパーや施工店などの事業者、マンション設備のリニューアル更新を行うマンション管理会社や住民からの声を商品企画に生かしています。
新卒でパナソニックに入社後、当初の配属は社内システムエンジニア(SE)だったという樫木さん。実は、就職活動では大きな挫折を味わったそう。 - 「大学院まで生物学を学んでいました。高校生のころから、将来は研究職に就きたいと考えていたんです。きっかけは、大学のオープンキャンパスを通じて遺伝子研究分野があると知ったこと。
『遺伝子の配列が分かれば人間のすべてが分かるのではないか』と壮大な夢が膨らみ、世界で通用する研究者になりたいとアメリカの大学に進学しました。帰国して日本の大学院に進み、研究してきたことを人や社会の役に立てたいと民間企業の研究職を中心に就職活動を始めました」
- しかし、研究職のポストは数も少なく、就職活動は難航。大学院2年生の6月までどこからも内定をもらえない中、「残っていた募集職種がシステム系だった」と話します。
- 「最終的に、社内SEのポジションで最初に内定をくれたパナソニックに入社を決めました。
その時は、『学んできた生物学を仕事に生かせないのか』という無念さが強くあって、『でもこれが自分の実力なんだ。ダメだったのだから諦めるしかないな…』と割り切るしかない状況でした。だから、当時はすごく落ち込んでいて、全然前向きな入社ではありませんでしたね」
- 入社後は、約1年のIT研修を経て、社内SEとしてさまざまな事業部とシステム導入や改善による業務効率化を進めていった樫木さん。ITの知識はゼロに等しく、まったく新しい分野でのキャリアのスタートでした。
- 「やってみると、『自分は新しいことを学ぶのが好きなんだ!』ということに気付きました。担当するシステムが変われば、必要な知識も変わるのでまた新たに勉強しなければなりません。それまでは、生物学という一つの学問領域を突き詰めてきましたが、全然違う領域でも、面白さを見出し受け入れられる自分がいて驚きました。」
ITに詳しくない分、サポートに入る部署の業務理解と関係構築に注力した
- 現在の商品企画部に異動してきたのは入社6年目のこと。社内SEとしてサポートに入った新規事業立ち上げの部署から「うちに来たら?」と誘われたことがきっかけでした。
- 「サポートに入った新規事業プロジェクトは、オーストラリアの電力会社に蓄電池を遠隔制御するシステムの開発とそのセールスをするというものでした。3~4人の少数チームで商品開発から販売まで一気通貫で進めていたので人手が足りず、私も必然的にプロジェクトメンバーの一員かのように深く関わることになったんです。
当時のプロジェクトマネージャーはメンバーのやる気を引き出すのがとてもうまい人でした。困りごとを相談すれば、チーム全員で解決策を出せるように導いてくれて、その一体感がすごく楽しかった。『こんな風に新しいものを届ける仕事がしたい』と口にしていたら、そのプロジェクトマネージャーが異動を提案してくれました」
- 社内SE時代は、ITに詳しくなかったからこそ、ほかのところで強みを見出そうと工夫していたといいます。その姿勢や、仕事への向き合い方が、誘いを受ける要因になったのかもしれません。
- 「社内SE部門には、もともとプログラミングに長けたメンバーと入社後から学んだメンバーがいて、私は後者でした。システム開発でなかなか力を発揮できないからこそ、お客様(サポートに入る部署)の業務の流れを理解し、課題を見出し、皆さんと合意をとりながら解決の道筋を立てていく、“要件定義”の分野で役に立ちたいと考えました。
システム導入や開発は、お客様と一緒に作っていくという意識がなければうまくいきません。お客様から丸投げされてうまくいかなくなったプロジェクトはたくさんあります。だからこそ、お客様に最初から最後まで入ってもらえるような人間関係づくりを大事に進めていました。
新規事業プロジェクトでも、チームの皆さんが動きやすいように、誰よりも私が楽しそうに積極的に仕事に取り組む姿勢を貫こうと思っていました。そんなところを評価してもらえたのかなと思います」
→後日公開の「後編記事」につづきます
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写真:anphotography
取材・執筆:田中 瑠子