仕事のイライラを家庭に持ち込まない方法
34歳企画職のミホさんと、隣の課の課長で42歳のマユミさん。同じ会社で働く仲良しの先輩後輩の2人が、女性のキャリアに関するあらゆるモヤモヤを語りながら解決策を探る、当コラム。今回のテーマは「仕事と家庭の切り替え」について。独身のミホさんが、育児と仕事を両立するマユミさんに、これからの不安を相談します。
34歳独身。明るく人懐っこい笑顔で、愛され上手。一方で、ややがさつな面もあり、不用意な一言で周囲をヒヤリとさせることも。営業職から企画職に移り、そろそろマネジメントを任されそう。親からは早く結婚するよう急かされているのも、モヤモヤのタネ。
42歳既婚。いつも落ち着いていて、気配り上手な優しい先輩……というのは表の顔で、実は些細なことで悩みがちな小心者。寝る前はその日の自分の言動を振り返ってモヤモヤするのが定番。現在はミホさんの隣の課の課長。小学生男子の子育て中。
仕事と家庭、気持ちの切り替えのカギは「今、悩まない」
ミホさん
先日、仕事で嫌なことがあったのですが、家に帰ってもずっとそのことでイライラしてしまって。私、嫌なことを引きずるタイプなので、このままじゃ結婚して家庭を持つなんてできない! と、ふと不安になってしまいました。子どもやパートナーにイライラをぶつけてしまいそうで……。マユミさんは仕事と家庭をうまく切り替えていますか?
マユミさん
特に子どもが幼い時の時短勤務中は、家に帰ってもイライラが止まらないことは日常茶飯事だったよ。 今はだいぶ落ち着いたけどね。
ミホさん
そういう時はどう切り替えていたんですか?
マユミさん
まずは、イライラの原因を因数分解していく。抱えている感情は一言で言うと「イライラ」なんだけど、その裏には「本当は仕事がもっとしたいのにできない」「自分が会社にいない間に重要なことが決まっていそうで不安」「子育てにパートナーが協力的ではない」などの精神的プレッシャーや焦りがあったんだよね。
ミホさん
なるほど……。私も家にイライラを持ち帰ってしまう時って、「忙しすぎて余裕がない」とか「これまでの努力が認められていない」とか、プレッシャーや焦りが隠れていることが多いかもしれません。その原因に気が付いた後は、どうするのでしょうか? 余計ソワソワしませんか?
マユミさん
問題を解決する予定を決めて、一旦今は忘れるようにすれば、家庭の時間を穏やかに過ごせるかな。例えば私の場合、仕事時間が短いことのプレッシャーや焦りは、上司や同僚に1on1を申し込んで、相談する時間を作ってもらっていたかな。パートナーとの問題も、交渉する時間を確保する。そうすると今、悩む必要はなくなるよね。他にも「忙しすぎる!」という時は、タスクをやる時間を先にきちんと確保して、他の予定が入らないようようにするとかね。
ミホさん
たしかに、解決するための予定が確保されていれば、今この場でイライラする必要はないですもんね。良い意味で一旦悩みの解決を先延ばしする、ということですよね。
今の時代に合わせて、働く女性のロールモデルを刷新しよう
ミホさん
それでも、いざ子育てが始まったら、私はマユミさんのように器用にはできないだろうな〜と想像してしまいます。だから今からもう少し緩いキャリア形成にしようかと思うこともあります。
マユミさん
先のことを考えるのはいいことだけど、仕事・家庭・プライベートを同時に考えて、さらに先読みしすぎると、オーバーヒートしてしまうから気を付けて。せっかく仕事へのモチベーションがあるのに完璧にできないからと諦めてしまうのはもったいないことだから。
ミホさん
危ないですね。私としたことが、まだ結婚もしていないのに……。でも、やっぱりどうしても考えてしまう問題じゃないですか!!
マユミさん
そうだよね。そもそも私たちのような現代の働く女性って、完璧主義すぎる傾向があるんだよね。育った環境が、父親は仕事をして、母親は専業主婦って人が多いから。両親が仕事か家庭のどちらかを全力でこなしている姿しか見てこなかった。
ミホさん
まさに私の育った環境もそうです。
マユミさん
でしょ? 両親二人が分担して行っていたパフォーマンスが、自分の中の基準となって焦ってしまいがちなの。だから、仕事も家庭も長時間・全力でやらなくてはいけないと考えてしまう。でも実際は一人で両親二人分のことをこなすなんて無理だから。本来、仕事も家庭も70%くらいで良し! と思えればいいんだよ。
ミホさん
70%ですか~……。正直、私から見たらマユミさんって、100%完璧な働く母に見えています!
マユミさん
いやいや、現実は結構いっぱいいっぱいだよ(笑)。洗濯物は溜まるし、家の中はぐちゃぐちゃ、家族の夕飯がコンビニ弁当ってこともよくあるし。
ミホさん
ちょっと意外でした!
マユミさん
でも、結局家族が笑顔で過ごせていればいいんだよ。私もさ、「私だけ何もできてない」と自分を責める時期もあったけど、他の働くママ友に聞いたらみんな同じような状況だったりとか。私も、自分の中の家族の理想像が、専業主婦の母親前提で成り立つものだったから、今の時代に合わせたロールモデルの刷新は必要かもしれない。
ミホさん
たしかに、現代の働く母親はどうしているのか、知っておくのは大事ですね。
マユミさん
先輩の家庭のホームパーティーとかに行くと、色んな家族の形が覗けて、発見があるよ。良かったら今度うちにも遊びに来てよ!
ミホさん
いいんですか? ぜひお邪魔したいです!
社会の要望ではなく、自分軸でワクワクできるキャリアを考える
ミホさん
マユミさんのお話を聞いて、だいぶ楽になりました。
マユミさん
良かった! 家族が笑顔でいるためには、自分が笑顔でいられる環境を作ること。そのためには多くの人を頼ることが大切だから。私、子どもを保育園に0歳から預けていたんだけど、「我が子は小さなうちから、たくさん人からの愛情をもらえるなんて、とても幸せだな」と感じられたよ。両親だけでなくて、多様な大人との関わりは子どもにとっても良いことだと思うから。
ミホさん
目から鱗です! 私自身が幼稚園育ちなので、将来子どもを保育園に預けるイメージがうまく湧いていませんでしたが、おっしゃる通りですよね。他に、将来子育てをしながら働く上で、独身の私が今からしておいた方がいいことはありますか?
マユミさん
「女性はこうあるべき」「母親はこうあるべき」という社会からの要望ではなく、自分の視点で、3年後にどう働きたいか・どう思われたいかを考えておくことかな。そして、その思い描いた状態に近づけているかを定期的に振り返れば、子育てをしてもしなくても、自分らしく働けると思うよ。
ミホさん
自分軸で考えると、ワクワクしたキャリアが見つかりますよね! 最近、「どうせ諦めるしかない」「今後が不安だ」という後ろ向きなことばかり考えがちでした。
マユミさん
仕事でキャリアを積んでいくことは、必ず自分の人生の糧になるはずだから、私はミホさんに諦めてほしくないな。あと、今後女性が働く上でマネジメント能力はとても大切。一人だけで成果を上げる働き方だと、子どもが生まれたり介護になるなど時間制約が生まれた瞬間難しくなってしまうの。でも、チームで成果を上げられる仕組みを作れれば、長く働けるから。
ミホさん
そうですよね! この調子でキャリアアップを目指し、プライベートも充実させたいと、とても前向きになりました! ありがとうございました!
POINT
① 問題を解決する予定を決めて、一旦、家庭時間では忘れるようにする
② 親世代を基準にせず、「仕事も家庭も70%くらいで良し!」と考える
③ 自分視点で、3年後にどう働きたいか・どう思われたいかを考えておく
監修者:堀江敦子
スリール株式会社代表取締役社長。「自分らしいワーク&ライフの実現」をテーマに、人材育成事業を展開。内閣府男女共同参画専門委員、厚労省イクメンプロジェクト、「こども政策の推進に係る有識者会議」臨時構成員など行政委員を多数経験。著書に『自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。