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仕事に効く話

住吉美紀さん「30代からは人生の優先順位を棚卸しして、没頭しよう」

フリーアナウンサーとしてテレビやラジオで活躍されている住吉美紀さん。著書『50歳の棚卸し』(講談社)では、ご自身のキャリアからプライベートまで赤裸々に綴られています。そんな住吉さんに、これまでのキャリアを振り返っていただき、現代の女性たちが自分らしく働くヒントを伺う特別インタビュー。

 

後編では、これまでの経験から感じた30代・40代の働く女性が大切にすべきことを教えていただきました。

 

前編はこちら
住吉美紀さん「やりたい仕事を叶えるためには、積極的に口に出すこと」

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住吉美紀さん

フリーアナウンサー/文筆家
1973年生まれ。小学校時代はアメリカ・シアトルで、高校時代はカナダ・バ ンクーバーで、英語と日本語、両文化の中で育つ。国際基督教大学(ICU)卒業後、1996 年にアナウンサーとして NHK 入局。『プロフェッショナル 仕事の流儀』『第 58 回 NHK 紅白歌合戦』総合司会などを担当。2011 年よりフリーに。2012 年より朝の生放送ラジオ、TOKYO FM『Blue Ocean』パーソナリティ。夫と3 匹のネコと暮らす。

著書『50歳の棚卸し』(講談社)

「今書かないともう書けない!」と思い、自分の経験を執筆

ー『50歳の棚卸し』では、過去の経験を赤裸々に綴っていますが、書くことを決めたきっかけは?
住吉:書きたいことが溜まっていたということと、父が亡くなった年齢に近づいたことが大きいです。

特に30代以降、書くことがすごく好きだと自覚していました。NHK時代に『自分へのごほうび』(幻冬舎)というエッセイを書いて、そのあとも書きたいと思っていたんです。でも日々の忙しさの中で書くための時間や体力、気力が確保できなくて。その後、コロナ禍や不妊治療の経験などライフチェンジングな大きな出来事もあり、50歳が近づいてきて書きたい思いが溜まっているという自覚がありました。

また、私にとって大きな存在である父が交通事故で亡くなったのが54歳だったんです。自分が50代に近づいて「まだこんなに道半ばの感覚の中で父は突然亡くなったのか」と思うようになって。「いつかいつかと言っているともう書けないかもしれない」と思ったんです。そんな中、担当編集者さんと出会い、踏み出せました。

ー住吉さんがやりたいことは、どのようなことだったのでしょうか?
住吉:海外と日本を行き来しながら、異文化の架け橋になることです。海外の多種多様な価値観や考え方、素敵な暮らし方などを日本の視聴者に届けたい。また、言葉が違っていても心で繋がれる、ということを伝えたいと思っていました。

ー書籍でも触れている不妊治療について。当時、精神的な支えになったことはありましたか?
住吉:支えになったことが思い出せないくらい、辛い4年間でしたね。不妊治療って、仕事の挫折とは比べ物にならない、挫折の連続なんですよね。

仕事や人間関係はまだ自分が努力をして状況を変えられる余地があります。もし失敗しても、違うところで取り返そうと懸命に頑張ることで救われる部分があります。

でも、不妊治療の場合は、私の場合はどんなに自分が努力をしてもなんら変化が起きないことばかりで。これだけのすべてを捧げたのに、またダメかという挫折感と無力感は強烈でしたね。

唯一の支えとしては、やっぱりパートナーである夫が一緒に頑張ってくれたこと。他の家族にも、友だちにも、職場にも言っていなかった不妊治療の辛かった部分を唯一見ていたのは夫です。

結果的に子どもは授からなかったけど、不妊治療を一緒に歩んで、一緒に落ち込んで考えてきたことで、夫婦の絆が強まったのかなと今でも感じています。

30代・40代の仕事は、「優先順位」と「没頭」を意識

ー住吉さんの30代・40代を振り返ってみて、働く上で大切にすべきことは何だと思いますか?
住吉:「優先順位」と「没頭」です。

人生って、自分で優先順位をはっきりとつけないとどんどん流されていくんです。毎日の仕事単位でもそうですよね。「今日はこの書類を仕上げる」と思っていても、横からメールや電話や別の業務が割り込んできて、気がついたらもう18時!みたいなことってありがち。

1週間、1ヶ月、1年単位でも実は同じなんです。「自分はこうしたい!こうするんだ!」と言葉にできるくらいはっきりと優先順位を自覚して、大事にしないと流され続けて5年とか平気で過ぎてしまいます。

例えば仕事で「この部署に移りたい」と思ったら、それに向けて何をするかを計算して優先順位をつけて動かないと実現しません。これは仕事だけでなく、不妊治療だって同じ。「授かる可能性が高いうちに絶対に挑戦する」と決めなければ先に進まない。プライベートの部分もそうですよね。例えば旅行に行くことが人生の中で優先順位が高かったら、それに向けてお金を貯めたり、休めるようスケジュールを組んで交渉したり。他は譲ってもここだけは譲れない、という優先順位がはっきりしていることが、とても大事だと思います。

気力と体力と、そして少し人生経験も積んだ30〜40代で何をするか。自分の優先順位をぜひ意識してほしいです。そのためには、私のように棚卸しをしてみる。自分を知ることで、自分にとっての優先順位が見えてきますから。

一方「没頭」というのは、やるのならばとことん没頭してほしいということ。つい食事をすることを忘れちゃうくらいにね。人は何かに没頭して「やり切った」と言えるくらい取り組むと、そのあと、ものすごく成長しているんですよ。

私は仕事に没頭するタイプなので、色々なことを犠牲にしてでも「これはやるぞ!」と思いながら取り組んできました。30〜40代を振り返っても「これぞ私が生きている理由だ」くらいのやりがいを見つけながら仕事をしていました。何事も深く没頭すればするほど、得るものは大きいですよ。

仕事の経験を積むからこそ「やりたいこと」は見えてくる

ー住吉さんが感じる、50代女性の強みを教えてください。
住吉:良くも悪くも色々なことを経験してきたことで、人としての「受け止め力」が高まるのが50代かなと思います。

自分の30代・40代を振り返ると、浅はかだったなとか、まだまだだったなと感じることが多々あります。でもその失敗や、傷ついたり落ち込んだりしたことも含め、全て経験です。その経験と、目の前のことに没頭してきたことで、50代の自分の間口の広さと深さが生まれている感覚があります。

例えば、仕事で新しい要求をされても、様々な仕事を経験してきたから、応用も利く。「できます」と言えるようになりました。様々な仕事を経験してきたから、応用も利く。クオリティを上げるために「もっとこうしたら良いんじゃないですかね」といった提案もできます。

自分自身に対しても、良くも悪くも「ま、いっか」と思えることが増えてきているとも感じます。それこそ『50代の棚卸し』で、周りが驚くほど赤裸々に自分のことを書けたのも、50代だからだと思います。30代・40代だったら恥ずかしさもあったかもしれません。

ーこれから挑戦したいこと、叶えたいことを聞かせてください。
住吉:書く仕事は続けていきたいです。『50歳の棚卸し』を書いて、思っていたことが言語化され整理できた感覚がありました。書くこと自体がさらに自分を理解する手段になってくれて。「こんな私でも大丈夫なのかもしれない」と思えるきっかけになった気がしているんです。やっぱり書くことは自分にとって大切なことなんですよね。

あとはまた海外に住みたいなとも思ったり。二拠点生活は目標です。

ー最後に「Be myself」読者に、メッセージをお願いします!
住吉:発想は、経験と記憶から生まれるものです。仕事の経験が少しついてきた30代・40代だからこそ「やってみたい」と思うことも芽生えるんじゃないかなと思います。

自分の中で芽生えてきた「こういうことをやってみたい」「こういう仕事に取り組みたい」という思いをぜひ言葉にして、少しでも実現して、仕事の面白さを味わってください。

むしろいい意味で公私混同してほしいなと思うくらいです。「これが好きです」ということを仕事に持ち込んで頑張る。そうしたら仕事はもっと面白くなると思いますよ。



仕事に、人生に、そして自分自身に真剣に向き合い続けてきた住吉美紀さん。その言葉から伝わってきたのは「失敗しながらでも自分で選び、没頭してきた時間こそが、その後の人生を支えてくれる」という確かな実感でした。住吉さんの経験は、今まさにキャリアや生き方に悩み、向き合う私たちに勇気を与えてくれます。


(取材・執筆/菱山恵巳子)

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